学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ34P108

理由で解く 柔道整復師

QJ34P108 柔道整復理論

出典:第34回柔道整復師国家試験(2026)午後 問108
問題
40歳の女性。初発の両側性顎関節前方脱臼で来所した。整復を行ったが、下顎の片側偏位が残存した。整復前と比較し疼痛は減少し会話が可能となり、口の開閉もわずかに可能となった。考えられるのはどれか。
選択肢
1 片側顎関節円板前方転位の残存
2 顔面神経麻痺の合併
3 整復時下顎頭の骨折
4 顎関節内障の続発
解答
正解1(片側顎関節円板前方転位の残存)
解説

整復後に疼痛が軽減し、会話や開閉口がある程度できるようになったのは、下顎頭そのものは関節窩に戻ったという証拠です。それでも片側偏位が残るのは、その側の関節円板だけが前方に取り残されているためと考えます。

顎関節前方脱臼は、大開口時に下顎頭が関節結節を越えて前方に留まったまま戻れなくなったもの。整復されれば下顎頭は下顎窩に復位するので、疼痛は急速に軽くなり、閉口・会話・咀嚼が可能になります。ところが脱臼の際に前方へ引き出された関節円板は、下顎頭が戻っても円板だけが前方に残ってしまうことがあります(円板の復位障害)。その側では下顎頭の前方滑走が円板に妨げられるため開口量が伸びず、開口時に下顎は障害側へ引き寄せられて偏位します。両側性脱臼でも円板の戻り方に左右差が出れば、片側だけ偏位が残ることになります。「良くはなったが完全ではない」という本例の経過は、この状態とよく一致します。なお、関節円板の転位や変形を主体とする関節包内障害を総称して顎関節内障と呼ぶため、円板前方転位そのものも顎関節内障に含まれる病態です。選択肢1と4は対立する概念ではなく包含関係にあり、両者を分けているのは「続発」という時間軸の言葉である、という点を押さえてください。

✓ 1. 正しい
片側顎関節円板前方転位の残存
下顎頭は復位したものの、片側の円板が前方転位したまま残ると、その側の滑走が制限されて開口時に下顎が患側へ偏位します。疼痛が減り、会話ができ、開閉口もわずかにできるという中間的な状態は、脱臼は解除されたが円板だけが戻っていないことを示します。対応としては、無理な開口を避けるよう指導したうえで、円板の状態を評価できる歯科口腔外科へ紹介します。
✗ 2. 誤り
顔面神経麻痺の合併
顔面神経が支配するのは表情筋で、下顎を動かす咀嚼筋は三叉神経(下顎神経)の支配です。したがって顔面神経が障害されても下顎の偏位は生じません。麻痺があれば閉眼不能、鼻唇溝の消失、口角下垂といった顔面の非対称が前面に出るはずで、本例の所見とは結びつきません。
✗ 3. 誤り
整復時下顎頭の骨折
整復操作で下顎頭が骨折すれば、疼痛はむしろ増強し、咬合異常が現れて開閉口はさらに困難になります。本例は疼痛が減り会話も可能になっており、経過が逆向きです。ただし整復後に疼痛が強まる、咬み合わせがずれるといった変化が出たときは骨折を疑い、直ちに画像診断ができる医療機関へ紹介します。
✗ 4. 誤り
顎関節内障の続発
顎関節内障は、関節円板の位置異常や変形を主体とする関節包内障害の総称であり、円板前方転位もその一形態です。したがって1と4は排他的な選択肢ではありません。両者を分けるのは時間軸で、「続発」とは脱臼の後遺として新たに慢性の内障が成立した段階を指します。本例は初発の脱臼を整復した直後であり、まだその段階には至っていません。今この瞬間の片側偏位を最も直接に説明するのは、円板が前方に取り残されている状態そのものです。
ポイント
  • 顎関節前方脱臼=下顎頭が関節結節の前方に留まった状態。復位すれば疼痛は速やかに軽減し、閉口・会話が可能になる。
  • 下顎頭が戻っても円板が前方に残ると、その側の前方滑走が妨げられ、開口時に下顎は患側へ偏位する。
  • 顎関節内障=関節円板の位置異常・変形による関節包内障害の総称。円板前方転位もその一形態で、両者は包含関係にある。「続発」は慢性の内障が新たに成立した段階を指す時間軸の言葉。
  • 咀嚼筋は三叉神経支配。顔面神経麻痺では下顎の偏位は起こらない。
  • 整復後に疼痛増強・咬合異常が出たら骨折を疑い、画像診断へつなぐ。
  • 初発脱臼後は再脱臼予防として大開口を避ける指導(あくびの際に手で顎を支えるなど)を行い、症状が残れば歯科口腔外科へ紹介する。
比較表
整復操作後の状態疼痛閉口・会話開口時の下顎対応
円板前方転位の残存(本例)軽減する可能患側へ偏位、開口量は伸びない大開口を避ける指導+歯科口腔外科へ紹介
下顎頭の骨折増強する困難偏位+咬合異常直ちに画像診断へ
整復されていない(脱臼残存)強いまま不能(開口位で固定)開口したまま閉じられない再整復、困難なら医療機関へ
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。