学習トップ理由で解く 柔道整復師一般臨床医学 ▸ §21 臨床実地問題 / QJ34P045

理由で解く 柔道整復師

QJ34P045 一般臨床医学

出典:第34回柔道整復師国家試験(2026)午後 問45
問題
28歳の女性。3か月前から夕方になると瞼が重く、開けづらく感じた。1か月前から疲れると物が二重に見えるようになった。硬いものを噛んでいると顎が疲れて動かなくなるので、休みながら食事をしている。この患者でみられるのはどれか。
選択肢
1 振戦
2 反復運動での症状の増悪
3 ロンベルグ徴候
4 バビンスキー反射
解答
正解2(反復運動での症状の増悪)
解説

夕方になると瞼が開けにくい、疲れると複視が出る、噛み続けると顎が動かなくなるが休むと戻る。使うほど悪化して休むと回復するという易疲労性と日内変動は、神経筋接合部の伝達障害である重症筋無力症の典型像である。

運動神経終末から放出されたアセチルコリンが筋側終板のニコチン性アセチルコリン受容体に結合することで筋は収縮する。重症筋無力症ではこの受容体に対する自己抗体(抗AChR抗体、一部は抗MuSK抗体)によって受容体が減り、終板電位が下がって伝達の余力が失われる。神経終末からのアセチルコリン放出量はもともと連続刺激でしだいに減るため、健常なら問題にならないその生理的な目減りが、余力を失った本症では閾値割れを起こす。こうして「反復使用で筋力が落ち、休息で回復する」という波が生まれる。外眼筋と眼瞼挙筋は小さく余力に乏しいため眼瞼下垂と複視が初発症状になりやすく、咀嚼筋・嚥下筋・構音筋に及ぶと本例のように食事が続けられなくなる。診断は反復神経刺激試験の漸減現象(waning)、抗体検査、アイスパック試験などで進め、胸腺腫の合併を胸部CTで検索する。息苦しさやむせを訴える場合は呼吸筋・嚥下筋障害(クリーゼ)の危険があるため、施術は中止して直ちに医療機関につなぐ。

✓ 2. 正しい
反復運動での症状の増悪
重症筋無力症の本質そのもの。伝達の余力がないため、繰り返し使うほど筋力が低下し、休ませると回復する。本例の「夕方に瞼が重い」「疲れると複視」「噛み続けると顎が動かなくなる」はすべてこの一つの性質の現れであり、検査上は反復神経刺激試験の漸減現象として客観化される。
✗ 1. 誤り
振戦
意思と無関係に生じるふるえで、錐体外路(パーキンソン病の安静時振戦)、小脳(企図振戦)、本態性振戦、甲状腺機能亢進症などでみられる。重症筋無力症の障害部位は神経筋接合部であり、中枢の運動調節系は侵されないため、原則として不随意運動は伴わない。
✗ 3. 誤り
ロンベルグ徴候
閉足起立で閉眼させると動揺が強まる所見で、視覚で代償していた深部感覚(脊髄後索)の障害や前庭障害を示す。重症筋無力症は運動側の伝達障害で感覚路は保たれるため陰性である。本例がしびれや感覚鈍麻を訴えていない点も、感覚系の疾患でないことを支持する。
✗ 4. 誤り
バビンスキー反射
足底外側をこすると母趾が背屈する病的反射で、錐体路(上位運動ニューロン)の障害を示す。重症筋無力症の障害は運動ニューロンより末梢の神経筋接合部にあり錐体路は無傷なので陰性となる。腱反射も通常保たれ、痙縮も出ない。
ポイント
  • 「夕方に強い・使うと悪化・休むと戻る」の三点セット(日内変動と易疲労性)が出たら重症筋無力症を疑う。
  • 病態は神経筋接合部のアセチルコリン受容体に対する自己抗体。受容体が減って終板電位の余力が失われるため、反復刺激で伝達が途切れる。
  • 初発症状は眼瞼下垂と複視が多く、進むと咀嚼・嚥下・構音の障害(球症状)に及ぶ。本例は眼症状と咀嚼筋症状がそろっている。
  • 感覚障害・錐体路徴候(バビンスキー反射)・不随意運動を伴わないのが原則で、ここが他疾患との切り分けになる。
  • 検査は反復神経刺激試験の漸減現象、抗AChR抗体、アイスパック試験、胸腺腫検索の胸部CT。呼吸苦やむせが出たらクリーゼを念頭に施術を中止し、速やかに医療機関へ連絡・搬送する。
比較表
所見どこの障害で陽性になるか本例(重症筋無力症)
反復運動での症状増悪神経筋接合部(伝達の余力低下)該当する(正答)
振戦錐体外路・小脳、本態性、甲状腺機能亢進症みられない
ロンベルグ徴候脊髄後索(深部感覚)・前庭陰性(感覚は保たれる)
バビンスキー反射錐体路(上位運動ニューロン)陰性(錐体路は侵されない)
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