学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ33P104

理由で解く 柔道整復師

QJ33P104 柔道整復理論

出典:第33回柔道整復師国家試験(2025)午後 問104
問題
72歳の女性。5日前にベッドから転落し、床で右肩を強打した。右肩外上部の腫脹と皮下出血斑に気付き来所した。右肩関節の挙上は疼痛のため困難である。後日、医科で撮影した単純エックス線写真(別冊 No. 4)を別に示す。正しいのはどれか。
図
選択肢
1 頸静脈が怒張する。
2 腋窩神経麻痺を合併する。
3 保存療法で予後は良好である。
4 烏口鎖骨靱帯の断裂を考慮する。
解答
正解4(烏口鎖骨靱帯の断裂を考慮する。)
解説

肩の外側上部を強打して腫脹・皮下出血と挙上困難を生じた高齢者の例である。鎖骨外側部の外傷では、烏口鎖骨靱帯の断裂を併せて考える必要がある。正しいのは4である。

鎖骨の外側部は、烏口突起との間を円錐靱帯と菱形靱帯(合わせて烏口鎖骨靱帯)でつなぎ留められることで安定を保っている。この靱帯が破綻すると、鎖骨側は胸鎖乳突筋に引かれて上方へ、上肢側は自重で下方へ移動するため転位が大きくなり、不安定な損傷となる。したがって「腫れと痛みだけだから保存でよい」と早々に決めず、転位の程度と靱帯損傷の有無を画像で確認したうえで方針を判断することが大切である。本問では医科で撮影された単純エックス線写真が提示されており、受傷機転と局所所見を合わせて評価する設定になっている。

✗ 1. 誤り
頸静脈が怒張する。
頸静脈怒張は右心不全や心タンポナーデ、上大静脈の閉塞など静脈還流が妨げられる病態でみられる所見であり、肩外側部の外傷で通常生じるものではない。
✗ 2. 誤り
腋窩神経麻痺を合併する。
腋窩神経麻痺が合併症として問題になるのは肩関節前方脱臼や上腕骨外科頸骨折である。疑う場合は三角筋部の感覚と外転力を確認するが、本例の肩外上部の局所所見からまず考える合併症ではない。
✗ 3. 誤り
保存療法で予後は良好である。
烏口鎖骨靱帯が破綻した不安定型では転位が残りやすく、偽関節をきたす危険がある。予後良好と決めつけず、医療機関で手術適応を含めた判断を仰ぐ姿勢が求められる。
✓ 4. 正しい
烏口鎖骨靱帯の断裂を考慮する。
鎖骨外側部の外傷では、鎖骨と烏口突起をつなぐこの靱帯が同時に損傷して不安定性を生じることがある。転位の程度と併せて評価し、必要なら医科での治療につなげる。
ポイント
  • 烏口鎖骨靱帯=円錐靱帯+菱形靱帯。鎖骨外側部を烏口突起につなぎ留めて安定させる。
  • この靱帯が切れると鎖骨側は上方へ、上肢側は下方へ転位し、不安定型となる。
  • 不安定型は偽関節の危険があり、保存療法で予後良好と即断できない。
  • 頸静脈怒張は循環の病態を示す所見で、肩外側部の外傷では通常みられない。
  • 腋窩神経麻痺は肩関節前方脱臼・上腕骨外科頸骨折で警戒する合併症。
比較表
鎖骨外側端の骨折(不安定型)肩鎖関節脱臼(上方転位型)
骨折線あり(靱帯付着部の付近)なし
烏口鎖骨靱帯断裂を伴いうる高度型で断裂する
変形近位骨片が上方へ突出鎖骨外端の上方突出(ピアノキー症状)
注意点転位が残ると偽関節不安定性の程度で治療方針が変わる
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