学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §19 各論(脱臼) 上肢 / QJ34P089

理由で解く 柔道整復師

QJ34P089 柔道整復理論

出典:第34回柔道整復師国家試験(2026)午後 問89
問題
第1中手指節関節脱臼で誤っているのはどれか。
選択肢
1 背側脱臼が多い。
2 水平脱臼は観血療法が必要である。
3 母指過伸展で受傷する。
4 側副靱帯の完全断裂が多い。
解答
正解4(側副靱帯の完全断裂が多い。)
解説

母指MP関節の背側脱臼で主として破綻するのは掌側板であり、側副靱帯の完全断裂が多いわけではありません。よって4が誤りで、これが正解です。

第1中手指節(MP)関節は掌側板と両側の側副靱帯で支えられています。母指が強く反り返ると、まず掌側板が中手骨頭(頸部)側の付着部で裂けます。掌側板は基節骨底には強固に付いたままなので、基節骨といっしょに背側へ移動し、基節骨が中手骨頭の背側へ乗り上げて背側脱臼となります。背側へ回り込んだ掌側板が中手骨頭と基節骨のあいだに挟まると徒手整復が効かなくなる、というのが後述する水平脱臼=観血療法の理由です。このとき側副靱帯は伸張されたり部分損傷を受けたりはしますが、両側とも完全に断裂することは多くありません。側副靱帯(とくに尺側側副靱帯)の完全断裂は、母指が外転方向へ強制されて起こるスキーヤー母指・ゲームキーパー母指という別の外傷であり、受傷機転そのものが異なります。「過伸展なら掌側板、外転強制なら側副靱帯」と機転で紐づけて覚えると取り違えません。

✓ 4. これが誤り(正解)
側副靱帯の完全断裂が多い。
背側脱臼で断裂の主役になるのは掌側板です。側副靱帯は伸張や部分損傷にとどまることが多く、完全断裂が多いとはいえません。側副靱帯完全断裂を疑うのは母指の外転強制で受傷し、側方動揺性が明らかな場合で、この場合は靱帯修復が必要になることがあるため医師へ紹介します。
✗ 1. 記述は正しい(答えではない)
背側脱臼が多い。
母指は伸展方向に反らされる場面が圧倒的に多く、基節骨が背側へ転位する背側脱臼が大半を占めます。掌側脱臼はまれです。
✗ 2. 記述は正しい(答えではない)
水平脱臼は観血療法が必要である。
基節骨が中手骨頭とほぼ平行に横たわる水平脱臼では、中手骨頭側で断裂して基節骨とともに背側へ回り込んだ掌側板や、その中に含まれる種子骨が関節間隙に嵌入し、整復の障害になります。徒手整復では戻らない複雑性脱臼にあたるため、観血的整復が必要です。逆に基節骨が立ち上がる垂直脱臼は徒手整復が可能です。
✗ 3. 記述は正しい(答えではない)
母指過伸展で受傷する。
ボールが母指先端に当たる、手を突いて母指が反り返るなど、MP関節の過伸展強制が典型的な受傷機転です。この力で掌側板が中手骨頭側の付着部から破綻します。
ポイント
  • 母指MP関節脱臼は背側脱臼が大半。機転はMP関節の過伸展強制。
  • 主として破綻するのは掌側板。中手骨頭(頸部)側で断裂し、基節骨底に付いたまま基節骨とともに背側へ移動する。側副靱帯の完全断裂が主体ではない。
  • 掌側板が切れる側は関節で逆になる。MP関節(母指背側脱臼)は中手骨側で断裂、PIP関節(背側脱臼)は中節骨底側で断裂。午後90の解説と対で押さえる。
  • 垂直脱臼は徒手整復可能、水平脱臼は背側へ回り込んだ掌側板・種子骨の介在で整復困難=観血療法。
  • 整復時に強い牽引を先行させると掌側板を関節内に引き込んで整復困難になるため、まず過伸展を強めて基節骨基部を中手骨頭に沿わせながら滑らせる。
  • 側副靱帯完全断裂(スキーヤー母指)は外転強制で起こる別病態。側方動揺性を確認し、陽性なら医師へ紹介する。
比較表
比較項目垂直脱臼水平脱臼
基節骨の位置中手骨頭に対しほぼ直立中手骨頭に対しほぼ平行に横たわる
掌側板・種子骨の位置背側へ移動するが関節内には挟まりにくい中手骨頭の背側に回り込み関節間隙に嵌入する
徒手整復可能困難(複雑性脱臼)
治療方針徒手整復+固定観血療法
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