学習トップ理由で解く 柔道整復師リハビリテーション医学 ▸ §7 リハビリテーションの実際 / QJ26P020

理由で解く 柔道整復師

QJ26P020 リハビリテーション医学

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午後 問20
問題
頸髄損傷による完全四肢麻痺(第 5頸髄節残存)で可能な目標はどれか。
選択肢
1 自助具使用での食事動作
2 床上での更衣動作
3 頸髄損傷者用に改造した自動車の運転
4 下肢装具を使用しての歩行
解答
正解1(自助具使用での食事動作)
解説

第5頸髄節まで残存する完全四肢麻痺では、三角筋と肘屈筋群(上腕二頭筋・上腕筋・腕橈骨筋)が使える。手指で握ることはできないため、万能カフなどの自助具を用いた食事動作が現実的な到達目標になる。

頸髄損傷の到達目標は、残存する筋がどこまでかで決まる。C5残存では肩関節の屈曲・外転と肘関節の屈曲・前腕回外までが可能で、肘伸展(上腕三頭筋、C7)、手関節背屈(C6)、手指の屈伸(C8〜T1)は失われている。物を握れないので、スプーンやフォークを差し込んで手に固定する万能カフ(ユニバーサルカフ)と、上肢の重さを支えて水平面の動きを助けるBFO(バランス式前腕装具、別名MAS=可動性上肢支持具)を併用すれば、口元まで運ぶ動作を自分で行える。BFOはあくまで腕を支えて動かしやすくする装具であって、指でつまむ機能を作り出すものではない点に注意したい。移動は電動車椅子が基本となり、更衣・移乗・排泄はおおむね介助を要する。これに対しC6まで残存すると手関節背屈が使えるようになり、手関節を背屈させると指が受動的に屈曲する腱固定作用(テノデーシスアクション)で軽い把持が可能となる。この作用を利用する把持装具(手関節駆動式把持装具)が選択肢に入るのもC6以降で、握れないC5との分かれ目になる。さらにC7まで残存すれば肘伸展が使えてプッシュアップ・移乗・床上動作の自立が視野に入る。「どの筋が使えるとどの動作ができるか」を1段ずつ結びつけて覚えると、レベルの違う設問にも対応できる。

✓ 1. 正しい
自助具使用での食事動作
肩関節の屈曲・外転と肘関節の屈曲が残っているため、握力を必要としない万能カフなどでスプーンを固定すれば口元まで運べる。必要に応じてBFO(バランス式前腕装具)で上肢の重さを支え、高さを調整したテーブルを併用する。
✗ 2. 誤り
床上での更衣動作
更衣には体幹バランスの保持、肘伸展を使った体位の変換、手指での衣類の操作が必要になる。C5残存ではこれらが揃わないため自立は難しく、介助を前提に進める。
✗ 3. 誤り
頸髄損傷者用に改造した自動車の運転
改造車であってもハンドル操作には手関節背屈以下の機能が要る。運転が目標となる目安はC6〜C7残存以上で、C5残存では通常は対象にならない。
✗ 4. 誤り
下肢装具を使用しての歩行
完全四肢麻痺では下肢に随意運動がなく、装具歩行に不可欠な上肢での杖支持もできない。移動手段としては電動車椅子の操作習熟を目標に据える。
ポイント
  • C5残存で使えるのは三角筋・上腕二頭筋・上腕筋・腕橈骨筋。肩の屈曲外転と肘屈曲・前腕回外が可能。
  • 肘伸展はC7、手関節背屈はC6、手指はC8〜T1。C5ではいずれも使えない。
  • 握力がなくても万能カフ(ユニバーサルカフ)とBFO(バランス式前腕装具)で食事動作は自立しうる。
  • BFOは上肢の重さを支えて動きを助ける装具であり、把持装具ではない。腱固定作用を使う把持装具(手関節駆動式把持装具)はC6残存が適応。
  • 移動は電動車椅子が基本。更衣・移乗・排泄は介助を要することが多い。
  • 「残存筋 → できる動作」を1段ずつ結びつけると、レベル違いの問題にも応用できる。
比較表
残存レベル主に使える筋到達目標の目安
C4横隔膜、僧帽筋環境制御装置の利用、顎・呼気などで操作する電動車椅子
C5三角筋、上腕二頭筋、上腕筋、腕橈骨筋自助具での食事(万能カフ+BFO=上肢を支える装具)、電動車椅子。把持はできない
C6長・短橈側手根伸筋、大胸筋鎖骨部腱固定作用による軽い把持(把持装具=手関節駆動式把持装具の適応)、平地での車椅子自走、改造車の運転が視野に
C7上腕三頭筋、指伸筋プッシュアップ、移乗・床上動作の自立、キャスター上げ
C8〜T1手指の屈筋・手内在筋手指での把持、ADLのおおむね自立
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