学習トップ理由で解く 柔道整復師必修問題 ▸ §19 肘関節後方脱臼の診察および整復 / QJ34A020

理由で解く 柔道整復師

QJ34A020 必修問題

出典:第34回柔道整復師国家試験(2026)午前 問20
問題
肘関節後方脱臼整復後の確認で誤っているのはどれか。
選択肢
1 肘部に異常な疼痛を訴えていないか。
2 上腕三頭筋の索状変形は消失したか。
3 肘関節の完全伸展は可能か。
4 橈骨動脈の拍動は正常か。
解答
正解3(肘関節の完全伸展は可能か。)
解説

この設問は「誤っているのはどれか」を問うています。答えは3で、整復直後に完全伸展の可否を確かめる必要はなく、むしろ避けるべき操作です。

肘関節後方脱臼の整復が成功したかは、骨性指標・軟部の所見・合併症の3方向から確認します。骨性指標ではヒューター三角とヒューター線が正常化し、肘頭の後方突出が消えること、軟部では弾発性固定が消失して他動屈曲が抵抗なく行えること、そして緊張して索状に触れていた上腕三頭筋(腱)の硬さが消えることが指標になります。一方、整復直後の肘は関節包・側副靱帯・上腕筋が損傷し出血と腫脹を抱えた状態です。ここで伸展方向に強い力を加えると再脱臼や損傷の拡大、さらには骨化性筋炎を招きかねません。整復後は屈曲90度前後の肢位で固定し、伸展可動域は後療法のなかで自動運動を主体に段階的に取り戻していきます。あわせて正中神経・尺骨神経の症状と上腕動脈の血行を必ず確認し、異常があれば速やかに医師へつなぎます。

✓ 3. これが誤り(=設問の答え)
肘関節の完全伸展は可能か。
整復直後の肘は損傷組織と腫脹のため、完全伸展はできないのが通常です。できるかどうかを確かめる意味がないうえ、伸展を試みる操作自体が再脱臼と骨化性筋炎の誘因になります。整復後は屈曲90度前後で固定し、伸展は後療法で少しずつ獲得していきます。
✗ 1. 適切な確認事項(答えではない)
肘部に異常な疼痛を訴えていないか。
整復されれば痛みは大きく軽減します。それでも強い痛みが残る、あるいは時間とともに増していく場合は、整復不完全や骨折の合併、腫脹による循環障害を疑うサインになります。固定後も痛みの推移を追いかけます。
✗ 2. 適切な確認事項(答えではない)
上腕三頭筋の索状変形は消失したか。
後方脱臼では、後方へ移動した肘頭に引かれて上腕三頭筋(腱)が緊張し、索状に触れます。整復されて尺骨の滑車切痕が上腕骨滑車に適合すれば(=肘頭が上腕骨の肘頭窩に戻れば)、この緊張は消えます。触知で判断できる、わかりやすい整復の指標です。
✗ 4. 適切な確認事項(答えではない)
橈骨動脈の拍動は正常か。
肘関節後方脱臼では上腕動脈損傷や腫脹による循環障害が起こりえます。橈骨動脈拍動、手指の色調・温度・知覚は整復前後と固定後に必ず確認し、拍動の減弱や強い前腕痛があれば直ちに医師の診察につなぎます。
ポイント
  • 整復の判定:ヒューター三角・ヒューター線の正常化、肘頭後方突出の消失、弾発性固定の消失、上腕三頭筋の索状硬結の消失。
  • 解剖の整理:滑車切痕は尺骨自身の凹み(肘頭と鉤状突起の間)で、そこに上腕骨滑車が納まる。整復されると肘頭は上腕骨の肘頭窩に収まる。
  • 合併症の確認:橈骨動脈拍動、正中神経(母指〜示指の知覚・母指対立)、尺骨神経(小指側の知覚・骨間筋)、内側上顆骨折の有無。
  • 整復後は屈曲90度前後で固定。完全伸展の可否は確認項目にならない。
  • 伸展方向への他動的な強い操作・過度なストレッチは、再脱臼と骨化性筋炎の誘因。後療法は自動運動が主体。異常な疼痛、進行する腫脹、しびれ、拍動減弱は待たずに医師へ紹介する。
比較表
項目整復直後の扱い理由
ヒューター三角・線必ず確認する骨性指標が戻れば整復されている
上腕三頭筋の索状変形必ず確認する滑車切痕が上腕骨滑車に適合し、肘頭が肘頭窩に戻れば緊張が消える
橈骨動脈拍動・神経症状必ず確認する上腕動脈損傷・神経麻痺の早期発見
疼痛の程度と推移必ず確認する整復不完全・骨折合併・循環障害のサイン
完全伸展の可否行わない腫脹と組織損傷があり、再脱臼・骨化性筋炎の危険
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