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理由で解く 柔道整復師

QJ27P021 リハビリテーション医学

出典:第27回柔道整復師国家試験(2019)午後 問21
問題
45歳の男性。高所からの転落で頸髄損傷を受傷した。職業はパソコン操作によるデスクワークだが、自家用車での通勤が必要である。改造自動車を用いた運転が可能な損傷レベルはどれか。
選択肢
1 第4頸髄節残存
2 第5頸髄節残存
3 第6頸髄節残存
4 第7頸髄節残存
解答
正解4(第7頸髄節残存)
解説

頸髄損傷者が改造自動車で自力通勤するには、ハンドルや手動運転装置を操作する上肢機能に加えて、車椅子から運転席へ移り、車椅子を車内に積み込むための肘伸展(プッシュアップ)が要ります。これを満たすのは上腕三頭筋が使える第7頸髄節残存で、正解は4です。

「第○頸髄節残存」とは、その髄節が支配する筋までは機能が保たれ、それより下位は麻痺しているという意味です。目安となるキー筋は、C4が横隔膜(自発呼吸は可能だが上肢は動かない)、C5が三角筋・上腕二頭筋(肩の動きと肘屈曲)、C6が長・短橈側手根伸筋(手関節背屈)、C7が上腕三頭筋と指伸筋群(肘伸展)、C8が深指屈筋(手指屈曲)です。C6では手関節を背屈すると指屈筋腱が引かれて指が閉じる腱固定作用(テノデーシスアクション)が使えるようになり把持動作の幅が広がりますが、肘を伸ばして体幹を持ち上げる動作は安定しません。C7で上腕三頭筋が働くとプッシュアップが可能になり、ベッドと車椅子の移乗、除圧、車椅子の分解・積み込みが自力ででき、ADLはおおむね自立します。自動車側は、下肢が使えないためアクセルとブレーキを手で操作する手動運転装置、片手でハンドルを回すための旋回ノブ(ステアリングノブ)、AT車といった改造で対応します。ここで整理しておきたいのは、旋回ノブと手動運転装置を用いたハンドル・アクセル・ブレーキ操作そのものは、手関節背屈が使えるC6残存でも可能とされることがある、という点です。分かれ目になるのは運転操作の可否ではなく、車椅子から運転席への乗り移りと車椅子の車内への積み込みまで自力で完結できるか、すなわちプッシュアップができるかどうかです。本問はデスクワークへの復職を前提とした自力通勤の可否を問うており、運転操作と移乗・積み込みの両方を自力で満たすレベルとしてC7が求められています。

✓ 4. 正しい
第7頸髄節残存
上腕三頭筋による肘伸展が使えるため、プッシュアップで殿部を持ち上げて車椅子と運転席の間を移乗でき、車椅子を折りたたんで車内へ積み込む一連の動作も可能です。手指の巧緻性は残らないものの、旋回ノブと手動運転装置を備えた改造車であればハンドル操作とアクセル・ブレーキ操作を上肢で完結できます。運転操作だけでなく乗り移りと積み込みまで自力でつながるレベルであり、パソコン操作中心のデスクワークという職務内容とも合致して、通勤を含めた社会復帰の目標として現実的な水準です。
✗ 1. 誤り
第4頸髄節残存
横隔膜(C3〜C5)が残るため自発呼吸は保たれますが、三角筋・上腕二頭筋はC5支配のため上肢はほぼ動かせません。移動は頭部・顎・呼気スイッチなどで操作する電動車椅子が中心となり、日常生活動作は基本的に全介助です。運転の目標を立てるより、環境制御装置やパソコンの入力支援機器を整えて在宅勤務や通勤支援サービスを組み合わせる方向が現実的な支援になります。
✗ 2. 誤り
第5頸髄節残存
三角筋と上腕二頭筋が働くので肩の動きと肘屈曲はできますが、手関節背屈と手指の運動は失われています。ハンドルや旋回ノブを保持する手関節の機能がなく、肘も伸ばせないためプッシュアップができないので、移乗は介助が必要で、車椅子の積み込みも困難です。食事や整容は把持用の自助具(万能カフなど)を使って一部自立を目指す段階であり、改造車の自力運転を到達目標とするレベルではありません。
✗ 3. 誤り
第6頸髄節残存
手関節背屈が可能になり、腱固定作用を利用した把持で更衣や自己導尿など多くの動作が自立に近づく、機能上の大きな節目となるレベルです。旋回ノブと手動運転装置による運転操作そのものはC6でも可能とされることがあり、実際に運転を実現している例も報告されています。ただし上腕三頭筋が働かないため肘伸展による安定したプッシュアップができず、車椅子から運転席への乗り移りと車椅子の積み込みには補助具(トランスファーボードなど)や介助を要することが多く、通勤まで自力で完結する標準的な到達目標としてはC7が求められます。C6とC7の差は「肘を伸ばして体を持ち上げられるかどうか」だと押さえておくと、移乗・駆動・通勤に関する出題を一括で判断できます。
ポイント
  • 「第○頸髄節残存」=その髄節支配の筋までは動く、という意味。キー筋で線を引いて覚える。
  • キー筋の目安:C4横隔膜/C5三角筋・上腕二頭筋/C6手関節背屈筋/C7上腕三頭筋・指伸筋/C8深指屈筋。
  • 本問が問う〈自力通勤〉の分かれ目は、移乗と車椅子の積み込み=プッシュアップ(上腕三頭筋=C7)。旋回ノブと手動運転装置による運転操作自体はC6でも可能とされることがあるが、乗り移りと積み込みまで自力で完結するのはC7から。
  • 改造の中身はAT車+手動運転装置(アクセル・ブレーキ)+旋回ノブ。下肢ではなく上肢で運転操作を完結させる。
  • C6は腱固定作用で把持ができADLが大きく伸びる節目、C7でプッシュアップによりADLがおおむね自立し就労・通勤が視野に入る、と段階で整理する。
比較表
残存レベルキー筋・獲得する動き移動手段到達しうるADLの目安改造車の運転操作移乗+車椅子の積み込み(自力通勤の可否)
C4横隔膜(自発呼吸)/上肢は動かない電動車椅子(頭部・顎・呼気操作)基本的に全介助不可不可
C5三角筋・上腕二頭筋(肩の動き、肘屈曲)電動車椅子中心自助具で食事・整容の一部不可(手関節の保持ができない)不可
C6長・短橈側手根伸筋(手関節背屈、腱固定作用)手動車椅子(平地)更衣・自己導尿など多くが自立に近づく手動運転装置+旋回ノブで可能とされることがある補助具・介助を要することが多く、自力完結は標準的には困難
C7(正解)上腕三頭筋・指伸筋(肘伸展=プッシュアップ)手動車椅子が実用的移乗・除圧を含めおおむね自立可能(AT車+手動運転装置+旋回ノブ)可能(プッシュアップで移乗・積み込みまで自力)
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