学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ26P105

理由で解く 柔道整復師

QJ26P105 柔道整復理論

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午後 問105
問題
30歳の女性。パラグライダーで飛行後、右足関節伸展状態で着地して負傷した。歩行不能のため、友人に連れられ来所した。腫脹、限局性圧痛および足関節伸展時痛がみられる。母趾が直角に足底側に屈曲している。考えられるのはどれか。
選択肢
1 踵骨骨折
2 距骨骨折
3 舟状骨骨折
4 立方骨骨折
解答
正解2(距骨骨折)
解説

足関節を強く伸展(背屈)した状態で着地し、母趾が足底側に屈曲位をとっているという所見から、距骨(頸部)骨折が考えられる。

足関節が強く伸展(背屈)されると、距骨頸部が脛骨関節面の前縁に押しつけられて折れる。これが距骨頸部骨折の典型的な機序で、高所からの落下や着地時の衝撃で起こる。ここで診断の決め手になるのが母趾の肢位である。長母趾屈筋腱は距骨後突起の内側結節と外側結節の間の溝を通って足底へ向かうため、距骨の骨折によってこの部で腱が緊張・絞扼されると、母趾が足底側に屈曲したまま固定される。設問の「母趾が直角に足底側に屈曲している」はこの状態を示している。距骨は表面の大部分が関節軟骨に覆われ栄養血管の入り口が限られるため、転位が大きいと阻血性壊死や偽関節を来しやすく、予後を左右する。壊死に陥る部位に注意したい。距骨体部は足根管動脈やその三角骨枝が距骨頸部の下面から入って栄養されるため、頸部骨折ではこの流入路が絶たれ、骨折線より近位の距骨体部が壊死する(骨頭は足背動脈からの分枝で栄養され、頸部骨折で壊死する部位ではない)。転位の程度から体部壊死のリスクを推定するのがハウキンス(Hawkins)分類である。腫脹・限局性圧痛・伸展時痛に加えて歩行不能があることからも重い損傷であり、患部を安静な肢位で固定したうえで、速やかに医療機関での画像評価につなぐ。

✗ 1. 誤り
踵骨骨折
高所からの転落などで踵をついた軸圧により発生し、踵部の著明な腫脹・皮下出血とベーラー角の減少が特徴。背屈強制という機序にも、母趾の屈曲位固定にも合致しない。
✓ 2. 正しい
距骨骨折
足関節の過度の伸展(背屈)強制で距骨頸部が脛骨前縁に衝突して折れる。長母趾屈筋腱が距骨後突起の溝で緊張・絞扼されるため母趾が屈曲位に固定される、特徴的な所見と一致する。転位例では骨折線より近位の距骨体部が阻血性壊死に陥りやすい。
✗ 3. 誤り
舟状骨骨折
足の舟状骨は内側縦アーチの要で、直達外力、後脛骨筋の牽引による裂離、あるいは疲労骨折で損傷する。足背内側の限局性圧痛が主で、背屈強制の機序とは合わない。
✗ 4. 誤り
立方骨骨折
前足部の強い外転により踵骨と第4・5中足骨基部の間で圧迫される、いわゆるくるみ割り骨折が典型。足外側部の圧痛が主で、母趾の屈曲位固定は説明できない。
ポイント
  • 足関節の過度の伸展(背屈)強制=距骨頸部が脛骨前縁に衝突して骨折する典型機序。
  • 母趾が足底側に屈曲位のまま固定される=長母趾屈筋腱が距骨後突起の溝で絞扼された所見で、距骨骨折を強く示唆する。
  • 距骨は関節軟骨に覆われ血行に乏しい。頸部骨折では頸部下面から入る足根管動脈系の流入が絶たれ、骨折線より近位の「距骨体部」が阻血性壊死・偽関節に陥りやすい(転位の程度と壊死リスクの対応がハウキンス分類)。
  • 踵骨骨折は軸圧、舟状骨骨折は直達外力・牽引、立方骨骨折は前足部外転(くるみ割り)と機序で区別する。
  • 歩行不能・強い腫脹があれば安静肢位で固定し、速やかに医療機関の画像評価につなぐ。
比較表
骨折典型的な受傷機序特徴的所見
距骨(頸部)骨折足関節の過度の伸展(背屈)強制母趾の屈曲位固定、伸展時痛、距骨体部の阻血性壊死のリスク
踵骨骨折高所からの転落による軸圧踵部の腫脹・皮下出血、ベーラー角減少
舟状骨骨折直達外力、後脛骨筋の牽引、疲労骨折足背内側の限局性圧痛
立方骨骨折前足部の強い外転(くるみ割り)足外側部の圧痛
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