学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §20 臨床実地問題 / QJ33P056

理由で解く 柔道整復師

QJ33P056 外科学概論

出典:第33回柔道整復師国家試験(2025)午後 問56
問題
16歳の女子。ハチに刺された後に顔面蒼白となり意識消失した。脈拍も触知不可となった。半年前にもハチ刺傷の既往がある。緊急で投与が必要な薬剤はどれか。
選択肢
1 ドパミン
2 ドブタミン
3 アドレナリン
4 ニトログリセリン
解答
正解3(アドレナリン)
解説

ハチ刺傷の再曝露後に、顔面蒼白・意識消失・脈拍触知不能をきたしています。アナフィラキシーショックであり、緊急に投与すべき薬剤はアドレナリンです。

一度ハチに刺されると、その毒に対するIgE抗体が産生されて肥満細胞・好塩基球の表面に結合します(感作)。半年前の刺傷歴がこれにあたります。再び刺されると抗原がIgEを架橋し、ヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質が一気に放出されて、全身の血管拡張と血管透過性亢進、気管支平滑筋の収縮が起こります。血管内から血漿成分が漏出して有効循環血液量が急減するため、血圧が保てなくなり、顔面蒼白・意識消失・脈拍触知不能というショックの徴候が現れます。アドレナリンはこの病態のすべての段階に同時に作用する唯一の薬剤です。α1受容体を介して末梢血管を収縮させて血圧を上げ、粘膜浮腫を軽減して気道を確保し、β1受容体で心収縮力と心拍数を高め、β2受容体で気管支を拡張させるとともに化学伝達物質のさらなる遊離を抑えます。投与は大腿前外側部への筋肉内注射で、遅らせないことが最も重要です。現場ではまず119番通報、仰臥位で下肢を挙上して静脈還流を確保し、アドレナリン自己注射薬(エピペン)を携行していれば直ちに使用します。呼吸・脈が確認できなければ心肺蘇生とAEDを開始します。

✓ 3. 正しい
アドレナリン
アナフィラキシーの第一選択薬です。α1作用で血管収縮と昇圧・粘膜浮腫の軽減、β1作用で心機能の増強、β2作用で気管支拡張と化学伝達物質の遊離抑制と、必要な作用がすべて一剤でそろいます。大腿前外側部への筋肉内注射が基本で、投与の遅れが予後を悪化させるため、疑った時点でためらわず用います。抗ヒスタミン薬やステロイドは補助であり、初期対応の主役にはなりません。
✗ 1. 誤り
ドパミン
カテコラミンの一種で、心原性ショックや敗血症性ショックの昇圧に用いられます。アナフィラキシーでも、アドレナリン投与後になお血圧が維持できない場合の持続静注として選択肢に入ることはありますが、初期対応の第一選択ではありません。
✗ 2. 誤り
ドブタミン
β1受容体に選択的に作用して心収縮力を高める薬で、心原性ショックや急性心不全に用います。血管収縮作用に乏しく末梢血管をむしろ拡張させるため、血管拡張が主因のアナフィラキシーショックには適しません。
✗ 4. 誤り
ニトログリセリン
硝酸薬で血管を拡張させ、狭心症発作や急性心不全に用いられます。すでに血管拡張によって血圧が保てない状態にこれを投与すれば、血圧はさらに低下します。病態と作用が正反対の薬です。
ポイント
  • アナフィラキシーの機序:初回曝露でIgE感作 → 再曝露でIgE架橋 → 化学伝達物質放出 → 血管拡張・透過性亢進・気管支収縮。
  • 第一選択はアドレナリンの筋肉内注射(大腿前外側部)。投与を遅らせないことが最重要。
  • アドレナリンの作用:α1で昇圧と粘膜浮腫軽減、β1で心機能増強、β2で気管支拡張+メディエーター遊離抑制。
  • ハチ刺傷歴があることは、次回の重症化リスクを示す重要な情報。エピペンの携行が検討される。
  • 現場の行動:119番通報 → 仰臥位で下肢挙上 → エピペンがあれば使用 → 反応・呼吸がなければCPRとAED。
比較表
薬剤主な作用主な用途
アドレナリンα1+β1+β2アナフィラキシー、心停止
ドパミン用量依存的にドパミン・β1・α1心原性・敗血症性ショックの昇圧
ドブタミンβ1選択的(心収縮力↑)心原性ショック、急性心不全
ニトログリセリン血管拡張(前負荷↓)狭心症、急性心不全。ショックでは血圧をさらに下げる
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