学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ26P102

理由で解く 柔道整復師

QJ26P102 柔道整復理論

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午後 問102
問題
54歳の女性。散歩中に足を滑らせ右手掌を衝いて転倒し受傷した。来所時、右肩関節はやや外転し弾発性固定を認めた。三角筋部の膨隆とモーレンハイム窩が消失していた。整復前と整復後の単純エックス線写真(別冊No. 2)を別に示す。整復後の固定肢位はどれか。
図
選択肢
1 肩関節軽度屈曲内旋位
2 肩関節下垂外旋位
3 肩関節外転外旋位
4 肩関節内転内旋位
解答
正解3(肩関節外転外旋位)
解説

手掌を衝いて受傷し、やや外転位での弾発性固定・三角筋部の膨隆消失・モーレンハイム窩の消失がそろえば、肩関節前方(烏口下)脱臼である。本問では整復後の固定肢位として肩関節外転外旋位が正しいとされている。

肩関節前方脱臼そのものに対する整復後の固定は、脱臼を再現する外転・外旋を避ける肢位、すなわち下垂・内転内旋位が基本である。それにもかかわらず外転外旋位が固定肢位となるのは、大結節骨折の合併が示唆される場合である。大結節骨片は棘上筋・棘下筋に牽引されて上方・後方へ転位するため、これらの筋が弛緩する外転・外旋位に保つことで骨片が整復位に落ち着く。本症例(54歳の女性、整復前後の単純エックス線写真が提示されている)も、外転外旋位が固定肢位とされていることからこの状況と考えられる。中高年の肩関節脱臼では大結節骨折や腱板の損傷を合併する頻度が高いので、整復前後のエックス線では脱臼の方向だけでなく骨折合併の有無も併せて確認するのが原則である。整復後も三角筋部の感覚(腋窩神経)と末梢循環を確認し、骨折合併例は医師の管理下で経過をみる。

✗ 1. 誤り
肩関節軽度屈曲内旋位
内旋位では棘上筋・棘下筋が引き伸ばされ、大結節骨片を上方・後方へ引く力が働くため、骨片の転位を助長する。大結節骨折の合併が示唆される本症例の固定肢位としては適さない。
✗ 2. 誤り
肩関節下垂外旋位
外旋は得られるものの下垂位のままでは棘上筋の緊張が残り、大結節骨片を引き上げる力を除けない。なお下垂外旋位固定は、骨折を伴わない初回前方脱臼で前下方の関節唇・関節包の治癒を狙う方法として知られるが、本症例で求められている狙いとは異なる。
✓ 3. 正しい
肩関節外転外旋位
外転により棘上筋が、外旋により棘下筋が弛緩するため、大結節骨片を引く力が最小になり整復位を保てる。外転枕などを用いて肢位を保持し、固定期間中は末梢循環・知覚を確認しながら医師と連携して経過を追う。
✗ 4. 誤り
肩関節内転内旋位
合併損傷のない肩関節前方脱臼に対する標準的な固定肢位(三角巾とバストバンドによる下垂内転内旋位)であり、脱臼だけであればこれが正解になる。本症例では大結節骨片や腱板を緊張させる方向に働くため適さない。
ポイント
  • 肩関節前方(烏口下)脱臼の固有所見=弾発性固定、三角筋部の膨隆消失(肩峰の角状突出)、モーレンハイム窩の消失、上腕はやや外転・外旋位。
  • 合併症チェック=大結節骨折・腱板損傷・腋窩神経麻痺(肩外側の知覚)・血管損傷。中高年ほど合併しやすい。
  • 脱臼のみなら固定は下垂・内転内旋位(脱臼を再現する外転外旋を避ける)。
  • 大結節骨折を合併すると、骨片を引く棘上筋・棘下筋を弛緩させる外転・外旋位で固定する。裏返せば外転外旋位固定が求められている=骨折合併が示唆されるという読み方ができる。
  • 整復前後のエックス線で骨折の有無を必ず確認し、骨折合併例は医師の管理下で後療法を進める。
比較表
脱臼のみ(合併損傷なし)大結節骨折を合併
固定肢位下垂・内転内旋位外転・外旋位
理由脱臼を再現する外転外旋を避ける骨片を引く棘上筋・棘下筋を弛緩させる
用いる固定具三角巾+バストバンド外転枕・外転装具など
注意点再脱臼(若年ほど反復しやすい)骨片の再転位、腱板機能の回復
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