学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ24P109

理由で解く 柔道整復師

QJ24P109 柔道整復理論

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午後 問109
問題
21歳の男性。2か月前、ラグビーの試合中に右膝前面を強打したが試合はそのまま出場した。それ以降、右膝に軽い腫れや違和感があった。1週前から練習中に右膝後方に痛みが出現し、不安定感も出てきたので来所した。初検時、検者は患者を背臥位とし図のような評価を行った。検者が健側との比較目的でみているのはどれか。
図
選択肢
1 下腿筋の萎縮
2 関節の腫脹
3 脛骨粗面の位置
4 膝蓋骨の不安定性
解答
正解3(脛骨粗面の位置)
解説

膝前面の強打による後十字靱帯損傷を疑う場面。背臥位で股関節・膝関節を屈曲させ、側方から両膝の輪郭を比較するのがサギングサイン(後方落ち込み徴候)の評価で、健側と比べて脛骨が後方へずれていないか(=脛骨粗面の位置)をみる。正解は3。

膝を曲げた状態で脛骨前面を強打すると、脛骨が大腿骨に対して後方へ押し込まれ、これを制動する後十字靱帯が損傷する(ダッシュボード損傷と同じ機序)。損傷が残ったまま時間が経つと、背臥位で股関節・膝関節を屈曲させて下腿の自重をかけたときに、損傷側の脛骨近位部だけが後方へ沈み込む。側方から観察すると脛骨粗面の位置が健側より後方(低い位置)となり、これがサギングサイン(後方落ち込み徴候)である。この状態を見落として脛骨を前方に引くと、後方に落ちた位置から戻っているだけなのに「前方引き出しテスト陽性=前十字靱帯損傷」と誤読してしまう。だからこそ、まず落ち込みの有無を健側と比較して確認する順序が重要になる。後十字靱帯損傷は初期症状が軽く、本例のように受傷後しばらくしてから膝後方の痛みや不安定感で来所することがあるため、機転を聞き出して疑いを持つことが鍵となる。

✓ 3. 正しい
脛骨粗面の位置
背臥位で膝を屈曲させ、側方から両膝の輪郭を比べると、後十字靱帯が損傷した側では脛骨近位が後方へ落ち込み、脛骨粗面の位置が健側と食い違う。膝前面強打という受傷機転と、後方の痛み・不安定感という訴えにも合致する。
✗ 1. 誤り
下腿筋の萎縮
萎縮の左右差は、膝蓋骨上縁や脛骨粗面から一定の距離を決めて周径を測定して評価する。サギングサインのように膝を屈曲させて側方から輪郭をみる評価は、前後の位置関係を比べるためのもので、萎縮の比較には適さない。
✗ 2. 誤り
関節の腫脹
腫脹・関節液貯留は膝蓋跳動、膝蓋上嚢の膨隆の触知、周径測定などで評価する。膝屈曲位で側方から脛骨の位置関係をみる評価とは目的が異なる。
✗ 4. 誤り
膝蓋骨の不安定性
膝蓋骨の不安定性は、膝伸展位(または軽度屈曲位)で膝蓋骨を外方へ押すアプリヘンションテストや、内外側への可動性の触診で調べる。本例の受傷機転(前面の強打)と後方の痛みからも、まず後十字靱帯損傷を考える。
ポイント
  • 膝前面(脛骨近位前面)の強打=後十字靱帯損傷を第一に考える。ダッシュボード損傷と同じ機序。
  • サギングサイン:背臥位・股関節と膝関節を屈曲させ、側方から健側と比較して脛骨近位の後方落ち込みをみる。
  • 落ち込みを見落とすと、前方に引き戻す動きを前方引き出しテスト陽性と誤認する。順序として先に落ち込みを確認する。
  • 後十字靱帯損傷は初期症状が軽く、慢性期に膝後方痛や不安定感で顕在化することがある。
  • 疑った時点で競技を続けさせず、医師の画像評価(ストレス撮影・MRI)につなぐ。
比較表
前十字靱帯損傷後十字靱帯損傷
典型的な受傷機転非接触の急停止・方向転換、外反+回旋膝屈曲位での脛骨前面の強打
特徴的な訴え受傷時の断裂音、著明な関節血症、膝崩れ初期症状が軽く、慢性期の後方痛・不安定感
代表的な徒手検査ラックマンテスト、前方引き出しテスト、Nテストサギングサイン、後方引き出しテスト
脛骨の動く向き前方へ移動する後方へ落ち込む
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