学習トップ理由で解く 柔道整復師リハビリテーション医学 ▸ §9 臨床実地問題 / QJ30P023

理由で解く 柔道整復師

QJ30P023 リハビリテーション医学

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午後 問23
問題
64歳の男性。脳梗塞を発症後、コミュニケーション障害が生じた。口数が少なく、「痛いところはありますか」と尋ねると、「う、ん」と答え、「どこですか」と尋ねると何か言おうとするものの言葉にならないようである。「ボールペンと言ってください」と指示すると、「ボーボ・・・」と途中まで言いかけてあきらめてしまった。「左手でじゃんけんのチョキをしてください」という指示には間違いなく従える。考えられる症状はどれか。
選択肢
1 全失語
2 伝導失語
3 ブローカ失語
4 ウェルニッケ失語
解答
正解3(ブローカ失語)
解説

話そうとしても言葉が出ず(非流暢)、復唱もできない一方で、口頭指示には正確に従える(聴覚的理解は良好)——この組み合わせはブローカ失語(運動性失語)の典型像です。

失語の型は「流暢性」「聴覚的理解」「復唱」の3点で切り分けます。本例は、口数が少なく何か言おうとしても言葉にならない(非流暢・喚語困難)、「ボールペン」の復唱を「ボーボ…」と途中で断念(復唱障害)、しかし「左手でチョキ」という指示には間違いなく従える(理解は保たれる)。理解が良好である以上、全失語やウェルニッケ失語は除かれ、発話が非流暢である以上、伝導失語も合いません。責任病巣は左前頭葉の下前頭回後部(ブローカ野)を含む中大脳動脈上枝領域で、隣接する中心前回が巻き込まれるため右片麻痺を伴うことが多いのも特徴です。本人は自分の誤りに気づいているため、もどかしさや抑うつを抱えやすい点に配慮が要ります。関わり方としては、「はい/いいえ」で答えられる問いにする、選択肢を示す、絵カードや文字盤・ジェスチャーを併用する、言い直しを急かさず待つ、といった工夫が有効です。

✓ 3. 正しい
ブローカ失語
非流暢な発話+復唱障害+聴覚的理解の保持という3点が、本例の記述にそのまま一致します。左下前頭回後部を含む病巣で生じ、右片麻痺の合併が多いこともこの症例の脳梗塞という経過と矛盾しません。
✗ 1. 誤り
全失語
発話・理解・復唱のすべてが重度に障害される型です。本例は「左手でじゃんけんのチョキをしてください」という指示に間違いなく従えており、理解が保たれているため該当しません。
✗ 2. 誤り
伝導失語
発話は流暢で理解も良好、復唱だけが際立って障害され、音韻性錯語と自己修正(言い直し)が目立つ型です。本例は発話そのものが非流暢なので合いません。責任病巣は縁上回など弓状束の周辺とされます。
✗ 4. 誤り
ウェルニッケ失語
発話は流暢ですが錯語やジャルゴンが多く内容に乏しく、聴覚的理解が強く障害される型です。本例は理解が良好で発話が非流暢と、まったく逆の像を示しています。責任病巣は左上側頭回後部です。
ポイント
  • 失語は流暢性・聴覚的理解・復唱の3点で分類する。
  • ブローカ失語=非流暢・理解良好・復唱障害。左下前頭回後部。右片麻痺を伴いやすい
  • ウェルニッケ失語=流暢・理解不良・復唱障害。左上側頭回後部。麻痺は目立たないことが多い。
  • 伝導失語=流暢・理解良好・復唱が選択的に不良、音韻性錯語と自己修正。
  • ブローカ失語では、はい/いいえで答えられる質問、選択肢の提示、絵カード・文字盤の併用、待つ姿勢が有効。
比較表
発話(流暢性)聴覚的理解復唱主な病巣
ブローカ失語非流暢良好不良左下前頭回後部
ウェルニッケ失語流暢不良不良左上側頭回後部
伝導失語流暢良好著明に不良縁上回・弓状束周辺
全失語非流暢不良不良左中大脳動脈領域の広範病変
超皮質性運動失語非流暢良好良好ブローカ野の前方・上方
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