学習トップ理由で解く 柔道整復師リハビリテーション医学 ▸ §9 臨床実地問題 / QJ26P021

理由で解く 柔道整復師

QJ26P021 リハビリテーション医学

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午後 問21
問題
43歳の男性。2か月前に高所での作業中に転落し、第5頸椎脱臼骨折をきたし頸髄を損傷した。脱臼骨折は整形外科で観血的整復固定術を施行されている。現在の徒手筋力テストは両肘関節の屈曲が4、手関節の背屈が4および肘関節の伸展が0であり、握力は0kgである。リハビリテーションで正しいのはどれか。
選択肢
1 ハンドリムにゴムを巻き車椅子駆動練習
2 車椅子移乗時の立ち上がり練習
3 車椅子での坂道の昇降練習
4 車椅子でのキャスターあげ練習
解答
正解1(ハンドリムにゴムを巻き車椅子駆動練習)
解説

肘関節屈曲4・手関節背屈4・肘関節伸展0・握力0kgという所見は、C6残存レベルを示す。握れなくても手掌の摩擦でハンドリムを押せるよう、滑り止めのゴムを巻いて車椅子駆動を練習するのが適切。

徒手筋力テストの所見を支配神経レベルに置き換えると残存レベルが決まる。肘屈曲を担う上腕二頭筋・腕橈骨筋はC5〜C6、手関節背屈を担う長・短橈側手根伸筋はC6、肘伸展の上腕三頭筋はC7、手指の屈筋はC8。本症例は手関節背屈まで働き肘伸展が0なので、残存レベルはC6と判定できる。C6では手指の屈筋が麻痺して握力は出ないが、手関節を背屈させると指が受動的に屈曲する腱固定作用(テノデーシスアクション)と、手掌をハンドリムに押しつけたときの摩擦を利用することで、平地であれば車椅子を自走できる。ハンドリムに摩擦材(ゴム)を巻く、あるいは滑り止め付きの手袋を使うと押す力が伝わりやすくなり、駆動効率が上がる。一方、肘伸展筋が働かない段階ではプッシュアップ、坂道の駆動、キャスター上げといった「上肢で押し切る」動作は当面の目標にならない。まず平地駆動を安定させ、トランスファーボードなどを併用した移乗を段階的に進めるのが現実的な組み立てになる。

✓ 1. 正しい
ハンドリムにゴムを巻き車椅子駆動練習
握力が0でも、手掌をハンドリムに押しつける摩擦を使えば駆動できる。ゴムを巻いて摩擦を増やすことで力が伝わりやすくなり、C6残存レベルで最初に取り組む目標として妥当である。
✗ 2. 誤り
車椅子移乗時の立ち上がり練習
頸髄損傷による四肢麻痺では下肢に随意運動がなく、立ち上がりは成立しない。移乗はトランスファーボードなどを用い、座位のまま滑らせて行う方法を練習する。
✗ 3. 誤り
車椅子での坂道の昇降練習
上り坂の駆動も下り坂での制動も、肘を伸ばして押す力すなわち上腕三頭筋の働きに大きく依存する。肘伸展が0の段階では難しく、平地駆動が安定してから段階的に検討する。
✗ 4. 誤り
車椅子でのキャスターあげ練習
ハンドリムを一気に押し出して前輪を浮かせる動作で、上腕三頭筋による強い肘伸展が必要になる。目標となるのはおおむねC7残存以上で、本症例の現時点の課題としては先の段階にあたる。
ポイント
  • 肘屈曲=C5〜C6、手関節背屈=C6、肘伸展=C7、手指屈曲=C8。MMTから残存レベルを逆算する。
  • 本症例は手関節背屈4・肘伸展0・握力0kg → 残存レベルはC6。
  • C6では腱固定作用(テノデーシス)と手掌の摩擦を使い、平地の車椅子自走が可能。
  • ハンドリムのゴム巻きや滑り止め手袋は、握力を使わずに駆動力を伝えるための工夫。
  • 坂道駆動・キャスター上げ・プッシュアップは上腕三頭筋を要し、C7残存以上の目標。まず平地駆動と移乗から進める。
比較表
検査所見主な支配レベル本症例の結果判定への意味
肘関節屈曲 MMT4C5〜C6機能ありC5レベルまでは機能が残っている
手関節背屈 MMT4C6機能あり残存はC6まで
肘関節伸展 MMT0C7機能なしC7レベル以降(より尾側)は障害されている
握力 0kgC8機能なしC8レベルは障害、手指の把持は不能
→ 残存レベルはC6。平地での車椅子自走を当面の目標とする。
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