学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ26P104

理由で解く 柔道整復師

QJ26P104 柔道整復理論

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午後 問104
問題
30歳の男性。1週前、野球の試合中バットを強く握りスイングした時、強い痛みを覚えた。受傷直後から小指のしびれを訴えている。手掌の遠位手根骨尺側部分に強い圧痛を認めた。母指の運動で制限がみられるのはどれか。
選択肢
1 屈曲
2 伸展
3 内転
4 外転
解答
正解3(内転)
解説

手掌尺側の有鈎骨鉤骨折によりギヨン管で尺骨神経が障害され、母指内転筋が働かなくなるため、母指の内転が制限される。

バットやゴルフクラブのグリップが強く当たるのは手掌の尺側、遠位手根骨列にある有鈎骨鉤の部位である。ここに繰り返し、あるいは強い衝撃が加わると有鈎骨鉤が骨折する。有鈎骨鉤はギヨン管(尺骨神経管)の橈側壁を構成するため、骨折や周囲の血腫によって管内の尺骨神経が圧迫され、小指と環指尺側のしびれが早期から出現する。尺骨神経深枝は母指内転筋、骨間筋、第3・4虫様筋、小指球筋を支配するので、麻痺すると母指を示指側へ引き寄せる内転の力が落ちる。紙を母指と示指でつまませると、母指内転筋が使えないため長母指屈筋で代償し母指IP関節が屈曲する(フローマン徴候陽性)。有鈎骨鉤骨折は通常の正面像では骨折線が見えにくく、手根管軸位撮影やCTが必要になるため、この病歴と圧痛部位から疑ったら医療機関での精査につなぐことが大切である。

✗ 1. 誤り
屈曲
母指の屈曲は長母指屈筋(正中神経の枝である前骨間神経)と短母指屈筋浅頭(正中神経)が主に担う。尺骨神経麻痺では明らかな制限として現れにくい。
✗ 2. 誤り
伸展
母指の伸展は長母指伸筋・短母指伸筋が担い、いずれも橈骨神経支配。本例の尺骨神経障害では障害されない。
✓ 3. 正しい
内転
母指内転筋は尺骨神経深枝の支配。ギヨン管での尺骨神経障害により内転力が低下し、フローマン徴候が陽性となる。
✗ 4. 誤り
外転
母指の外転は短母指外転筋(正中神経)と長母指外転筋(橈骨神経)が担当する。尺骨神経支配ではないため、本例で制限される運動ではない。
ポイント
  • スイング動作でグリップが当たる手掌尺側の圧痛+小指のしびれ=有鈎骨鉤骨折とギヨン管での尺骨神経障害を疑う。
  • 有鈎骨鉤はギヨン管の橈側壁。骨折や血腫で尺骨神経が圧迫される。
  • 尺骨神経深枝=母指内転筋・骨間筋・第3・4虫様筋・小指球筋。麻痺で母指内転が低下しフローマン徴候陽性。
  • 母指の屈曲・外転は主に正中神経、伸展は橈骨神経の担当。神経別に運動を整理する。
  • 通常の正面像では見逃されやすいため、手根管軸位撮影やCTでの確認を医療機関に依頼する。
比較表
母指の運動主な筋支配神経
屈曲長母指屈筋、短母指屈筋(浅頭)正中神経(前骨間神経)
伸展長母指伸筋、短母指伸筋橈骨神経
内転母指内転筋尺骨神経(深枝)
外転短母指外転筋/長母指外転筋正中神経/橈骨神経
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