学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ33P115

理由で解く 柔道整復師

QJ33P115 柔道整復理論

出典:第33回柔道整復師国家試験(2025)午後 問115
問題
25歳の女性。バレーボールの社会人リーグに所属している。ブロックの際に、ボールで右母指が橈側外転強制された。2日経過しても腫れと物が持ちにくい症状が残存するため来所した。徒手検査で動揺性がみられる。誤っているのはどれか。
選択肢
1 CM関節橈側に圧痛がみられる。
2 MP関節屈曲位で動揺性を評価する。
3 後療法ではピンチ力の筋力強化を行う。
4 競技の復帰には観血療法が推奨される。
解答
正解1(CM関節橈側に圧痛がみられる。)
解説

母指が橈側へ開く方向(橈側外転)に強制され、つまみ動作が困難で動揺性が残る──母指MP関節尺側側副靱帯損傷(いわゆるスキーヤー母指・ゲームキーパー母指)の典型像です。この設問は「誤っているのはどれか」なので、圧痛部位をCM関節橈側とする1が答えになります。

母指MP関節の尺側側副靱帯は、母指が橈側へ開かれる力に対する主たる(一次的な)制動装置で、副側副靱帯・掌側板・母指内転筋腱膜がこれを補助しています。ボールが母指に当たって橈側外転が強制されると、まず主役である固有尺側側副靱帯が引き伸ばされて損傷します。母指の尺側側副靱帯はつまみ(ピンチ)動作の支点を安定させているため、切れると「物が持ちにくい」という訴えになります。完全断裂では、断裂した靱帯断端が母指内転筋腱膜の上に乗り上げて骨に戻れなくなるStener損傷を生じることがあり、この状態では固定しても癒合しません。

✓ 1. これが答え(誤っている記述)
CM関節橈側に圧痛がみられる。
損傷しているのはMP関節の尺側側副靱帯なので、圧痛・腫脹はMP関節の尺側に限局します。CM関節橈側の圧痛は、母指CM関節症やベネット骨折など手根中手関節そのものの病変で問題になる所見で、本症例の受傷機転とは結びつきません。圧痛点を「関節ひとつ分・反対側」に取り違えている点が誤りです。
✗ 2. 正しい記述(答えではない)
MP関節屈曲位で動揺性を評価する。
MP関節を約30度屈曲させると、副側副靱帯や掌側板がゆるんで固有側副靱帯だけが緊張します。この肢位で側方ストレスをかけると靱帯本体の断裂を選択的に拾えます。伸展位だけで診ると補助的な制動要素が効いて動揺性を見落とすため、屈曲位で、かつ必ず健側と比べて評価します。
✗ 3. 正しい記述(答えではない)
後療法ではピンチ力の筋力強化を行う。
母指尺側側副靱帯はつまみ動作の安定を担う要なので、固定期間が終わったら母指内転筋・短母指屈筋などピンチに働く筋を段階的に鍛え、握力とつまみ力を健側水準まで戻してから競技に復帰させます。可動域訓練と並行して行うのが後療法の基本です。
✗ 4. 正しい記述(答えではない)
競技の復帰には観血療法が推奨される。
徒手検査で明らかな動揺性がある=完全断裂が疑われる状態です。Stener損傷では保存療法で靱帯が付着部に戻らず不安定性が残るため、手を使う競技者には靱帯縫合・再建が勧められます。動揺性を確認したら、その場で医療機関へ紹介し画像評価につなげる対応が必要です。
ポイント
  • 母指の橈側外転強制 → MP関節尺側側副靱帯損傷(スキーヤー母指・ゲームキーパー母指)。
  • 橈側外転に対する主たる制動は固有尺側側副靱帯。副側副靱帯・掌側板・母指内転筋腱膜が補助する。
  • 圧痛・腫脹はMP関節尺側。CM関節ではない。
  • 動揺性テストはMP関節を約30度屈曲させ(補助制動をゆるめる)、健側と比較して行う。
  • 断端が母指内転筋腱膜に乗り上げるStener損傷では保存療法で治らない → 競技者は観血療法。
  • 後療法の到達目標は「つまむ力」の再獲得。
比較表
母指MP関節尺側側副靱帯損傷ベネット骨折(CM関節部)
受傷機転母指の橈側外転(外転)強制母指の軸方向への圧迫・屈曲
圧痛部位MP関節の尺側CM関節(第1中手骨基部)
主な所見屈曲位での側方動揺、ピンチ力低下基部の膨隆・変形、軸圧痛
対応完全断裂・競技者は観血療法脱臼骨折として整復・固定、多くは観血療法
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