学習トップ理由で解く 柔道整復師一般臨床医学 ▸ §21 臨床実地問題 / QJ24P042

理由で解く 柔道整復師

QJ24P042 一般臨床医学

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午後 問42
問題
75歳の男性。2か月前から前立腺癌で治療中。その頃から排尿時の不快感を呈し、頻尿となった。今回、排尿時痛を訴えて受診し、複雑性膀胱炎と診断された。この疾患で正しいのはどれか。
選択肢
1 尿路の腫瘍に伴うことはまれである。
2 起因菌はほとんどが大腸菌である。
3 水分の大量摂取で数日で回復する。
4 再発を繰り返すことが多い。
解答
正解4(再発を繰り返すことが多い。)
解説

膀胱炎は「単純性」と「複雑性」に分けられ、複雑性は尿路の基礎疾患を背景に起こる。背景が残る限り抗菌薬で一時的に鎮まっても再燃するため、再発を繰り返すのが最大の特徴である。

単純性膀胱炎は明らかな基礎疾患のない若年〜中年女性に多く、起因菌の7〜8割は大腸菌で、適切な抗菌薬に十分な水分摂取を併せることで数日のうちに軽快する。一方の複雑性膀胱炎は、前立腺肥大症・前立腺癌・尿路結石・尿路腫瘍・神経因性膀胱・尿道カテーテル留置・糖尿病など、尿流の停滞や局所防御能の低下をきたす背景をもつ。本例は75歳男性で前立腺癌の治療中という、複雑性を疑う典型的な状況である。前立腺の病変は膀胱出口の通過障害や残尿を招くことがあり、残尿は細菌の温床になる。また前立腺癌では、放射線治療や手術後の尿道狭窄、尿道カテーテルの留置、治療や全身状態に伴う局所防御能の低下なども背景となりうるため、どの経路が働いているかを個々の症例で確かめる必要がある。起因菌も大腸菌に限らず緑膿菌・腸球菌・クレブシエラ・プロテウスなど多彩で、複数菌感染や薬剤耐性菌も少なくないため、尿培養と薬剤感受性検査に基づく治療と、基礎疾患そのものへの対応が欠かせない。

✓ 4. 正しい
再発を繰り返すことが多い。
複雑性膀胱炎では、感染を起こしやすくしている背景が是正されない限り、抗菌薬で症状が消えても再び細菌が増殖する。前立腺癌の治療中であれば、腫瘍による通過障害や残尿のほか、放射線治療・手術後の尿道狭窄やカテーテル留置なども背景となりうる。したがって「治療して終わり」ではなく、原疾患の管理と残尿・排尿状態の定期的な評価を続けることが再発予防の要になる。
✗ 1. 誤り
尿路の腫瘍に伴うことはまれである。
逆である。膀胱癌や前立腺癌などの尿路の腫瘍は、尿流の停滞と粘膜のバリア破綻を通じて感染を招くため、複雑性膀胱炎の代表的な基礎疾患にあたる。むしろ膀胱炎を繰り返す例や血尿を伴う例では、腫瘍が背後に潜んでいないかを尿細胞診・超音波・膀胱鏡などで確認する必要がある。
✗ 2. 誤り
起因菌はほとんどが大腸菌である。
大腸菌が大半を占めるのは単純性膀胱炎の特徴である。複雑性では緑膿菌・腸球菌・クレブシエラ・プロテウス・セラチアなど菌種が多彩で、混合感染や耐性菌の関与もあるため、経験的な投薬だけに頼らず尿培養と薬剤感受性検査で起因菌を確かめて抗菌薬を選ぶ。
✗ 3. 誤り
水分の大量摂取で数日で回復する。
十分な飲水は尿量を増やして細菌を洗い流す助けにはなるが、飲水だけで治す方法ではなく、単純性であっても治療の柱は抗菌薬である。まして複雑性では、抗菌薬治療に加え、残尿の解消やカテーテル管理など基礎疾患への対応を組み合わせて初めて改善が得られる。
ポイント
  • 単純性膀胱炎=基礎疾患なし・若年〜中年女性・大腸菌が7〜8割・抗菌薬で短期間に治癒。
  • 複雑性膀胱炎=基礎疾患あり・高齢男性やカテーテル留置例に多い・起因菌が多彩・再発を繰り返す。
  • 膀胱炎の治療の柱は単純性・複雑性とも抗菌薬であり、飲水はあくまで補助。複雑性ではこれに基礎疾患の是正が加わる。
  • 高齢男性の膀胱炎を見たら、前立腺肥大症/前立腺癌・尿路結石・尿路腫瘍・神経因性膀胱など「尿が滞る原因」をまず考える。
  • 膀胱炎の三徴は排尿時痛・頻尿・尿混濁で、原則として発熱しない。38℃以上の発熱・悪寒戦慄・肋骨脊柱角の叩打痛が加われば腎盂腎炎への上行感染を疑い、速やかに医療機関へつなぐ。
  • 施術現場では、腰背部痛や下腹部の違和感の背後に泌尿器疾患が隠れていることがある。排尿症状を問診に組み込み、該当すれば泌尿器科受診を勧める。
比較表
比較項目単純性膀胱炎複雑性膀胱炎
基礎疾患なしあり(前立腺疾患・尿路結石・尿路腫瘍・神経因性膀胱・カテーテル留置・糖尿病など)
好発若年〜中年女性高齢者、とくに男性、カテーテル留置例
起因菌大腸菌が大半緑膿菌・腸球菌・クレブシエラ・プロテウスなど多彩、混合感染・耐性菌も
経過治療で数日〜1週で軽快遷延しやすく再発を繰り返す
治療の柱抗菌薬(飲水は補助)培養に基づく抗菌薬+基礎疾患の是正(残尿の解消・カテーテル管理など)。飲水は補助
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