学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §12 総論 後療法 / QJ24P072

理由で解く 柔道整復師

QJ24P072 柔道整復理論

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午後 問72
問題
氷嚢による冷却を長時間行う際、神経麻痺に注意が必要な部位はどれか。
図
選択肢
1 a
2 b
3 c
4 d
解答
正解3
解説

図は上肢と下肢に4か所の円を示しており、a=肩関節部(三角筋部)、b=手関節部、c=膝のすぐ下外側に張り出す腓骨頭部、d=足関節前面〜足背である。寒冷による神経麻痺は、神経が骨のすぐ上を皮下浅層で走り筋や脂肪の被覆が乏しい部位で起こるため、腓骨頭部のcが該当する。

氷嚢による冷却(アイシング)は急性外傷のRICE処置の柱だが、寒冷が長時間持続すると組織温が下がりすぎ、神経の伝導が可逆的に障害され、さらに進むと凍傷や神経の変性を招く。とくに危険なのは、体表から触知できるほど浅く神経が骨の上を走る部位で、代表は腓骨頭部(総腓骨神経)と肘関節内側(尺骨神経溝を通る尺骨神経)である。総腓骨神経は腓骨頭の後ろを回って腓骨頸の骨面に沿い前外側へ抜けるため、間に筋腹や脂肪がほとんど介在せず、圧迫にも寒冷にも弱い。麻痺すると足関節背屈・足趾伸展が障害されて下垂足となり、下腿外側から足背にかけてしびれが出る。予防のためには、氷嚢を皮膚に直接当てず薄いタオルを介する、1回の冷却を15〜20分程度にとどめて間隔をあける、冷却中に感覚が「冷たい→灼けるような感じ→痛い→感覚が鈍い」と変化していないか患者に確認する、しびれや脱力が出たら直ちに冷却を中止して復温し、症状が残る場合は医療機関への受診を勧める、という手順をとる。

✓ 3. 正しい
c
図では:cは膝関節のすぐ下、外側に張り出す腓骨頭の部位を囲んでいる。総腓骨神経はこの腓骨頭の後方を回って腓骨頸の骨面に沿って走り、皮下浅層で骨に接している。長時間の冷却で神経温が下がりやすく、下垂足と下腿外側〜足背のしびれをきたすため、本問が問う「神経麻痺に注意が必要な部位」にあたる。
✗ 1. 誤り
a
図では:aは肩関節部を囲んでいる。ここは厚い三角筋に覆われており、上腕骨外科頸を回る腋窩神経も筋の深層にあって体表から遠い。筋腹や脂肪が断熱層となるため、同じ時間冷却しても神経温は下がりにくい。ただし神経麻痺の危険が低いだけで、凍傷予防のためタオルを介する原則はどの部位でも変わらない。
✗ 2. 誤り
b
図では:bは手関節部を囲んでいる。この高さでは正中神経は屈筋支帯の下(手根管内)、尺骨神経はギヨン管内を走り、いずれも支帯や腱に包まれていて骨に直接接してはいない。腓骨頭部や肘部のように「骨の直上を皮下浅層で走る」条件を満たさないため、冷却による神経麻痺の危険は相対的に低い。冷却時間は15〜20分を目安に管理する。
✗ 4. 誤り
d
図では:dは足関節前面から足背にかけての部位を囲んでいる。ここを通る深腓骨神経は伸筋支帯の下にあり、骨の上を皮下浅層で走る太い神経麻痺の好発部ではない。ただし足趾などの末梢は冷却で血流が乏しくなりやすいので、冷却中は皮膚色(チアノーゼ)と感覚を確認し、異常があれば中止して復温する。
ポイント
  • 寒冷による神経麻痺は「神経が骨の直上を皮下浅層で走り、筋・脂肪の被覆が乏しい部位」で起こる。
  • 代表部位は2つ:腓骨頭部(総腓骨神経)と肘関節内側の尺骨神経溝(尺骨神経)。
  • 総腓骨神経麻痺=下垂足+下腿外側〜足背のしびれ。尺骨神経麻痺=環指尺側・小指のしびれ+手内在筋の脱力。
  • 予防:皮膚に直接当てずタオルを介する、1回15〜20分を目安に、間隔をあけて反復する。
  • 冷感→灼熱感→疼痛→無感覚の順に変化するため、無感覚が出たら冷却を中止する。しびれ・脱力が残る場合は復温し、医療機関への受診を勧める。
比較表
図の記号部位神経の走り方冷却による神経麻痺の危険
c膝下外側(腓骨頭部)総腓骨神経が腓骨頭後方〜腓骨頸の骨面を皮下浅層で走る高い(正答)/下垂足、下腿外側〜足背のしびれ
a肩関節部(三角筋部)腋窩神経は厚い三角筋の深層低い(凍傷予防の配慮は必要)
b手関節部正中神経は屈筋支帯の下、尺骨神経はギヨン管内。骨に直接接しない低い
d足関節前面〜足背深腓骨神経は伸筋支帯の下低い(末梢循環の低下には注意)
(図外)肘関節内側尺骨神経が尺骨神経溝の骨面を皮下浅層で走る高い/もう一つの代表部位
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。