学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ33P122

理由で解く 柔道整復師

QJ33P122 柔道整復理論

出典:第33回柔道整復師国家試験(2025)午後 問122
問題
19歳の男性。大学で野球部に所属している。入部後練習量が増え、ランニング後にアキレス腱部の痛みが生じるようになったため来所した。長軸超音波画像(別冊 No. 8)を別に示す。正しい画像所見はどれか。
図
選択肢
1 骨棘がみられる。
2 腱の肥厚がみられる。
3 異所性骨化がみられる。
4 腱内に血腫がみられる。
解答
正解2(腱の肥厚がみられる。)
解説

練習量の増加に伴ってランニング後にアキレス腱部が痛むという、典型的な使いすぎによるアキレス腱症です。超音波の長軸像で確認される所見は腱の肥厚になります。

アキレス腱は下腿三頭筋の力を踵骨へ伝える人体最大の腱で、走行時には体重の数倍の張力を受けます。練習量が急に増えると、腱に加わる負荷が修復の速度を上回り、腱の実質にコラーゲン線維の配列の乱れ、基質の増加、微小な断裂と修復の繰り返しが生じます。これは急性の炎症というより変性の要素が強く、腱症(tendinopathy)と呼ばれます。その結果、腱は紡錘状に膨らみ、超音波の長軸像では健側と比べて腱の厚みが増し、内部の平行に走る線状の構造(フィブリラーパターン)が不明瞭になって低エコー域として描出されます。ドプラを併用すると腱内に新生血管が確認されることもあります。したがって、この病態でまず見るべき所見は「腱の肥厚」です。超音波を用いる際は必ず健側と左右比較すること、長軸と短軸の両方で観察することが基本になります。対応としては、練習量を一度落として腱への負荷を調整し、下腿三頭筋の柔軟性改善と足関節背屈可動域の確保、シューズや路面などの環境要因の見直し、そして段階的な負荷の再構築を組み合わせます。

✓ 2. 正しい
腱の肥厚がみられる。
長軸像で見るべき所見です。反復する負荷によって腱実質に変性と修復が繰り返され、腱が紡錘状に膨らみます。健側と比較すると厚みの差が明瞭になり、同時に腱線維の平行な線状構造が乱れて内部が低エコーに描出されます。左右比較で確認することが診断の基本です。
✗ 1. 誤り
骨棘がみられる。
骨棘は骨の表面に生じる骨性の増殖で、超音波では強い高エコーとその後方の音響陰影として現れます。踵骨付着部の障害では付着部の骨性変化を伴うことがありますが、本例のように腱実質部で問題となる腱症の中心所見ではなく、腱の内部に骨棘が生じることもありません。
✗ 3. 誤り
異所性骨化がみられる。
異所性骨化は本来骨が存在しない軟部組織に骨組織が形成される現象で、強い打撲後の骨化性筋炎、脊髄損傷や熱傷の後などで生じます。数週間から数か月の経過で成熟していくもので、練習量増加に伴う腱症の典型像ではありません。
✗ 4. 誤り
腱内に血腫がみられる。
血腫は急性の断裂や部分断裂で生じる所見です。アキレス腱断裂では、ダッシュやジャンプの瞬間に「蹴られたような衝撃」を感じる明確な受傷機転があり、腱の陥凹の触知やトンプソンテスト陽性を伴います。本例は明確な受傷の瞬間がなく徐々に痛みが生じており、経過が異なります。
ポイント
  • 使いすぎによるアキレス腱症の本態は炎症より変性。線維配列の乱れと微小損傷の反復が起こる。
  • 超音波の長軸像の中心所見は腱の紡錘状肥厚と、内部の低エコー化・線状構造の不明瞭化。
  • 観察の基本は健側との左右比較、および長軸・短軸の両方向での確認。
  • アキレス腱断裂との鑑別:断裂は明確な受傷の瞬間、腱の陥凹、トンプソンテスト陽性。
  • 対応は練習量の調整、下腿三頭筋の柔軟性と足関節背屈可動域の改善、環境要因の見直し、段階的な負荷の再構築。
比較表
アキレス腱症(本例)アキレス腱断裂
発症練習量増加後、徐々にダッシュ・ジャンプの瞬間に突然
自覚運動後の痛み、朝の動かし始めのこわばり蹴られたような衝撃、断裂音
触診腱の紡錘状の腫れと圧痛腱の陥凹を触知
トンプソンテスト陰性陽性(足関節が底屈しない)
超音波所見腱の肥厚、内部低エコー、線維配列の乱れ腱の連続性の途絶、断端間の血腫
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