学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §19 各論(脱臼) 上肢 / QJ25P071

理由で解く 柔道整復師

QJ25P071 柔道整復理論

出典:第25回柔道整復師国家試験(2017)午後 問71
問題
脱臼で誤っている組合せはどれか。
選択肢
1 肩鎖関節上方脱臼-肩鎖靱帯損傷
2 肩関節烏口下脱臼-バンカート損傷
3 肘関節後方脱臼-関節包後面断裂
4 示指 MP 関節脱臼掌側板断裂
解答
正解3(肘関節後方脱臼-関節包後面断裂)
解説

肘関節後方脱臼で断裂するのは関節包の前面です。肘伸展位で手をつくと肘に過伸展が強制され、テコの支点となる前方の支持組織(関節包前面・上腕筋)が引き伸ばされて断裂するため、「後面断裂」は組合せとして成立しません。

肘関節後方脱臼は、肘伸展位で手をついて過伸展が強制され、鉤状突起が上腕骨滑車を乗り越えて前腕が後上方へ転位するものです。このとき前方の関節包・上腕筋が引き伸ばされて断裂し、後面は前腕骨が突き破って出るのではなく押し広げられる形になります。つまり転位方向(後方)と損傷部位(前面)は一致しません。損傷組織は「どちらへ転位したか」ではなく、「その脱臼が起こる過程でどの組織が引き伸ばされ、支えとして破綻するか」という機序から考えます。肩関節前方脱臼では骨頭が前下方へ移動する過程で関節窩前下方の関節唇・関節包が剥離し(バンカート損傷)、肩鎖関節上方脱臼では上方への転位を直接止めている肩鎖靱帯が破綻し、MP関節背側脱臼では基節骨が背側へ転位する過程で掌側の掌側板が破綻します。方向が一致して見える脱臼もあれば、肘のように逆になる脱臼もあるため、方向の一般則で検算しようとせず、肩関節前方(烏口下)脱臼=関節窩前下方の関節唇剥離(バンカート損傷)/肘関節後方脱臼=過伸展で引き裂かれる関節包前面・上腕筋/肩鎖関節上方脱臼=上方転位を止める肩鎖靱帯/MP関節背側脱臼=掌側板、というように受傷機序と損傷部位をセットで覚えます。

✓ 3. これが誤っている組合せ(=答え)
肘関節後方脱臼-関節包後面断裂
後方脱臼では過伸展強制により関節包の前面と上腕筋が損傷されます。「後面断裂」は損傷部位が逆で、組合せとして成立しません。なお肘関節脱臼は内側側副靱帯損傷や上腕動脈・正中神経・尺骨神経の損傷を伴うことがあるため、整復前後に橈骨動脈の拍動と手指の知覚・運動を必ず確認します。
✗ 1. 正しい組合せ(=答えではない)
肩鎖関節上方脱臼-肩鎖靱帯損傷
鎖骨遠位端が上方へ転位する過程で、まず肩鎖靱帯(および関節包)が損傷され、転位が大きくなると烏口鎖骨靱帯(菱形靱帯・円錐靱帯)も断裂します。上方への転位を直接止めているのが肩鎖靱帯であり、組合せとして正しいものです。
✗ 2. 正しい組合せ(=答えではない)
肩関節烏口下脱臼-バンカート損傷
烏口下脱臼は肩関節前方脱臼の最も多い型で、骨頭が前下方へ移動する際に関節窩前下方の関節唇・関節包が剥離します。これがバンカート損傷で、反復性脱臼の主因になります。骨頭後外側の陥凹(ヒル・サックス損傷)を伴うこともあり、組合せとして正しいものです。
✗ 4. 正しい組合せ(=答えではない)
示指 MP 関節脱臼掌側板断裂
示指MP関節脱臼は背側脱臼が代表で、基節骨が中手骨頭の背側へ転位する過程で掌側板が破綻します。掌側板は基節骨基部側の付着が強固で、断裂・剥離するのは薄い膜様部である中手骨側の近位付着部です。そのため掌側板は基節骨に付いたまま背側へ引き上げられ、中手骨頭の背側に介在すると徒手整復が困難な複合脱臼となります。組合せとして正しいものです。整復で避けるべきなのは牽引で、牽引すると掌側板の嵌頓がかえって強まります。牽引を加えず、手関節を屈曲して屈筋腱を緩め、過伸展位を保ったまま基節骨基部を中手骨頭の上を滑らせるように掌側遠位へ押し進めます。それでも整復できないときは操作を反復せず、早期に医療機関へ紹介します。
ポイント
  • 肘関節後方脱臼=過伸展強制により関節包前面断裂+上腕筋損傷。転位方向(後方)と損傷部位(前面)は一致しない点が本問の狙い。
  • 肩鎖関節上方脱臼:肩鎖靱帯 → 転位が進めば烏口鎖骨靱帯(菱形・円錐)の順に破綻する。
  • 肩関節前方(烏口下)脱臼:バンカート損傷(関節窩前下方の関節唇剥離)+ヒル・サックス損傷。
  • MP関節背側脱臼:掌側板は中手骨側(近位付着部)で破綻し、基節骨に付いたまま背側へ引き上げられる。中手骨頭背側へ介在すると整復困難(複合脱臼)。整復は牽引を加えず、手関節屈曲+過伸展位保持で基節骨基部を押し進める。困難なら紹介する。
  • 肘関節脱臼では整復前後に橈骨動脈拍動・正中/尺骨神経の機能を確認し、記録に残す。
比較表
転位の方向と損傷組織が同じ側になる脱臼(肩鎖・肩)と、逆になる脱臼(肘)がある。方向だけで機械的に判断しない。
脱臼転位の方向主に損傷される組織(破綻の機序)
肩鎖関節上方脱臼鎖骨遠位端が上方肩鎖靱帯 →(進めば)烏口鎖骨靱帯:上方転位を止める支持機構が破綻
肩関節烏口下脱臼骨頭が前下方関節唇前下方(バンカート損傷)、骨頭後外側の陥凹
肘関節後方脱臼前腕が後上方関節包前面・上腕筋・内側側副靱帯:過伸展強制で前方の支持組織が引き伸ばされて断裂
示指MP関節背側脱臼基節骨が背側掌側板:中手骨側(近位)で破綻し、中手骨頭背側へ介在することがある
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