学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §1 損傷 / QJ24P044

理由で解く 柔道整復師

QJ24P044 外科学概論

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午後 問44
問題
熱傷で正しいのはどれか。
選択肢
1 乳幼児の熱傷範囲の診断に9の法則を用いる。
2 Ⅲ度熱傷で強い痛みを感じる。
3 気道熱傷を合併した場合は重症に分類される。
4 広範囲熱傷患者では胃粘膜障害は発生しにくい。
解答
正解3(気道熱傷を合併した場合は重症に分類される。)
解説

熱傷の重症度は「深さ × 面積 × 部位・合併症」の3つで決まります。なかでも気道熱傷の合併は、面積が小さくても重症熱傷として扱うのが原則です。

面積の算定は、成人では体表を9%ずつに区切る「9の法則」を使いますが、乳幼児は頭部が相対的に大きく下肢が短いため、この配分が合いません。そこで乳幼児では年齢に応じて配分を変える「5の法則」やLund-Browderの図表を用います。深さはⅠ度(表皮まで・発赤)、Ⅱ度(真皮まで・水疱)、Ⅲ度(皮膚全層の壊死)に分け、Ⅱ度はさらに浅達性(真皮浅層まで)と深達性(真皮深層まで)に分けます。痛みは知覚神経終末が保たれている浅達性Ⅱ度で最も強く、神経終末が傷む深達性Ⅱ度では痛覚がむしろ鈍り、全層が壊死するⅢ度では知覚が失われます。重症度判定にはArtz(アルツ)の基準が用いられ、Ⅱ度30%以上・Ⅲ度10%以上のほか、顔面・手・足のⅢ度熱傷、気道熱傷、骨折や軟部組織損傷の合併、電撃傷、化学熱傷が重症熱傷とされ、総合病院での入院治療の対象になります。同じ基準では中等症=Ⅱ度15〜30%またはⅢ度10%未満(顔面・手・足を除く)、軽症=Ⅱ度15%以下またはⅢ度2%以下と段階づけられており、顔面・手・足は「Ⅲ度であれば面積が小さくても重症側へ引き上げる」という位置づけです。深達度の限定を落として「顔面ならⅠ度・Ⅱ度でも重症」と覚えると、中等症の但し書きと矛盾するので注意します。また広範囲熱傷では侵襲によるストレス性の胃十二指腸潰瘍(Curling潰瘍)が起こりやすく、消化管出血への備えが必要です。

✓ 3. 正しい
気道熱傷を合併した場合は重症に分類される。
Artzの基準では、気道熱傷の合併は熱傷面積の大小にかかわらず重症熱傷に分類されます。熱気や煤を吸い込むと気道粘膜が浮腫を起こし、受傷直後は話せていても数時間で急速に気道が閉塞しうるためです。顔面の熱傷、鼻毛の焼失、煤の混じった痰、嗄声、閉鎖空間での受傷といった手がかりがあれば気道熱傷を疑い、腫脹が進む前の早い段階で気道確保ができる医療機関へつなぐことが求められます。
✗ 1. 誤り
乳幼児の熱傷範囲の診断に9の法則を用いる。
9の法則は成人の体型を前提にした簡便法です。乳幼児は頭部が大きく下肢が短いため、そのまま当てはめると頭部を過小に、下肢を過大に見積もってしまいます。乳幼児では年齢による体型差を織り込んだ5の法則やLund-Browderの図表を用い、散在する小範囲の熱傷には患者本人の手掌(指を含めて約1%)を物差しにする手掌法を併用します。
✗ 2. 誤り
Ⅲ度熱傷で強い痛みを感じる。
Ⅲ度熱傷は皮膚全層が壊死した状態で、真皮内の知覚神経終末まで破壊されるため、その部位の痛みはむしろ失われます(無痛・知覚脱失)。痛みが最も強いのは神経終末が保たれている浅達性Ⅱ度で、同じⅡ度でも真皮深層まで及ぶ深達性Ⅱ度では痛覚は鈍くなります。「痛くないから軽い」と判断せず、創面が白色〜褐色で乾燥し、針で触れても痛みを訴えない部位はⅢ度を疑って深達度を評価し直します。
✗ 4. 誤り
広範囲熱傷患者では胃粘膜障害は発生しにくい。
逆で、広範囲熱傷は強い侵襲によって胃粘膜の血流低下と防御機構の破綻を招き、ストレス潰瘍(Curling潰瘍)が生じやすくなります。吐血・下血・黒色便といった消化管出血の徴候に注意し、急性期には酸分泌抑制薬の投与や可能な範囲での早期経腸栄養など、粘膜を守る管理が行われます。
ポイント
  • 面積算定は成人=9の法則、乳幼児=5の法則(またはLund-Browderの図表)。小範囲には手掌法(患者の手掌+指で約1%)。
  • 深達度と痛みは4段階で覚える。Ⅰ度=発赤で有痛/浅達性Ⅱ度=水疱・水疱底は赤色で最も痛い/深達性Ⅱ度=水疱底は白色で痛覚が鈍い/Ⅲ度=白色〜褐色で無痛(知覚脱失)。
  • 痛みのピークは浅達性Ⅱ度。そこから深くなるほど(深達性Ⅱ度 → Ⅲ度)痛覚は鈍っていく。
  • Artzの基準では、気道熱傷の合併は面積に関係なく重症熱傷。ほかにⅡ度30%以上、Ⅲ度10%以上、顔面・手・足のⅢ度熱傷、電撃傷、化学熱傷、骨折・軟部組織損傷の合併。
  • Artzの3段階:重症=上記/中等症=Ⅱ度15〜30%・Ⅲ度10%未満(顔面・手・足を除く)/軽症=Ⅱ度15%以下・Ⅲ度2%以下。「顔面・手・足」はⅢ度のときだけ例外的に重症側へ上がる。
  • 気道熱傷を疑う所見は、顔面熱傷・鼻毛の焼失・煤を含む痰・嗄声・閉鎖空間での受傷。腫脹が進む前に気道確保できる体制へ。
  • 広範囲熱傷ではCurling潰瘍(ストレス潰瘍)に注意し、消化管出血の徴候を追う。
比較表
深達度障害の及ぶ層見た目痛み治癒の経過
Ⅰ度(EB)表皮まで発赤、水疱なしあり(ヒリヒリ)数日、瘢痕を残さない
浅達性Ⅱ度(SDB)真皮浅層水疱、水疱底は赤色最も強い約1〜2週、瘢痕を残しにくい
深達性Ⅱ度(DDB)真皮深層水疱、水疱底は白色鈍い(低下)3〜4週以上、瘢痕を残す
Ⅲ度(DB)皮膚全層白色〜褐色、羊皮紙様なし(知覚脱失)自然上皮化は困難、植皮を要する
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