学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ33P112

理由で解く 柔道整復師

QJ33P112 柔道整復理論

出典:第33回柔道整復師国家試験(2025)午後 問112
問題
50歳の男性。日常生活で肩関節外転時に痛みを自覚したため来所した。肩部に腫脹はないが、肩関節外転筋力が低下している。肩内旋・屈曲で痛みを訴えるが、肩外旋・屈曲あるいは肩伸展では痛みを訴えない。肘関節屈曲に対する前腕への抵抗運動では痛みを訴えない。考えられるのはどれか。
選択肢
1 SLAP 損傷
2 棘上筋腱損傷
3 肩甲下筋腱損傷
4 上腕二頭筋長頭腱炎
解答
正解2(棘上筋腱損傷)
解説

外転筋力の低下があり、内旋位での屈曲で痛むが外旋位の屈曲や伸展では痛まない。肩峰下でのインピンジメントを示す所見であり、棘上筋腱損傷を考える。

棘上筋は肩甲骨棘上窩から起こり、肩峰の下をくぐって上腕骨大結節上面に停止する。外転の初動と骨頭の求心位保持を担うため、腱が傷むと外転筋力が低下する。腕を内旋させたまま前方挙上すると大結節が肩峰前下縁や烏口肩峰靱帯と衝突し、その間に挟まれる棘上筋腱と肩峰下滑液包に痛みが出る(インピンジメント徴候を誘発する肢位)。外旋位で挙げれば大結節が肩峰の下に潜り込まず衝突を避けられるため痛みが出にくい。この「内旋で痛く、外旋では痛くない」という差が、棘上筋腱・肩峰下滑液包の障害を示す手がかりになる。一方、本例で「肘関節屈曲に対する前腕への抵抗運動」で痛みが出ないことは、ヤーガソンテスト(肘屈曲位で前腕回外に抵抗をかける検査)に相当する肢位で陰性ということであり、上腕二頭筋長頭腱に由来する病態を否定する材料になる。

✓ 2. 正しい
棘上筋腱損傷
外転筋力低下という機能面の所見と、内旋位での屈曲で誘発される疼痛というインピンジメントの所見がそろっている。中高年で腱の変性を背景に生じやすく、腫脹が目立たない点も腱内部の障害として矛盾しない。
✗ 1. 誤り
SLAP 損傷
上方関節唇の上腕二頭筋長頭腱付着部を含む損傷で、投球など挙上位での回旋動作で生じる。ヤーガソンテスト(肘屈曲位で前腕回外に抵抗)や、挙上・内旋位での圧迫テスト(オブライエンテストなど)で症状が誘発されるが、本例は肘屈曲に対する抵抗運動で痛みがない。
✗ 3. 誤り
肩甲下筋腱損傷
肩甲下筋は内旋筋であり、損傷すると内旋筋力の低下、リフトオフテスト陽性、他動的な外旋可動域の増大がみられる。外転筋力低下が前面に出る本例の所見とは担当する運動方向が異なる。
✗ 4. 誤り
上腕二頭筋長頭腱炎
結節間溝部の圧痛が特徴で、徒手検査ではヤーガソンテスト(肘屈曲位で前腕回外に抵抗をかける)で疼痛が誘発される。スピードテストはこれとは別の手技で、肘伸展・前腕回外位のまま肩関節屈曲に抵抗をかけ、同じく長頭腱由来の痛みをみる検査である。本例は肘関節屈曲に対する抵抗運動(ヤーガソン相当の肢位)で痛みがなく、考えにくい。
ポイント
  • 棘上筋は外転の主動作筋。腱損傷では外転筋力が低下する。
  • 内旋位での屈曲(挙上)=肩峰下で大結節が衝突する肢位。ここでの疼痛がインピンジメントの手がかり。
  • 外旋位の挙上や伸展で痛まないのは、衝突が起きない肢位だから。
  • ヤーガソンテスト=肘屈曲位で前腕回外に抵抗。スピードテスト=肘伸展・前腕回外位で肩屈曲に抵抗。2つは別の手技(本例の「肘屈曲に対する抵抗」はヤーガソン相当)。
  • その肘屈曲・回外抵抗で痛まない=上腕二頭筋長頭腱由来(長頭腱炎、SLAP損傷)は考えにくい。
  • 肩甲下筋腱損傷は内旋筋力低下とリフトオフテスト陽性が中心で、外転筋力低下は主症状にならない。
比較表
病態低下する筋力疼痛を誘発する動作・検査
棘上筋腱損傷外転内旋位での屈曲・挙上(インピンジメント肢位)
肩甲下筋腱損傷内旋リフトオフテスト、抵抗下の内旋
上腕二頭筋長頭腱炎目立たないヤーガソンテスト(肘屈曲位で前腕回外に抵抗)、スピードテスト(肘伸展・前腕回外位で肩屈曲に抵抗)
SLAP損傷目立たない挙上位での回旋、オブライエンテスト、ヤーガソンテスト(肘屈曲位で前腕回外に抵抗)
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。