学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ24P106

理由で解く 柔道整復師

QJ24P106 柔道整復理論

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午後 問106
問題
35歳の男性。倉庫で製品の管理をしている。昨日、約30kgの製品を持ち上げたとき、右上腕部にブチッという音と共に疼痛が出現したと訴え来所した。初検時に左右の肘関節を自動屈曲したときの外観写真(別冊 No. 2)を別に示す。最も考えられる上腕二頭筋の損傷部位はどれか。
図
選択肢
1 長頭腱
2 短頭腱
3 筋腹
4 遠位腱
解答
正解1(長頭腱)
解説

重量物を持ち上げた瞬間の断裂音(ブチッという音)を訴える上腕の急性外傷では、上腕二頭筋長頭腱の断裂が最も考えられる。長頭腱が切れると筋腹が遠位(肘側)へ下垂し、肘を自動屈曲させたとき力こぶが健側より末梢に寄って見える(ポパイ徴候)。正解は1。

上腕二頭筋長頭腱は関節上結節から起こり、関節内を通って結節間溝を滑走するという特異な走行のため、摩耗・変性を受けやすい。上腕二頭筋腱断裂の大多数はこの長頭腱に起こり、重量物の挙上など急な収縮が引き金となる。近位で腱が切れると筋腹を上方に吊る支えを失うので、筋腹は遠位(肘側)へ下垂し、肘を屈曲させたときの膨隆が健側より末梢に寄る。これがポパイ徴候で、左右の肘を並べて自動屈曲させ比較すると判定しやすい。短頭が烏口突起で保たれているため肘屈曲力・前腕回外力の低下は比較的軽く、疼痛が落ち着けば日常動作が可能なことも多い。一方、遠位腱(橈骨粗面付着部)の断裂では筋腹が近位へ引き上がる点が決定的に異なる。

✓ 1. 正しい
長頭腱
結節間溝部での変性を背景に、重量物挙上のような急な収縮で断裂する典型例。近位の支えを失った筋腹が遠位へ落ちるため、肘を曲げると力こぶが健側より下方(肘寄り)に膨隆するのが典型所見である。
✗ 2. 誤り
短頭腱
短頭は烏口突起に起始し、長頭のように骨溝内を滑走しないため摩耗が少なく、単独断裂はまれ。仮に損傷しても長頭が保たれていれば筋腹が遠位へ下垂する外観にはなりにくい。
✗ 3. 誤り
筋 腹
筋腹の断裂(筋断裂)は直達外力や強い伸張で起こり、断裂部に限局した陥凹と圧痛、皮下出血が現れる。重量物を持ち上げた瞬間の断裂音で発症し、膨隆全体の位置が健側と食い違うという所見は、筋腹の断裂ではなく腱の断裂に対応する。
✗ 4. 誤り
遠位腱
遠位腱(橈骨粗面付着部)が切れると筋腹は近位=肩側へ引き上がり、肘窩で触れていた腱が触知できなくなる。回外筋力の低下が目立ち、手術が選択されることが多い。長頭腱断裂とは膨隆の移動方向が逆になる。
ポイント
  • 上腕二頭筋腱断裂の大多数は長頭腱(結節間溝部)。変性を基盤に中高年で起こりやすい。
  • 移動方向で部位が分かる。長頭腱断裂=筋腹が遠位へ落ちる/遠位腱断裂=筋腹が近位へ上がる
  • ポパイ徴候は肘を自動屈曲させ、両側を並べて比較すると判定しやすい。
  • 長頭腱断裂は短頭が働くため筋力低下が軽い。反対に遠位腱断裂は回外力低下が著明で手術適応になりやすい。
  • 初期は安静・冷却と三角巾等での保持を行い、断裂部位と治療方針の判断は医師に委ねる。
比較表
長頭腱断裂遠位腱断裂
頻度多い(大多数を占める)少ない
筋腹の移動遠位(肘側)へ下垂近位(肩側)へ引き上がる
典型的な外観力こぶが末梢に寄る(ポパイ徴候)力こぶが中枢に寄り、肘窩の腱を触知できない
機能障害屈曲・回外力の低下は比較的軽い回外力低下が著明
治療の傾向保存療法が選ばれることが多い手術が選択されることが多い
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