学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ26P101

理由で解く 柔道整復師

QJ26P101 柔道整復理論

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午後 問101
問題
21歳の男性。2か月前にバスケットボール試合中に左膝を打ち負傷した。脛骨粗面部の発赤と腫脹を認めていたが、症状は軽快したという。最近、運動時に膝窩部痛が出現し来所した。ラックマンテストでエンドポイントはあるが、膝90度屈曲位で脛骨を前へ引くと出るような感じとそこから後ろに押すと戻るような感じがある。考えられるのはどれか。
選択肢
1 ジャンパー膝
2 前十字靱帯損傷
3 オズグットーシュラッター(Osgood-Schlatter) 病
4 後十字靱帯損傷
解答
正解4(後十字靱帯損傷)
解説

ラックマンテストで制動端(エンドポイント)が保たれているのにもかかわらず、膝90度屈曲位で脛骨が「引くと出て、押すと戻る」。これは後方に落ち込んだ脛骨を引き戻している所見で、後十字靱帯損傷を示す。

2か月前に膝を打って脛骨粗面部に発赤と腫脹が出ているという経過は、膝屈曲位で脛骨近位部が前方から後方へ押し込まれた受傷機転を示唆し、後十字靱帯(PCL)損傷の典型である。PCLが損傷されると、膝90度屈曲位で脛骨が重力により後方へ落ち込む(サギング)。この状態で前方引き出しテストを行うと、落ち込んだ脛骨が本来の位置へ戻るだけなのに「前へ引き出せる」と感じられ、前十字靱帯(ACL)損傷と取り違えられやすい(偽陽性の前方引き出し)。ACLが健常であればラックマンテストの終末感は硬く、エンドポイントを触知できる点が決め手になる。PCL損傷は急性期を過ぎると症状が軽くなり、あとから運動時痛や膝窩部の違和感、階段降段時の不安定感として現れることが多いため、本例のような遅発の受診となる。損傷程度の判定と治療方針の決定には画像検査が必要なので、医師の診察につなぐ。

✗ 1. 該当しない
ジャンパー膝
膝蓋腱の使いすぎによる付着部症で、膝蓋骨下極から腱にかけての圧痛とジャンプ・着地時痛が主症状。前後方向の動揺性は生じず、膝窩部痛や「引くと出て押すと戻る」所見は説明できない。
✗ 2. 該当しない
前十字靱帯損傷
ACL損傷ではラックマンテストの終末感が軟らかくなり、エンドポイントが消失するのが典型。本例はエンドポイントが保たれている。受傷機転も、急停止・方向転換・着地といった非接触動作によるものが多く、脛骨粗面部の直接打撲とは合わない。
✗ 3. 該当しない
オズグットーシュラッター(Osgood-Schlatter) 病
脛骨粗面の骨端症で、10〜15歳ごろの成長期にスポーツ活動で発症する。21歳の現症状として新たに発症する病態ではなく、脛骨粗面部の発赤・腫脹は打撲による局所反応と考えるのが自然。膝窩部痛や脛骨の前後動揺も説明できない。
✓ 4. 正しい
後十字靱帯損傷
屈曲位の膝で脛骨粗面部に前方からの外力を受けた受傷機転、エンドポイントの保たれたラックマンテスト、90度屈曲位で脛骨が前方へ出て後方へ戻る所見(後方サギングと偽陽性の前方引き出し)がそろう。サギングサイン、後方引き出しテストで確認し、画像評価のため医師へ紹介する。
ポイント
  • PCL損傷の受傷機転=膝屈曲位で脛骨近位部を前方から打つ(ダッシュボード損傷、転倒して脛骨粗面部を打つ)。
  • PCL損傷では90度屈曲位で脛骨が後方へ落ち込む(サギングサイン)。すでに後方へ落ちているので、前へ引くと本来の位置に戻るだけなのに術者には「前方引き出し陽性」と感じられる(偽陽性)。そこから押せば再び後方へ落ちる。
  • ACLとの決め手はラックマンテストのエンドポイント。保たれていればACLは健常。
  • PCL損傷は急性期を過ぎると症状が軽くなり、運動時痛・膝窩部痛・降段時の不安定感として遅れて現れる。
  • 靱帯損傷を疑ったら、装具・固定と大腿四頭筋の強化を含む後療法を進めつつ、確定診断のため医師の画像検査につなぐ。
比較表
前十字靱帯(ACL)損傷後十字靱帯(PCL)損傷
受傷機転非接触の急停止・方向転換・着地屈曲位で脛骨近位部を前方から打つ
ラックマンテスト前方移動増大、エンドポイント消失エンドポイントは保たれる
90度屈曲位前方引き出し陽性(真の前方動揺)脛骨が後方へ落ち込む(サギング)。後方へ落ち込んだ脛骨が、引くと本来の位置に戻る=術者には前方引き出し陽性と感じられる(偽陽性)/押すと再び後方へ落ちる
特徴的所見受傷時の断裂音、著明な関節血腫、Nテストサギングサイン、後方引き出しテスト
経過膝崩れ(giving way)が続く症状が軽く、遅れて受診しやすい
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