学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ24P104

理由で解く 柔道整復師

QJ24P104 柔道整復理論

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午後 問104
問題
25歳の男性。スキージャンプ競技中、着地でバランスを崩し受傷した。右股関節は屈曲、外転、外旋位に弾発性固定され、大転子部の突出は触知不能となっている。神経損傷を合併したときの感覚障害が現れるのはどれか。
図
選択肢
1 a
2 b
3 c
4 d
解答
正解2
解説

屈曲・外転・外旋位の弾発性固定と大転子の突出が触れないことから股関節前方(閉鎖孔)脱臼と判断する。合併しやすいのは閉鎖神経損傷で、感覚障害は大腿内側面に現れる。図で大腿内側面を示すのはbなので、答えは2。

図は右下肢の皮膚感覚領域で、左が前面、右が後面(殿部の輪郭・殿溝・膝窩・アキレス腱が描かれている)。前面図は向かって右が内側にあたり、aは大転子の高さから膝の直上まで大腿の前外側面を広く覆う領域(外側大腿皮神経)、bは大腿の内側縁に沿う帯状の領域(閉鎖神経の皮枝)、cはbとは離れて膝の内側から下腿内側面を下り内果を越えて足の内側縁へ達する領域(伏在神経)を示す。後面図のdは殿溝をまたぐ下殿部から始まり、大腿後面の中央を膝窩の手前まで下る領域(後大腿皮神経)である。本症例は、大腿骨頭が前下方の閉鎖孔付近へ移動した恥骨下(閉鎖孔)脱臼で、骨頭が前方に移るため大転子の突出が触知できなくなり、下肢は屈曲・外転・外旋位に弾発性固定される。骨頭が閉鎖孔の上部(閉鎖管)を通る閉鎖神経を圧迫すると、股関節内転筋群の筋力低下とともに大腿内側面の感覚障害が現れる。これに対し後方脱臼(腸骨・坐骨脱臼)は屈曲・内転・内旋位で下肢短縮・大転子高位をとり、障害されるのは坐骨神経で、下腿外側から足部の感覚障害と下垂足を生じる。肢位から脱臼の方向を読み、それに対応する神経の支配領域を図から選ぶ問題である。

✓ 2. 正しい
b
大腿の内側面に沿う帯状の領域で、閉鎖神経の皮枝が支配する範囲にあたる。閉鎖孔脱臼では骨頭が閉鎖孔部で閉鎖神経を圧迫するため、この大腿内側面に感覚障害が現れる。内転筋群の筋力低下を伴うかどうかも合わせて確認する。
✗ 1. 誤り
a
大転子の高さから膝の直上まで大腿の前外側面を覆う領域で、外側大腿皮神経の支配範囲。鼠径靱帯の下でこの神経が絞扼される感覚異常性大腿痛などで問題になる部位であり、閉鎖神経の領域ではない。
✗ 3. 誤り
c
膝の内側から下腿内側面を下り、内果を越えて足の内側縁に至る領域で、大腿神経の枝である伏在神経の支配範囲。同じ「内側」でも閉鎖神経より遠位の膝から下の分布であり、本症例の感覚障害の広がりとは一致しない。
✗ 4. 誤り
d
殿溝をまたぐ下殿部から大腿後面の中央を膝窩の手前まで下る領域で、後大腿皮神経の支配範囲(下殿皮枝が下殿部の皮膚を担う)。この神経は坐骨神経とともに股関節の後方を走るため警戒するのは骨頭が後方へ移動する後方脱臼のほうで、そこでは坐骨神経障害(下腿外側〜足部の感覚障害と下垂足)が前面に出る。前方に脱臼した本症例でこの後面の領域が障害されるとは考えにくい。
ポイント
  • 恥骨下(閉鎖孔)脱臼=屈曲・外転・外旋位、下肢延長、大転子の突出が触れにくい。閉鎖神経損傷に注意。
  • 後方脱臼(腸骨・坐骨脱臼)=屈曲・内転・内旋位、下肢短縮、大転子高位。坐骨神経損傷に注意。
  • 閉鎖神経は股関節内転筋群を支配し、皮枝は大腿内側面の感覚を担う(図のb)。
  • まぎらわしい隣接領域—大腿前外側面=外側大腿皮神経(a)、下腿内側面〜足内側縁=伏在神経(c)、下殿部〜大腿後面=後大腿皮神経(d)。
  • 坐骨神経は下腿外側〜足部の感覚と足関節・足趾の運動を担い、麻痺すると下垂足となる。
  • 股関節脱臼は弾発性固定が特徴。整復の遅れは大腿骨頭壊死の危険を高めるため、神経所見を記録して速やかに医療機関へ搬送する。
比較表
図の記号示している部位支配神経障害される代表的な場面
a大腿前外側面(大転子の高さ〜膝直上)外側大腿皮神経鼠径靱帯下での絞扼(感覚異常性大腿痛)
b大腿内側面閉鎖神経股関節前方(閉鎖孔)脱臼
c下腿内側面〜内果〜足の内側縁伏在神経(大腿神経の枝)膝内側部の外傷、伏在神経の絞扼
d下殿部(殿溝をまたぐ)〜大腿後面(膝窩の手前まで)後大腿皮神経殿部の圧迫・刺創、股関節後方脱臼(坐骨神経とともに)
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。