学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §19 各論(脱臼) 上肢 / QJ24P091

理由で解く 柔道整復師

QJ24P091 柔道整復理論

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午後 問91
問題
成人の肘関節後方脱臼で合併しにくいのはどれか。
選択肢
1 上腕骨内側上顆骨折
2 尺骨鉤状突起骨折
3 内側側副靱帯断裂
4 尺骨神経損傷
解答
正解1(上腕骨内側上顆骨折)
解説

肘関節後方脱臼では内側が大きく離開するため、内側側副靱帯断裂・尺骨鉤状突起骨折・尺骨神経損傷を合併しやすい。一方、上腕骨内側上顆の裂離骨折は骨端線の残る小児に多く、成人では起こりにくい。したがって答えは1。

肘関節後方脱臼は、肘伸展位で手をついて過伸展が強制され、尺骨鉤状突起が上腕骨滑車を乗り越えて後方へ移動することで生じる。このとき内側は強く開くため、内側側副靱帯の断裂はほぼ必発で、滑車と衝突する鉤状突起の骨折、伸張される尺骨神経の障害を伴いやすい。橈骨頭骨折や上腕動脈損傷も知られた合併症である。ここで年齢が鍵になる。骨端線が開いている小児・思春期では、靱帯や屈筋群の付着部ごと骨が引き剥がされる形で上腕骨内側上顆の裂離骨折が高頻度に起こり、骨片が関節内に嵌入することもある。骨端線が閉鎖した成人では骨より靱帯のほうが先に負けるため、内側上顆骨折の頻度は下がる。「合併しにくい」であって「起こらない」ではない点にも注意する。

✓ 1. 合併しにくい(これが答え)
上腕骨内側上顆骨折
成人では骨端線が閉鎖しているため、内側に離開力が加わると付着部の骨ではなく靱帯実質部が断裂する。内側上顆の裂離骨折は、骨端線が力学的弱点となる小児・思春期の肘関節後方脱臼で高頻度に合併する損傷である。
✗ 2. 合併しやすい(答えではない)
尺骨鉤状突起骨折
脱臼の過程で鉤状突起が上腕骨滑車に衝突して折れるため、成人でも高頻度に合併する。骨片が大きいと整復後も後方への不安定性が残るため、整復できた後もエックス線評価を医師に依頼する。
✗ 3. 合併しやすい(答えではない)
内側側副靱帯断裂
肘が後方へ脱臼するには内側の制動が破綻する必要があり、成人の後方脱臼ではほぼ必発の合併損傷といえる。整復後は外反ストレスに対する不安定性の評価と、それを避ける肢位での固定が必要になる。
✗ 4. 合併しやすい(答えではない)
尺骨神経損傷
尺骨神経は内側上顆後方の尺骨神経溝を走り、内側が離開する際に牽引・圧迫を受けやすい。整復の前後で小指・環指尺側のしびれと手内在筋の筋力を必ず確認し、記録に残す。
ポイント
  • 成人の肘関節後方脱臼の三本柱:内側側副靱帯断裂・尺骨鉤状突起骨折・尺骨神経損傷。橈骨頭骨折も多い。
  • 年齢で「負ける場所」が変わる。骨端線が開いていれば骨(裂離骨折)、閉じていれば靱帯(断裂)
  • 小児の肘関節後方脱臼では内側上顆骨折の合併が多く、骨片の関節内嵌入を見逃さない。
  • 整復前後に必ず確認:尺骨神経・正中神経の感覚と運動、橈骨動脈拍動、末梢の色調。
  • 「合併しにくい」は頻度の問題。成人でも起こりうるため、画像評価は医師に委ねる。
比較表
小児・思春期成人
骨端線開存(力学的弱点)閉鎖
内側で先に破綻する部位内側上顆(骨)内側側副靱帯(靱帯実質部)
特徴的な合併損傷上腕骨内側上顆裂離骨折、骨片の関節内嵌入内側側副靱帯断裂、尺骨鉤状突起骨折、橈骨頭骨折
神経障害いずれも尺骨神経損傷に注意(整復前後で確認)
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