学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §25 臨床実地問題 / QJ26P065

理由で解く 柔道整復師

QJ26P065 整形外科学

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午後 問65
問題
43歳の男性。右下肢の疼痛と脱力を主訴として来院した。3週前に重量物を挙上した際に、いわゆるぎっくり腰になった。右下腿遠位外側から足背に感覚障害を認める。この患者にみられる所見はどれか。
選択肢
1 スパーリングテスト陽性
2 膝伸展筋力低下
3 母趾伸展筋力低下
4 膝蓋腱反射低下
解答
正解3(母趾伸展筋力低下)
解説

下腿遠位の外側から足背にかけての感覚障害は、L5神経根の支配領域(デルマトーム)に一致します。重量物挙上を契機としたL4/5椎間板ヘルニアによるL5根障害と考えられ、長母趾伸筋の筋力低下、すなわち母趾伸展筋力低下をみる3が答えです。

腰椎椎間板ヘルニアは後外側に脱出することが多く、そこを通過している「1つ下の番号」の神経根を圧迫します。つまりL4/5ヘルニアならL5根、L5/S1ヘルニアならS1根の症状が出ます。L5根は、感覚が下腿外側から足背・母趾側、運動が長母趾伸筋(母趾の背屈)・前脛骨筋・中殿筋を担い、日常的に確認できる腱反射の代表がありません。L4根なら大腿四頭筋(膝伸展)と膝蓋腱反射、下腿内側の感覚。S1根なら下腿後面から足底・足の外側縁の感覚、下腿三頭筋(つま先立ち)とアキレス腱反射です。本例は感覚障害の分布がL5に合致し、脱力の訴えもL5支配筋を疑わせます。評価では母趾を背屈させて抵抗をかけ左右差をみるほか、下肢伸展挙上(SLR)テストで神経根の緊張を確認します。会陰部のしびれ、排尿・排便障害、両下肢の進行する麻痺があれば馬尾症候群を疑い、緊急に医療機関へつなぎます。

✗ 1. 誤り
スパーリングテスト陽性
スパーリングテストは、頸部を後屈・患側へ側屈・回旋させて椎間孔を狭め、上肢に放散痛が出るかをみる頸椎神経根症の検査です。本例は腰椎由来なので陽性にはなりません。腰椎神経根症では下肢伸展挙上(SLR)テストを、上位腰椎(L2〜L4)を疑うなら大腿神経伸展(FNS)テストを用います。
✗ 2. 誤り
膝伸展筋力低下
膝を伸ばす大腿四頭筋は主にL3〜L4支配です。L5根が障害された本例では通常低下しません。膝伸展筋力低下がみられるなら、より上位(L3/4ヘルニアなど)の障害を考えることになります。
✓ 3. 正しい
母趾伸展筋力低下
母趾を反らせる長母趾伸筋はほぼL5単独の支配で、L5根障害でもっとも鋭敏に出る筋力所見です。母趾を背屈させて上から抵抗をかけ、健側と比べて弱ければ陽性と考えます。感覚障害(下腿外側〜足背)と一致するため、L4/5椎間板ヘルニアによるL5根障害という診断につながります。進行すると前脛骨筋も障害され、下垂足からつま先が引っかかる歩き方(鶏歩)になります。
✗ 4. 誤り
膝蓋腱反射低下
膝蓋腱反射はL4(L2〜L4)を反映するため、L5根障害の本例では通常保たれます。腱反射で高位を推定するときは、膝蓋腱反射=L4、アキレス腱反射=S1、L5には対応する代表的な腱反射がない、という3点セットで覚えておくと確実です。
ポイント
  • 腰椎椎間板ヘルニアは後外側脱出が多く、1つ下の番号の神経根を圧迫する(L4/5→L5根、L5/S1→S1根)。
  • L5根=下腿外側〜足背の感覚、長母趾伸筋・前脛骨筋・中殿筋の筋力、代表的な腱反射なし。
  • L4根=下腿内側の感覚、膝伸展(大腿四頭筋)、膝蓋腱反射。S1根=下腿後面〜足底外側、つま先立ち、アキレス腱反射。
  • スパーリングテストは頸椎、SLR・FNSテストは腰椎。検査の担当部位を混同しない。
  • 会陰部のしびれ、排尿・排便障害、進行する下肢麻痺は馬尾症候群を疑い、緊急に医療機関へつなぐ。
比較表
神経根責任高位(多い)感覚障害の分布筋力低下腱反射
L4L3/4下腿内側膝伸展(大腿四頭筋)膝蓋腱反射 低下
L5L4/5下腿外側〜足背・母趾側母趾背屈(長母趾伸筋)、足関節背屈代表的な低下なし
S1L5/S1下腿後面〜足底・足の外側縁底屈(下腿三頭筋)、つま先立ち困難アキレス腱反射 低下
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