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理由で解く 柔道整復師

QJ28P023 リハビリテーション医学

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午後 問23
問題
65歳の男性。数年前から安静時の振戦があり、パーキンソン(Parkinson) 病の診断を受けている。最近になって歩き始めの一歩が出にくくなり、歩き始めると止まれないことがあるため受診した。正しいのはどれか。
選択肢
1 施設入所を勧める。
2 可及的に安静を取るよう指示する。
3 関節可動域訓練を主体としたリハビリテーションを行う。
4 立位歩行訓練を主体としたリハビリテーションを行う。
解答
正解4(立位歩行訓練を主体としたリハビリテーションを行う。)
解説

すくみ足と突進現象が出てきた段階でも、動くことをやめないことが基本。立位・歩行訓練を主体としたリハビリテーションを継続する。

パーキンソン病は中脳黒質のドパミン神経が変性し、線条体のドパミンが不足することで、安静時振戦・筋強剛・無動(寡動)・姿勢反射障害の四徴を示す疾患である。本例の「歩き始めの一歩が出にくい(すくみ足)」「歩き出すと止まれない(突進現象)」は、無動(寡動)を背景とする歩行障害の典型例で、転倒の危険が高まっていることを示す所見である。ここに姿勢反射障害(pull test 陽性など)が加われば Hoehn-Yahr 重症度分類の III に相当する時期となる。この時期に安静を取らせると、筋力低下・関節拘縮・全身持久力の低下が加わり、疾患そのものの進行を上回る速さで動けなくなる悪循環に陥る。したがって薬物療法と並行して、立位・歩行を中心とした運動を継続することが治療の柱になる。すくみ足には、床に貼ったテープや目印をまたぐ視覚的手がかり、号令やメトロノーム・音楽に合わせて歩く聴覚的手がかりが有効で、歩幅を意識的に広げる練習と組み合わせる。あわせて方向転換や狭い場所の通過の練習、段差・敷物の除去や手すりの設置といった環境整備、家族への介助方法の指導を行い、転倒とその後の廃用を防ぐ。

✓ 4. 正しい
立位歩行訓練を主体としたリハビリテーションを行う。
主たる問題がすくみ足・突進現象という歩行の障害である以上、実際の立位・歩行場面での訓練が中心になる。視覚的・聴覚的手がかりの利用、歩幅を広げる練習、方向転換の練習、姿勢反射を促す練習を、転倒予防に配慮しながら継続する。
✗ 1. 誤り
施設入所を勧める。
歩行障害に対して薬物調整・歩行訓練・住環境整備という打つ手が残っている段階であり、生活の場の変更を第一選択にする理由がない。まず外来での薬物調整とリハビリテーション、住環境の整備、家族への介助・見守りの指導によって在宅生活を支える。
✗ 2. 誤り
可及的に安静を取るよう指示する。
安静は筋力・持久力・柔軟性を低下させ、すくみや転倒をかえって悪化させる。活動量は保ったうえで、転倒しにくい環境と動き方を整えるほうが有益である。
✗ 3. 誤り
関節可動域訓練を主体としたリハビリテーションを行う。
筋強剛による可動域制限や体幹の前傾があるためROM訓練・ストレッチは併用すべきだが、本例の主訴は歩行の障害なので「主体」には据えない。歩行訓練を支える補助的な位置づけとして組み込む。
ポイント
  • パーキンソン病の四徴=安静時振戦・筋強剛・無動(寡動)・姿勢反射障害。
  • すくみ足・突進現象・小刻み歩行・前傾前屈姿勢が歩行障害の特徴。
  • Hoehn-Yahr III を規定するのは姿勢反射障害の有無(pull test 等)。すくみ足は病期を問わず出現しうるため、すくみ足=ステージIII と短絡しない。
  • 安静は禁物。廃用が疾患の進行を上回って生活機能を落とすため、立位・歩行訓練を主体に継続する。
  • すくみ足には視覚的手がかり(床のテープ・目印をまたぐ)と聴覚的手がかり(号令・メトロノーム)が有効。転倒予防として方向転換・狭所通過の練習、段差や敷物の除去、手すりの設置、家族への指導を行う。
比較表
Hoehn-Yahr 重症度主な所見生活の自立度
ステージ I一側性の症状のみ機能障害はないか軽微
ステージ II両側性だが姿勢反射障害なし日常生活はほぼ自立
ステージ III姿勢反射障害が出現(pull test 陽性など)活動制限はあるが介助なしで生活可能
ステージ IV高度の機能障害。起立・歩行はかろうじて可能日常生活に部分介助が必要
ステージ V車椅子または臥床全面的な介助が必要
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