学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ34P114

理由で解く 柔道整復師

QJ34P114 柔道整復理論

出典:第34回柔道整復師国家試験(2026)午後 問114
問題
54歳の男性。右前腕掌側近位に疼痛を自覚していたが、母指と示指が曲がりにくくなったとの主訴で来所した。母指と示指でマルを作る動作を指示したところ、きれいなマルを作ることができない。考えられないのはどれか。
選択肢
1 母指球筋の萎縮
2 方形回内筋の麻痺
3 示指末節部の感覚異常
4 背側骨間筋の萎縮
解答
正解4(背側骨間筋の萎縮)
解説

症状は前腕近位における正中神経(およびその枝である前骨間神経)の障害で説明できる。背側骨間筋は尺骨神経支配なので萎縮は起こらず、4が「考えられない」=答え。

母指と示指できれいなマルが作れないのは、長母指屈筋と示指の深指屈筋が働かず、それぞれの指節間関節を曲げられないために起こる所見で、涙滴徴候と呼ばれる。これらを支配するのは正中神経から分かれる前骨間神経で、方形回内筋も同じ枝の支配を受ける。本例は前腕掌側近位に疼痛があるため、円回内筋部などで正中神経本幹が障害される病態まで含めて考えることになり、その場合には正中神経支配の母指球筋の萎縮や、正中神経の感覚領域である示指末節掌側の感覚異常も起こりうる。一方、背側骨間筋をはじめとする手内在筋の大半は尺骨神経支配であり、正中神経系がどこで障害されても萎縮しない。ここが「考えられない」ものを選ぶ決め手になる。母指球(正中神経)と骨間筋・小指球(尺骨神経)を左右で見比べる習慣をつけると、障害神経の当たりが早くつく。

✓ 4. 考えられない(これが答え)
背側骨間筋の萎縮
背側骨間筋は尺骨神経(深枝)の支配である。前腕近位での正中神経・前骨間神経の障害では支配下に入らないため萎縮は起こらない。背側骨間筋の萎縮を見たときは、まず尺骨神経障害を考える。
✗ 1. 考えられる(答えではない)
母指球筋の萎縮
短母指外転筋・短母指屈筋浅頭・母指対立筋は正中神経(反回枝)の支配である。前腕近位で正中神経本幹が障害されれば、母指球の膨らみが乏しくなる萎縮が生じうる。
✗ 2. 考えられる(答えではない)
方形回内筋の麻痺
方形回内筋は前骨間神経の支配で、長母指屈筋・示指の深指屈筋と同じ枝に含まれる。本例の病態で麻痺しうる。肘を屈曲して円回内筋の関与を減らした肢位での前腕回内力を診ると評価しやすい。
✗ 3. 考えられる(答えではない)
示指末節部の感覚異常
示指末節の掌側は正中神経の感覚支配領域である。前腕近位で本幹が障害されれば感覚異常が出る。なお前骨間神経そのものは運動枝のみで皮膚感覚を担わないため、感覚障害があれば本幹の障害を示唆する。
ポイント
  • OKサインが作れない(涙滴徴候)=長母指屈筋+示指の深指屈筋の麻痺=前骨間神経の障害
  • 前骨間神経の支配は長母指屈筋・深指屈筋(示指・中指)・方形回内筋の3つ。純運動枝で皮膚感覚はない
  • 前腕近位の疼痛に加えて感覚障害や母指球の萎縮があれば、正中神経本幹の高位障害(円回内筋症候群など)を考える
  • 背側骨間筋・掌側骨間筋・小指外転筋・母指内転筋は尺骨神経支配。正中神経障害では萎縮しない
  • 母指球(正中神経)と骨間筋・小指球(尺骨神経)を左右で比べるだけで、どの神経の障害かの当たりがつく
比較表
神経主な支配筋(前腕〜手)感覚支配
正中神経(本幹)円回内筋、橈側手根屈筋、浅指屈筋、母指球筋(反回枝)手掌橈側、母指〜環指橈側半の掌側(示指末節を含む)
前骨間神経(正中神経の枝)長母指屈筋、深指屈筋(示指・中指)、方形回内筋なし(純運動枝)
尺骨神経背側骨間筋・掌側骨間筋、小指外転筋、母指内転筋、深指屈筋(環指・小指)小指と環指尺側半
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