学習トップ理由で解く 柔道整復師リハビリテーション医学 ▸ §9 臨床実地問題 / QJ29P023

理由で解く 柔道整復師

QJ29P023 リハビリテーション医学

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問23
問題
57歳の男性。生来右利きである。左中大脳動脈領域のアテローム性脳梗塞を発症し、4週が経過した。右片麻痺のブルンストロームステージは上肢2、手指1、下肢4で、感覚障害は表在・深部とも軽度である。これから行うべき対応で正しいのはどれか。
選択肢
1 車いすに適した自宅改修
2 長下肢装具の作成
3 右手箸操作の訓練
4 利き手交換の訓練
解答
正解4(利き手交換の訓練)
解説

上肢II・手指Iで右上肢が実用手まで回復する見込みは乏しく、一方で下肢IVなら歩行練習を進められる。この時点で行うべきは 4 の利き手交換の訓練である。

ブルンストロームステージは麻痺の回復段階を上肢・手指・下肢それぞれI〜VIで表し、Iは弛緩性、IIで連合反応や共同運動がわずかに出現し、IVで分離運動が現れ始める。発症から4週の時点で上肢II・手指Iにとどまる場合、右手が箸やペンを扱う実用手まで回復する可能性は低く、補助手としての位置づけを想定するのが現実的である。他方、下肢IVは座位で踵を床につけたまま膝を90度以上屈曲でき、足関節を背屈できる段階で、短下肢装具と杖を用いた歩行練習を十分進められる水準にあり、感覚障害も軽度で運動学習の妨げになりにくい。したがって、食事・書字・整容を非麻痺側の左手で行えるようにする利き手交換訓練を早期から開始し、並行して右上肢の関節可動域維持、肩関節亜脱臼と疼痛の予防、下肢の歩行練習を進めるのが妥当である。左中大脳動脈領域の梗塞では失語の合併も少なくないため、言語聴覚士と連携し、指示は短く具体的に、実演を交えて伝える工夫が有効になる。

✓ 4. 正しい
利き手交換の訓練
上肢II・手指Iという回復段階から右手の実用的使用は期待しにくいため、非麻痺側の左手で食事・書字・整容が行えるよう早期に訓練を始めるのが現実的な選択である。右上肢は関節可動域の維持と肩の保護を続けながら、回復に応じて補助手としての使用を広げていく。
✗ 1. 誤り
車いすに適した自宅改修
下肢IVで分離運動が出ており、装具と杖を用いた歩行自立が十分に狙える段階にある。移動手段の到達点が定まらないうちに車いす前提の改修を決めるのは早く、歩行能力の見通しが立ってから住環境整備を検討する。
✗ 2. 誤り
長下肢装具の作成
長下肢装具は膝の支持性が得られない低いステージ(おおむね下肢II〜III)で用いるものである。下肢IVであれば短下肢装具で足関節を制御すれば歩行練習が可能で、過剰な支持は膝の随意的な制御の習得を妨げる。
✗ 3. 誤り
右手箸操作の訓練
手指Iは弛緩性で随意的な屈伸がない段階であり、この時点で箸操作を課題にしても達成は難しい。まずは可動域の維持と共同運動の促通を行い、実用的な動作は左手での獲得を優先する。
ポイント
  • ブルンストロームステージ: I 弛緩 → II 連合反応・共同運動の出現 → III 随意的な共同運動 → IV 分離運動の出現 → V 分離運動の進展 → VI ほぼ正常。
  • 上肢・手指のステージが低いまま数週が経過した例では、非麻痺側を活かす利き手交換を早期に開始する。
  • 下肢IVは座位で膝90度以上の屈曲と踵接地での足関節背屈が可能な段階。短下肢装具+杖で歩行練習を進める。
  • 長下肢装具は膝の支持性が乏しい低ステージの適応。ステージが上がれば短下肢装具へ移行する。
  • 住環境整備は最終的な移動手段の見通しが立ってから。歩行の可能性を残したまま車いす前提の改修に踏み切らない。
  • 左半球病変では失語の合併に注意し、指示は短く具体的に、実演を交えて伝える。
比較表
部位・ステージ本例の段階の内容この時点で妥当な対応
上肢 II連合反応や共同運動がわずかに出現する段階関節可動域の維持、肩関節亜脱臼・疼痛の予防、共同運動の促通
手指 I弛緩性で随意運動がない段階把持動作は課題にせず可動域維持。実用動作は非麻痺側へ(利き手交換)
下肢 IV座位で膝90度以上屈曲、踵接地のまま足関節背屈が可能短下肢装具+杖での歩行練習を進める(長下肢装具は不要)
感覚(表在・深部とも軽度障害)運動学習の大きな妨げにならない水準フィードバックを活用した動作練習が行いやすい
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。