学習トップ理由で解く 柔道整復師リハビリテーション医学 ▸ §5 リハビリテーションの治療 / QJ28P018

理由で解く 柔道整復師

QJ28P018 リハビリテーション医学

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午後 問18
問題
温熱の作用で誤っているのはどれか。
選択肢
1 鎮痛
2 筋痙縮の緩和
3 膠原線維の伸張
4 心拍出量の低下
解答
正解4(心拍出量の低下)
解説

この設問は「温熱の作用として当てはまらないもの」を選ぶ問題です。温熱は血管を広げて血流を増やし、鎮痛・筋緊張の緩和・結合組織の伸びやすさをもたらしますが、全身が温まると心拍数は増えて心拍出量はむしろ増加します。したがって「心拍出量の低下」が答えです。

皮膚や深部組織が温められると、まず局所の血管が拡張して血流が増え、組織の代謝が亢進します。この血流増加が発痛物質や代謝産物を洗い流し、あわせて痛覚閾値が上がることで鎮痛が得られます。筋への効果もこの延長線上にあり、温熱によって筋紡錘からのIa求心性発火とγ運動ニューロンの活動が低下するため、筋痙縮(つっぱり)がやわらぎます。さらに膠原線維(コラーゲン)は温まると粘弾性が変化して伸びやすくなるので、ホットパックなどで温めた直後に持続的なストレッチを加えると、拘縮の改善に効率よくつながります。一方、全身が温まった場面を考えると話が変わります。体内の熱を体表から逃がすために末梢血管が大きく拡張し、末梢血管抵抗が下がり、これを補うように心拍数が増えるため、心拍出量は増加する方向へ動きます。つまり温熱は循環にとって「休ませる」刺激ではなく「働かせる」刺激です。心機能に不安のある人への全身温熱は負荷になりうると理解しておくと、この選択肢は迷わず切れます。

✓ 4. これが答え(温熱の作用として当てはまらない)
心拍出量の低下
温熱では末梢血管が拡張して末梢血管抵抗が低下し、放熱のために心拍数が増えるため、心拍出量は増加します。低下ではありません。この循環動態を理解しておくと、心不全や重い循環障害のある人に全身温熱(全身浴・長時間の加温)を行う際は、時間と温度を控えめに設定し、脈拍や顔色、気分不良の有無を確認しながら進めるという判断につながります。
✗ 1. 答えではない(温熱の作用として正しい)
鎮痛
鎮痛は温熱療法の代表的な作用です。痛覚閾値の上昇、血流増加による発痛物質・代謝産物の除去、筋緊張の低下、温熱刺激そのものが太い求心性線維を介して痛覚伝達を抑える働き(ゲートコントロール)などが重なって痛みが和らぎます。設問が求めているのは「誤っているもの」なので、これは答えになりません。
✗ 2. 答えではない(温熱の作用として正しい)
筋痙縮の緩和
これも温熱の正しい作用です。加温により筋紡錘のIa求心性発火とγ運動ニューロンの活動が低下し、腱紡錘(Ib)からの抑制も加わって、筋のつっぱりがゆるみます。痙縮のある患者に運動療法を行う前の準備として温熱を用いるのは、この機序に基づいています。
✗ 3. 答えではない(温熱の作用として正しい)
膠原線維の伸張
正しい作用です。関節包や腱、瘢痕組織を構成する膠原線維(コラーゲン)は、温度が上がると粘弾性が変化して伸展性が増します。そのため温熱と持続的伸張を組み合わせると拘縮に対して効果的で、加温中〜加温直後の温度が保たれている間にストレッチを行うのが実際の進め方です。
ポイント
  • 温熱の作用=血管拡張・血流増加・代謝亢進・鎮痛・筋緊張(痙縮)の緩和・膠原線維の伸展性向上。
  • 循環への影響は「増加」側。末梢血管抵抗が低下し心拍数が増えるため、心拍出量は増える。低下と覚えないこと。
  • 拘縮への使い方:温めて膠原線維が伸びやすくなっている間に持続伸張を行う(ホットパック+ストレッチ)。
  • 種類の整理:表在温熱=ホットパック・パラフィン浴・赤外線・渦流浴/深部温熱=超短波・極超短波(マイクロ波)・超音波。
  • 安全に行うために:急性炎症期・出血傾向・悪性腫瘍・末梢循環障害では避け、感覚障害や意識障害がある部位は熱傷の危険が高いので、施術前に感覚と皮膚の状態を確かめ、温度と時間を決めて、途中でも熱感を尋ねながら実施する。高周波を使う機器では金属や体内埋め込み機器の有無も確認する。
比較表
比較項目温熱寒冷
血管・血流拡張し、血流は増加収縮し、血流は減少
組織代謝亢進低下
痛み鎮痛(血流増加・閾値上昇)鎮痛(神経伝導速度の低下・閾値上昇)
筋痙縮緩和する持続的な冷却で一時的に緩和する
膠原線維の伸展性増す(ストレッチと相性がよい)低下し硬くなる
心拍出量(全身作用)増加末梢血管収縮により中心への還流が増え、血圧が上がりやすい
主な適応慢性期の疼痛、拘縮、筋緊張亢進急性外傷・急性炎症(腫脹・出血の抑制)
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