学習トップ理由で解く 柔道整復師衛生学・公衆衛生学 ▸ §1 健康の保持増進と疾病予防 / QJ34P006

理由で解く 柔道整復師

QJ34P006 衛生学・公衆衛生学

出典:第34回柔道整復師国家試験(2026)午後 問6
問題
肥満によって発がんリスクが上がるのはどれか。
選択肢
1 肺がん
2 胃がん
3 大腸がん
4 食道がん
解答
正解3(大腸がん)
解説

肥満が発がんリスクを高めることがはっきりしているのは大腸がんである。脂肪組織を介したホルモン環境の変化と慢性炎症が、大腸粘膜の細胞増殖を後押しする。

肥満では、インスリン抵抗性による高インスリン血症とインスリン様成長因子(IGF-1)の作用増強、脂肪組織から分泌されるレプチンの増加とアディポネクチンの低下、そして軽度の慢性炎症が同時に起こる。これらはいずれも細胞増殖を促しアポトーシスを抑える方向に働き、大腸粘膜の発がんを促進すると考えられている。日本人を対象とした評価でも、肥満と大腸がんの関連は確実性が高いとされ、国際的にも体脂肪の過多は大腸のほか肝臓、膵臓、腎臓、閉経後の乳房、子宮体部のがんのリスクを上げるとされている。ここで注意したいのが食道がんで、肥満と関連するのは欧米に多い食道腺がん(胃食道逆流症からバレット食道を経て生じる)であり、日本の食道がんの大半を占める扁平上皮がんの主因は飲酒と喫煙である。予防としては、適正体重の維持に加えて身体活動を増やし、節酒・禁煙を組み合わせること、そして40歳以上では便潜血検査による大腸がん検診を毎年受けることが具体的な行動になる。

✗ 1. 誤り
肺がん
最大の危険因子は喫煙で、受動喫煙、アスベスト、ラドンなども関与する。肥満がリスクを上げるという関係は示されていない。
✗ 2. 誤り
胃がん
主因はヘリコバクター・ピロリの持続感染で、これに高塩分食品の摂取や喫煙が加わる。除菌と減塩が予防の柱であり、肥満は主要な危険因子として挙げられない。
✓ 3. 正しい
大腸がん
高インスリン血症とIGF-1の作用増強、アディポカインの分泌異常、慢性炎症を介してリスクが上がる。肥満と重なりやすい身体活動不足、飲酒、加工肉・赤肉の多い食事も同じ方向に働くため、生活習慣全体としての対策が有効である。
✗ 4. 誤り
食道がん
日本の食道がんの大半を占める扁平上皮がんは、飲酒(アセトアルデヒドの発がん性)と喫煙、熱い飲食物が主な危険因子である。肥満が関与するのは胃食道逆流を介して生じる食道腺がんで、日本では少数派にとどまるため、本問で選ぶべき肢は大腸がんとなる。
ポイント
  • 肥満→高インスリン血症・IGF-1増強・アディポカイン異常・慢性炎症→細胞増殖促進という機序で発がんリスクが上がる
  • 肥満との関連が明確なのは大腸、肝臓、膵臓、腎臓、閉経後乳房、子宮体部など
  • 胃がん=ピロリ菌と高塩分、肺がん=喫煙、食道扁平上皮がん=飲酒と喫煙が主因
  • 食道がんでも肥満が関わるのは腺がん(バレット食道経由)で、日本で多い扁平上皮がんとは危険因子が異なる
  • 行動としては適正体重の維持、身体活動の確保、節酒・禁煙、40歳以上での便潜血検査による大腸がん検診
比較表
がん主な危険因子肥満との関連
大腸がん肥満、身体活動不足、飲酒、加工肉・赤肉、喫煙あり(リスク上昇)
肺がん喫煙、受動喫煙、アスベスト、ラドン示されていない
胃がんヘリコバクター・ピロリ、高塩分、喫煙示されていない
食道がん(扁平上皮がん・日本で多数)飲酒、喫煙、熱い飲食物主因ではない
食道がん(腺がん・欧米で多い)胃食道逆流症、バレット食道、肥満あり
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