学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ34P103

理由で解く 柔道整復師

QJ34P103 柔道整復理論

出典:第34回柔道整復師国家試験(2026)午後 問103
問題
72歳の男性。震災後の避難所で車内生活をしている。外傷歴はないが、昨日から下肢の痛みと腫れを訴えている。家族に聴取したところ、「今朝は顔色も悪く、胸に痛みがあるようだ」という。男性に声をかけたところ肩で息をし始め、頻脈と意識がもうろうとなった。考えられるのはどれか。
選択肢
1 脂肪塞栓症候群
2 クラッシュ症候群
3 エコノミークラス症候群
4 下腿コンパートメント症候群
解答
正解3(エコノミークラス症候群)
解説

車内での長時間の同一姿勢、下肢の痛みと腫れ、その後に現れた胸痛・呼吸困難・頻脈・意識障害という流れは、深部静脈血栓が肺に飛んだ経過そのものです。エコノミークラス症候群を考えます。

狭い車内で膝を曲げたまま長時間過ごすと、下腿の筋ポンプが働かず静脈還流が滞ります。加えて避難生活では水分摂取が減って血液が濃縮しやすく、深部静脈血栓症が生じます。まず出るのが片側下肢の疼痛と腫脹で、この症例の「昨日から下肢の痛みと腫れ」がこれにあたります。その血栓が剥がれて肺動脈を詰まらせると、胸痛・呼吸困難・頻脈が突然現れ、広範囲であればショックや意識障害に至ります。声をかけて動かした直後に症状が急変している点も、血栓が遊離した状況と合致します。この場面で行うべきは、直ちに救急要請し、安静を保って搬送につなぐことです。下肢を揉んだり動かしたりする処置は選ばず、意識と呼吸の状態を観察しながら医療につなぎます。

✓ 3. 正しい
エコノミークラス症候群
長時間の同一姿勢と脱水を背景に深部静脈血栓症が生じ、血栓が肺動脈を閉塞した肺血栓塞栓症の経過です。下肢の腫脹・疼痛が先行し、体動を契機に胸痛・呼吸困難・頻脈・意識障害が出現した流れが一致します。直ちに救急要請し、安静のまま搬送します。
✗ 1. 誤り
脂肪塞栓症候群
長管骨や骨盤の骨折後、数時間から数日で呼吸障害・意識障害・点状出血をきたす病態です。本例は外傷歴がないと明記されており、成立しません。
✗ 2. 誤り
クラッシュ症候群
四肢が長時間圧迫され、解放後に筋の壊死産物が全身に回って高カリウム血症や急性腎不全をきたす病態です。倒壊物などによる圧挫の既往が前提となりますが、本例にはその記載がありません。
✗ 4. 誤り
下腿コンパートメント症候群
区画内圧の上昇による下腿の激痛、緊満、他動伸張時痛、感覚障害が主体で、症状は局所にとどまります。胸痛や呼吸困難、意識障害といった全身の急変を説明できません。
ポイント
  • 災害時の車中泊・避難生活は深部静脈血栓症の代表的な発生状況。長時間の同一姿勢と脱水が二大要因。
  • 経過は「片側下肢の腫脹・疼痛」→体動を契機に「胸痛・呼吸困難・頻脈・ショック」。
  • 脂肪塞栓症候群は骨折後、クラッシュ症候群は圧挫後という前提条件で除外できる。
  • コンパートメント症候群は局所症状が主体で、全身の急変は説明できない。
  • 急変時は直ちに救急要請し安静を保って搬送する。予防として十分な水分摂取、定期的な足関節運動や歩行、弾性ストッキングの使用を助言する。
比較表
病態前提となる状況主な症状
エコノミークラス症候群長時間の同一姿勢・脱水下肢腫脹・疼痛→胸痛、呼吸困難、頻脈、ショック
脂肪塞栓症候群長管骨・骨盤骨折後呼吸障害、意識障害、点状出血
クラッシュ症候群四肢の長時間圧挫と解放高カリウム血症、急性腎不全、ショック
下腿コンパートメント症候群骨折・出血・過度の圧迫下腿の激痛、緊満、他動伸張時痛、感覚障害
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。