学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ33P108

理由で解く 柔道整復師

QJ33P108 柔道整復理論

出典:第33回柔道整復師国家試験(2025)午後 問108
問題
55歳の女性。自転車で走行中に転倒し、右肩を負傷して来所した。肩峰が角状に突出し、三角筋胸筋三角の消失がみられる。運動療法で正しいのはどれか。
選択肢
1 1週目から肩の他動運動を行う。
2 2週目からコッドマン体操を行う。
3 3週目から外旋・外転運動を行う。
4 4週目から肩甲帯の筋力増強訓練を行う。
解答
正解2(2週目からコッドマン体操を行う。)
解説

肩峰が角状に突出し、三角筋胸筋三角(モーレンハイム窩)が消失するのは、肩関節前方脱臼(烏口下脱臼)の典型的な変形です。整復後は「再脱臼を招く外転・外旋を最後に回す」という順序で運動療法を組み立てます。

前方脱臼では上腕骨頭が関節窩から前内下方へ抜け、三角筋の丸みが失われて肩峰が角ばって突出します。同時に鎖骨・三角筋・大胸筋で囲まれるくぼみ(三角筋胸筋三角)が転位した骨頭で埋まり、消失して見えます。整復後は破れた前方関節包・関節唇の修復を待つために固定を行い、若年者では約3週が原則です。ただし中高年は肩が拘縮しやすいため、本例のような55歳では固定期間を2週前後に短縮し、そのぶん固定中から安全な運動を段階的に始めて拘縮を防ぎます。運動の安全な順序は「固定中から手指・肘・肩甲帯の運動 → 2週頃から振り子運動(コッドマン体操) → 固定除去後に肩の自動運動 → 外転・外旋は最後」です。

✓ 2. 正しい
2週目からコッドマン体操を行う。
上体を前傾させ、腕の重みで肩をぶら下げたまま振るのがコッドマン体操(振り子運動)です。筋を能動的に働かせずに関節を動かせるため、修復中の前方関節包に牽引や回旋のストレスをかけずに拘縮を防げます。固定の合間や固定除去の前後から安全に導入でき、肩甲上腕関節を動かす運動としては最も早く始められるものです(手指・肘・肩甲帯の運動はこれより早く、固定中から行います)。
✗ 1. 誤り
1週目から肩の他動運動を行う。
1週目は前方関節包・関節唇の修復が始まったばかりで、他動運動は方向を誤ると容易に再脱臼を招きます。この時期は固定を保ち、手指・手関節・肘の自動運動と肩甲帯の等尺性運動で浮腫と拘縮を防ぐところまでにとどめます。
✗ 3. 誤り
3週目から外旋・外転運動を行う。
外転と外旋を組み合わせた肢位は、骨頭を前方へ押し出す再脱臼肢位そのものです。3週は固定を外した直後(若年者ではちょうど固定除去の時期)にあたり、修復途上の前方関節包にこの方向のストレスをかけるには早すぎます。外旋・外転は最後に、痛みと不安感を確認しながら少しずつ広げます。
✗ 4. 誤り
4週目から肩甲帯の筋力増強訓練を行う。
僧帽筋・前鋸筋・菱形筋など肩甲帯の等尺性訓練は、肩甲上腕関節を動かさずに行えるため固定期間中(1週目)から実施できます。4週目まで待つ必要はなく、待てば肩甲骨の動きが鈍り、その後の挙上再獲得がかえって遅れます。
ポイント
  • 肩峰の角状突出+三角筋胸筋三角(モーレンハイム窩)の消失 → 肩関節前方(烏口下)脱臼
  • 整復後の固定は若年者で約3週。中高年(本例55歳)は拘縮を避けるため2週前後に短縮し、早めに運動療法へ移行する
  • 運動の順序は「遠位関節・肩甲帯の等尺性 → 2週頃コッドマン体操 → 自動運動 → 外転・外旋」
  • 外転+外旋は再脱臼肢位。最後に慎重に、が鉄則
  • 肩甲帯の訓練は肩甲上腕関節を動かさないので固定中から始めてよい(コッドマン体操よりさらに早い)
比較表
時期行うことまだ行わないこと
1週(固定中)手指・手関節・肘の自動運動、肩甲帯の等尺性運動肩の他動・自動運動
2週(本例では固定除去の前後)コッドマン体操(振り子運動)外転・外旋
固定除去後(本例2週前後/若年者3週前後)肩の自動運動を痛みのない範囲で外転+外旋の複合運動
それ以降可動域拡大 → 腱板・肩甲帯の筋力強化急な外転外旋の強制
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