学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ33P113

理由で解く 柔道整復師

QJ33P113 柔道整復理論

出典:第33回柔道整復師国家試験(2025)午後 問113
問題
20歳の男性。体操部に所属している。つり輪の練習中に左肩部に痛みを自覚した。肩関節の挙上は違和感はあるが可能である。肩前方の短軸超音波画像(別冊 No. 7)を別に示す。考えられるのはどれか。
図
選択肢
1 上腕二頭筋長頭腱炎
2 ベネット(Bennett)損傷
3 バンカート(Bankart) 損傷
4 ヒル・サックス(Hill-Sachs)損傷
解答
正解1(上腕二頭筋長頭腱炎)
解説

肩前方の短軸(横断)像は結節間溝を通る上腕二頭筋長頭腱を観察する断面であり、つり輪による反復負荷で生じる長頭腱炎が考えられる。答えは1である。

つり輪は懸垂による牽引と肩の屈曲・内旋の反復負荷がかかる種目で、結節間溝を滑走する上腕二頭筋長頭腱に摩擦ストレスが集中しやすい。観察のために肩前方の短軸像という撮像部位が選ばれていること、挙上が違和感を伴いながらも可能であることを合わせると、脱臼に伴う構造の破綻ではなく結節間溝部における腱の炎症が考えやすい。短軸像は結節間溝内における腱の位置・形状や周囲の液体貯留を確認するのに適した断面で、長軸像と併せて評価する。対応は負荷量の調整と局所の安静から始め、痛みのない範囲での可動域練習と肩甲帯の機能改善を並行して進める。

✓ 1. 正しい
上腕二頭筋長頭腱炎
結節間溝部での反復する摩擦により生じる。つり輪による反復負荷という背景、挙上が違和感を伴いながらも可能という経過に合致し、肩前方の短軸像はまさにこの腱を観察するための断面である。
✗ 2. 誤り
ベネット(Bennett)損傷
投球のフォロースルー期に加わる牽引により、肩甲骨関節窩の後下縁に骨棘を生じるもの。病変は肩の後方にあるため、肩前方から観察する断面で評価する損傷ではない。
✗ 3. 誤り
バンカート(Bankart) 損傷
肩関節前方脱臼に伴い関節窩前下方の関節唇が剥離するもので、反復性脱臼の原因となる。脱臼の既往が前提であり、本例の経過に脱臼はない。
✗ 4. 誤り
ヒル・サックス(Hill-Sachs)損傷
前方脱臼の際に上腕骨頭の後外側が関節窩前縁に衝突してできる陥凹骨折で、これも脱臼を前提とする。脱臼の記載がなく、反復動作で発症した本例の経過では説明できない。
ポイント
  • 上腕二頭筋長頭腱は結節間溝を滑走する。肩前方の短軸像はこの腱を観察する標準断面。
  • つり輪・懸垂系の反復負荷では長頭腱に摩擦ストレスが集中し腱炎を生じる。
  • バンカート損傷・ヒル・サックス損傷はいずれも肩関節前方脱臼を前提とする病変。
  • ベネット損傷は投球障害で関節窩後下縁に骨棘を生じ、病変部位は肩の後方。
  • 対応は負荷調整と局所安静、痛みのない範囲での可動域練習と肩甲帯機能の改善。
比較表
損傷部位典型的な背景
上腕二頭筋長頭腱炎結節間溝(肩前面)反復する牽引・摩擦(つり輪、懸垂、投球)
ベネット損傷関節窩後下縁の骨棘投球のフォロースルー期、肩後方痛
バンカート損傷関節窩前下方の関節唇肩関節前方脱臼後、反復性脱臼
ヒル・サックス損傷上腕骨頭後外側の陥凹肩関節前方脱臼後
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。