学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ33P107

理由で解く 柔道整復師

QJ33P107 柔道整復理論

出典:第33回柔道整復師国家試験(2025)午後 問107
問題
59歳の女性。自宅でテレビを見ていて大きくあくびをしたところ、口を閉じることができなくなったため来所した。下顎歯列は上顎歯列の前方に偏位している。耳前方に陥凹を触れ、頬は扁平となっている。整復で誤っているのはどれか。
選択肢
1 最初の1回で整復しないと整復が困難になる。
2 ヒポクラテス法では患者の頭部を前屈させる。
3 患者に発声させないようにすると整復が容易になる。
4 ボルカース法では術者は手指消毒をして滅菌ガーゼを用いる。
解答
正解3(患者に発声させないようにすると整復が容易になる。)
解説

あくびで開口したまま閉じられず、下顎歯列が前方へ偏位、耳前方の陥凹と頬の扁平 → 顎関節の両側前方脱臼。整復では患者に発声させて咀嚼筋の緊張を緩めるのが有効なので、「発声させない」という記述が設問の答えになる。

大きく開口すると下顎頭が関節結節を越えて前方へ滑り出し、そこに咬筋・側頭筋・内側翼突筋が反射的に強く収縮して元に戻れなくなる。したがって整復の成否を分けるのは、この筋緊張をいかに抜くかである。患者に「あー」と声を出し続けてもらうと咀嚼筋が弛緩し、下顎頭を押し下げて後方へ導きやすくなる。声を出させないのはむしろ逆効果になる。ヒポクラテス法では、患者を椅子に座らせ頭部を前屈位で安定させ、術者は両母指にガーゼを巻いて下顎臼歯部(咬合面)に置き、他の4指で下顎体を包む。そのうえで下顎を下方へ圧下しながら後方へ送り、同時に頤部を挙上して整復する。整復後は開口制限の指導と包帯による支持を行い、あくびや大きな開口を数週間控えるよう伝える。

✓ 3. これが誤り(設問の答え)
患者に発声させないようにすると整復が容易になる。
実際は逆で、「あー」と発声を続けさせると咀嚼筋の緊張がゆるみ、下顎頭を圧下・後送しやすくなる。声かけと発声の誘導は、力任せにしないための重要な準備手順にあたる。
✗ 1. 正しい記述(設問の答えではない)
最初の1回で整復しないと整復が困難になる。
試行を繰り返すほど疼痛と防御性収縮が強まり、後になるほど戻りにくくなる。だからこそ体位・声かけ・手の当て方を整えてから一度で決める心構えが必要で、記述としては正しい。
✗ 2. 正しい記述(設問の答えではない)
ヒポクラテス法では患者の頭部を前屈させる。
頭部を前屈位で保持・固定することで、下顎を下方へ圧下しつつ後方へ送るという力の方向がつくりやすくなる。手技の基本として正しい。
✗ 4. 正しい記述(設問の答えではない)
ボルカース法では術者は手指消毒をして滅菌ガーゼを用いる。
口腔内に指を入れて行う手技であるため、手指消毒と滅菌ガーゼの使用は感染予防上必須で、記述として正しい。なおボルカース法は母指を臼歯後方の下顎枝前縁に当てる点が、母指を下顎臼歯部(咬合面)に置くヒポクラテス法との違いであり、ここが両手技の識別点になる。
ポイント
  • 顎関節前方脱臼の所見:開口したまま閉口不能、下顎歯列が上顎歯列より前方へ、耳前方の陥凹、頬の扁平(両側例では下顎が前突)。
  • 整復のカギは咀嚼筋の緊張を抜くこと。「あー」と発声させると弛緩が得られやすい。
  • ヒポクラテス法:頭部を前屈位で固定 → 母指を下顎臼歯部(咬合面)に置く → 下顎を圧下しつつ後送し、頤部を挙上。
  • ボルカース法:母指を臼歯後方の下顎枝前縁に当てる。母指を当てる位置がヒポクラテス法との識別点。
  • 口腔内に指を入れる手技(ヒポクラテス法・ボルカース法)では手指消毒と滅菌ガーゼが必須。
  • 試行の反復は筋緊張を強めるため、準備を整えて一度で決める。整復後は包帯支持と開口制限の指導を行う。
比較表
整復を助ける要素整復を妨げる要素
患者に発声(「あー」)を続けさせる発声させず緊張したまま行う
頭部を前屈位で安定させる頭部が固定されずぐらつく
下方へ圧下してから後方へ送るいきなり後方へ押し込む
準備を整えて一度で決める試行を何度も繰り返す
手指消毒・滅菌ガーゼで安全に行う感染対策を欠いた口腔内操作
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