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理由で解く 柔道整復師

QJ34P044 一般臨床医学

出典:第34回柔道整復師国家試験(2026)午後 問44
問題
40歳の女性。頸椎捻挫の施術中に前頸部の腫れに気が付いた。本人から話を聞いたところ、半年ほど前から仕事をする気力がなくなり、3か月ほど前から皮膚の乾燥と便秘が続いており、寒がりになっているとのことであった。脈拍は46/分・整。下腿前面に指圧痕の残らない浮腫がみられる。考えられるのはどれか。
選択肢
1 うつ病
2 心不全
3 橋本病
4 バセドウ (Basedow)病
解答
正解3(橋本病)
解説

前頸部の腫れ(甲状腺腫)、気力低下、皮膚乾燥、便秘、寒がり、徐脈46/分、圧痕を残さない下腿浮腫──甲状腺機能低下症の症候がそろっています。中年女性でびまん性の甲状腺腫を伴う代表格は橋本病(慢性甲状腺炎)です。

甲状腺ホルモンは全身の代謝を上げるホルモンなので、不足すると症状はすべて「代謝が落ちた状態」として説明できます。熱産生が減って寒がりになり、汗腺・皮脂の分泌が減って皮膚が乾燥し、消化管運動が落ちて便秘になり、心拍数が減って徐脈となり、精神活動も鈍って気力低下・抑うつ様になります。特徴的なのが粘液水腫で、真皮にムコ多糖が沈着して起こるため、指で押しても圧痕が残らない(非圧痕性)点が心不全や腎疾患の圧痕性浮腫との決定的な違いです。橋本病は自己免疫による慢性甲状腺炎で中年女性に多く、びまん性の甲状腺腫を触れます。こうした所見に気づいたら、施術を続ける前に医療機関の受診を勧め、経過を情報提供することが柔道整復師の役割です。

✓ 3. 正しい
橋本病
自己免疫性の慢性甲状腺炎で、びまん性甲状腺腫(前頸部の腫れ)と甲状腺機能低下症状を伴います。半年〜数か月かけてゆっくり進む経過、寒がり・皮膚乾燥・便秘・徐脈・非圧痕性浮腫という組み合わせが本症例と完全に一致します。
✗ 1. 誤り
うつ病
「仕事をする気力がなくなった」という点だけをみると紛らわしく、実際に甲状腺機能低下症はうつ病と誤られやすい疾患です。しかしうつ病では徐脈、前頸部の腫れ、非圧痕性浮腫、皮膚乾燥は説明できません。抑うつ症状のある患者では甲状腺機能を確認する、と覚えておきます。
✗ 2. 誤り
心不全
下腿浮腫は共通しますが、心不全の浮腫は指圧痕の残る圧痕性です。また代償性に頻脈となることが多く、労作時呼吸困難や頸静脈怒張を伴います。46/分の徐脈と前頸部の腫れは心不全では説明できません。
✗ 4. 誤り
バセドウ (Basedow)病
甲状腺腫がある点は共通しますが、バセドウ病は機能亢進症なので、暑がり、多汗、頻脈、体重減少、下痢、手指振戦、眼球突出と、本症例とはことごとく正反対の所見になります。
ポイント
  • 甲状腺機能低下症=代謝が落ちる:寒がり・易疲労・気力低下・皮膚乾燥・便秘・徐脈・体重増加・嗄声。
  • 粘液水腫は圧痕を残さない浮腫。心不全・腎疾患の圧痕性浮腫との鑑別点。
  • びまん性甲状腺腫+機能低下+中年女性 → 橋本病(慢性甲状腺炎)。
  • バセドウ病は同じ甲状腺腫でも症状が真逆(暑がり・頻脈・体重減少・下痢)。
  • 抑うつ様症状を診たら甲状腺機能低下症を鑑別に入れ、医療機関受診を勧める。
比較表
橋本病(機能低下)バセドウ病(機能亢進)心不全
脈拍徐脈頻脈頻脈が多い
体温感覚寒がり暑がり・多汗特徴なし
体重増加減少浮腫で増加
便通便秘下痢特徴なし
浮腫非圧痕性(粘液水腫)前脛骨粘液水腫(限局性)圧痕性
甲状腺びまん性腫大びまん性腫大腫大なし
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