学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ24P110

理由で解く 柔道整復師

QJ24P110 柔道整復理論

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午後 問110
問題
21歳の男性。空手の試合中に左下腿前面を蹴られ、翌日、疼痛が増強したので来所した。軋轢音および介達痛は認められなかった。高度腫脹による皮膚光沢がみられ、自発痛、筋の伸張時痛、感覚障害、運動障害が認められた。搬送に際してまず行うべき処置はどれか。2つ選べ。
選択肢
1 安静
2 冷却
3 圧迫
4 挙上
解答
正解1(安静)、2(冷却)
解説

高度腫脹・皮膚光沢、強い自発痛、筋の伸張時痛、感覚障害、運動障害がそろっており、下腿の急性コンパートメント症候群を疑う。搬送までに行うのは安静と冷却で、圧迫と挙上は避ける。正解は1と2。

軋轢音・介達痛がなく骨折を積極的には示唆しない一方で、翌日に疼痛が増強し、皮膚が張って光沢を帯び、他動的に筋を伸ばしたときの痛み(伸張時痛)と感覚障害・運動障害が現れている。これは下腿の筋区画(とくに前方区画)の内圧が上昇し、筋・神経の血流が絶たれつつある状態を示す危険な所見である。区画内圧の上昇は数時間単位で不可逆的な筋壊死・神経麻痺(阻血性拘縮)に進むため、疑った時点で緊急に医療機関へ搬送し、筋膜切開などの処置につなぐことが最優先となる。搬送までの間は患部を動かさず安静を保ち、冷却で疼痛と組織の代謝需要を抑える。通常の急性外傷ではRICEの一部として当然に行う圧迫と挙上が、この病態では逆に有害となる点が本問の要点である。締めつけている包帯・サポーター・シーネがあれば直ちにゆるめ、患肢は心臓とほぼ同じ高さに保つ。

✓ 1. 正しい
安静
筋の収縮や関節運動は出血・浮腫と組織の代謝需要を増やし、区画内圧をさらに押し上げる。患肢を動かさないよう保持し、そのまま搬送する。移動が必要な場合も愛護的に扱い、自力歩行はさせない。
✓ 2. 正しい
冷却
疼痛の緩和と、出血・浮腫のさらなる増悪を抑える目的で行う。氷を直接長時間当てず、タオル等を介して短時間ずつとし、感覚障害がある部位では凍傷に気付きにくいため、皮膚色と末梢循環を確認しながら実施する。
✗ 3. 誤り
圧迫
通常の急性外傷ではRICEの柱だが、区画内圧が上がっている本例では圧迫が阻血を悪化させる。行うべきはその逆で、すでに巻かれている包帯や装具をゆるめ、締めつけを取り除くこと。副子で保持する場合も圧をかけない当て方にする。
✗ 4. 誤り
挙上
患肢を心臓より高く上げると動脈の灌流圧が下がり、ただでさえ不足している区画内の血流がさらに減る。患肢は心臓とほぼ同じ高さに保つのが正しい対応で、下げすぎてうっ血させることも避ける。
ポイント
  • 急性コンパートメント症候群を疑う所見:安静時の強い疼痛・他動伸張時痛・高度腫脹と皮膚の緊張/光沢・感覚障害・運動障害
  • 「外見や経過に不釣り合いなほど痛みが強い」「時間とともに増悪する」は最も早く出る危険信号。
  • 通常の急性外傷はRICE。しかし本症を疑うときは圧迫と挙上を行わない(患肢は心臓の高さに保つ)。
  • 締めつけている包帯・サポーター・シーネは直ちにゆるめ、圧迫源を取り除く。
  • 数時間単位で不可逆的な壊死に進む。疑った時点で速やかに医療機関へ搬送する。
比較表
処置通常の急性外傷(RICE)急性コンパートメント症候群を疑うとき
安静(Rest)行う行う(動かさず保持し搬送)
冷却(Icing)行う行う(凍傷と循環に注意しつつ)
圧迫(Compression)行う行わない(締めつけを取り除く)
挙上(Elevation)行う行わない(心臓とほぼ同じ高さに保つ)
次の一手経過観察・段階的な運動再開緊急搬送、筋膜切開の判断を医師に委ねる
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