学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ34P113

理由で解く 柔道整復師

QJ34P113 柔道整復理論

出典:第34回柔道整復師国家試験(2026)午後 問113
問題
20歳の男性。2週前から右肩部後面の痛みと脱力感を自覚し、症状が軽快しないため来所した。棘下筋は萎縮し外旋筋力が低下しているが、棘上筋の筋力は保たれている。写真(別冊 No. 3)の★印で示した部分にしこりを触知する。考えられるのはどれか。
図
選択肢
1 肩甲上神経絞扼障害
2 腱板断裂
3 SLAP 損傷
4 ベネット(Bennett)損傷
解答
正解1(肩甲上神経絞扼障害)
解説

棘上筋の筋力が保たれたまま棘下筋だけが萎縮して外旋筋力が低下し、さらにしこりを触知するという所見から、肩甲上神経の絞扼障害が考えられる。正解は1。

肩甲上神経は肩甲切痕を通って棘上筋と棘下筋の両方を支配し、その後さらに肩甲棘の外側を回り込む棘窩切痕を通って棘下筋へ向かう。したがって絞扼される高さによって症状の分布が変わり、肩甲切痕での絞扼なら棘上筋と棘下筋の両方が、棘窩切痕での絞扼なら棘下筋だけが障害される。本例は棘上筋の筋力が保たれ棘下筋のみが萎縮しているので、より末梢での絞扼が示唆される。設問文にあるとおり写真の★印で示された部位にしこりを触知しており、絞扼の原因としては関節唇由来のガングリオンなど神経を圧迫する占拠性病変が代表的である。施術の場では棘下窩の陥凹と外旋筋力を左右で比較して評価し、原因検索と治療方針の決定のため整形外科への紹介を行う。

✓ 1. 正しい
肩甲上神経絞扼障害
肩甲上神経の走行を踏まえれば、棘上筋が温存され棘下筋のみが萎縮するという分布は絞扼性障害でよく説明できる。しこりを触知するという所見も、ガングリオンなど神経を圧迫する腫瘤の存在を示唆し、病態として整合する。
✗ 2. 誤り
腱板断裂
腱板断裂では該当する腱の筋力低下や夜間痛が主症状となるが、明らかな外傷歴のない20歳で棘下筋だけが2週で萎縮するという経過は考えにくく、しこりを触知する所見も説明できない。
✗ 3. 誤り
SLAP 損傷
上方関節唇の損傷で、投球時痛やクリック、不安定感が主症状となる。損傷部から生じた嚢腫が神経を圧迫すれば筋萎縮が出ることはあるが、その場合の病態はまさに肩甲上神経の絞扼であり、萎縮と腫瘤を直接説明する診断名としては1が適切である。
✗ 4. 誤り
ベネット(Bennett)損傷
投球動作の繰り返しにより肩甲骨関節窩の後下縁に骨棘が形成される病態で、投球時の後方痛が主体となる。棘下筋に限った萎縮と外旋筋力低下を第一に説明する病態ではない。
ポイント
  • 肩甲上神経は肩甲切痕→棘上筋+棘下筋、棘窩切痕→棘下筋のみ。障害される筋の組合せから絞扼部位が推定できる
  • 棘上筋温存+棘下筋のみ萎縮なら、より末梢の棘窩切痕レベルの絞扼を疑う
  • 絞扼の原因はガングリオンなどの腫瘤、投球動作の反復、肩甲切痕部の靱帯肥厚など
  • 評価は棘下窩の陥凹を左右比較し、肘90度屈曲位で外旋筋力を徒手検査する
  • 腫瘤を疑う所見や筋萎縮の進行があれば、超音波・MRIによる評価のため整形外科へ紹介する
比較表
絞扼部位障害される筋現れる所見
肩甲切痕棘上筋+棘下筋外転初期の筋力低下+外旋筋力低下、棘上窩・棘下窩の萎縮
棘窩切痕棘下筋のみ外旋筋力低下、棘下窩の陥凹。棘上筋の筋力は保たれる
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