学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §19 各論(脱臼) 上肢 / QJ24P090

理由で解く 柔道整復師

QJ24P090 柔道整復理論

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午後 問90
問題
肩関節前方脱臼で正しいのはどれか。2つ選べ。
選択肢
1 鎖骨下脱臼は烏口下脱臼に比べ外転角度が大きい。
2 バンカート損傷は上腕骨頭後外側の欠損をいう。
3 ヒル・サックス損傷は再脱臼の原因となる。
4 スティムソン法による整復は背臥位で行う。
解答
正解1(鎖骨下脱臼は烏口下脱臼に比べ外転角度が大きい。)、3(ヒル・サックス損傷は再脱臼の原因となる。)
解説

肩関節前方脱臼は、骨頭が内下方へ進むほど上腕の外転角度が大きくなる。また骨頭後外側の陥凹(ヒル・サックス損傷)は反復性脱臼の器質的原因となる。正しいのは1と3。

前方脱臼は骨頭の停止位置により、烏口下脱臼(最も多い)、鎖骨下脱臼関節窩下脱臼に分類する。骨頭が関節窩から内方・下方へ移動するほど、上腕骨骨幹部は相対的に外転を強いられ、関節窩下脱臼では著明な外転位をとる。なお、上肢が挙上位のまま固定される直立脱臼(luxatio erecta)は下方脱臼に分類され、前方脱臼の関節窩下脱臼とは別のものである。脱臼の瞬間には関節窩前下縁の関節唇・関節包が剥がされるバンカート損傷と、骨頭後外側が関節窩前縁に打ちつけられてへこむヒル・サックス損傷が生じ、いずれも治癒後に不安定性を残して反復性脱臼の温床となる。整復にあたっては、腋窩神経(三角筋部の感覚と三角筋の収縮)の確認を整復前後で必ず行う。

✓ 1. 正しい
鎖骨下脱臼は烏口下脱臼に比べ外転角度が大きい。
骨頭がより内方・下方の鎖骨下へ移動するぶん、上腕は大きな外転位をとる。「骨頭が下がるほど腕は上がる」と覚えると、烏口下<鎖骨下<関節窩下という外転角度の序列がそのまま出てくる。
✓ 3. 正しい
ヒル・サックス損傷は再脱臼の原因となる。
骨頭後外側の陥凹が大きいと、外転・外旋時にこの欠損が関節窩前縁に噛み込み、骨頭が前方へ乗り越えやすくなる。バンカート損傷による前下方の制動力低下と合わさって、軽い外力でも脱臼を繰り返すようになる。
✗ 2. 誤り
バンカート損傷は上腕骨頭後外側の欠損をいう。
これはヒル・サックス損傷の説明。バンカート損傷は肩甲骨関節窩前下縁の関節唇(骨片を伴えば骨性バンカート)が剥離するもの。「バンカート=受け皿側、ヒル・サックス=ボール側」と役割で覚えると入れ替わらない。
✗ 4. 誤り
スティムソン法による整復は背臥位で行う。
スティムソン法は腹臥位で行う。ベッドの端から患肢を垂らし、重錘などで持続的に下方牽引して筋の弛緩を待ち、自然に整復されるのを促す方法である。背臥位で行う代表はヒポクラテス法(踵骨法)で、コッヘル法は背臥位・座位いずれでも行われる。
ポイント
  • 前方脱臼の外転角度は烏口下<鎖骨下<関節窩下。骨頭が下がるほど腕が上がる。
  • 上肢が挙上位で固定される直立脱臼(luxatio erecta)は下方脱臼。前方脱臼の関節窩下脱臼と混同しない。
  • バンカート=関節窩前下縁(受け皿側)/ヒル・サックス=骨頭後外側(ボール側)。どちらも反復性脱臼の原因。
  • スティムソン法は腹臥位・重錘による持続牽引。筋弛緩を待つ愛護的な方法。
  • 整復前後で腋窩神経(三角筋部の感覚・三角筋の収縮)と橈骨動脈拍動を必ず確認する。
比較表
前方脱臼の型骨頭の位置上腕の外転頻度
烏口下脱臼烏口突起の下小さい最多
鎖骨下脱臼より内方・鎖骨の下中等度まれ
関節窩下脱臼関節窩の直下最大(著明な外転位をとる)まれ
バンカート損傷ヒル・サックス損傷
部位肩甲骨関節窩の前下縁(受け皿側)上腕骨頭の後外側(ボール側)
病態関節唇・関節包の剥離骨頭の陥凹(圧迫骨折)
意義いずれも前下方の制動を失わせ、反復性脱臼の器質的原因となる
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