学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §1 損傷 / QJ33P046

理由で解く 柔道整復師

QJ33P046 外科学概論

出典:第33回柔道整復師国家試験(2025)午後 問46
問題
損傷で誤っているのはどれか。
選択肢
1 開放創の洗浄には消毒液を用いる。
2 縫合した創は48時間で上皮化される。
3 Ⅲ度熱傷は皮膚全層に及ぶ損傷である。
4 熱傷範囲の診断には9の法則が用いられる。
解答
正解1(開放創の洗浄には消毒液を用いる。)
解説

開放創の初期処置は「消毒する」ではなく「洗い流す」が原則である。誤っているのは選択肢1で、洗浄には生理食塩水または飲用できる水道水を用いる。

消毒液(ポビドンヨードなど)は細菌を殺す一方で、創面の線維芽細胞・角化細胞や、感染防御のために遊走してきた白血球まで傷害してしまう。そのため上皮化と肉芽形成が遅れ、かえって治りにくい創になる。さらに消毒液は血液や滲出液に触れると失活しやすく、創面での殺菌効果は長続きしない。創感染を左右する最大の要因は、実は消毒の有無ではなく、創内に残った異物・壊死組織・血腫の量である。これらは十分な量の洗浄液で物理的に洗い流すのが最も確実で、消毒液は創周囲の健常皮膚・手術野・術者の手指といった「無傷の皮膚」に用途を限定する。なお柔道整復師が行えるのは応急手当としての洗浄・圧迫止血・被覆までであり、創の縫合や壊死組織の除去(デブリードマン)は外科手術にあたって業務範囲外である(柔道整復師法第16条)。開放創を扱ったら速やかに医療機関へ引き継ぐことを前提に読み進めたい。残る3肢は創傷治癒と熱傷の基本事項として正しい記述である。

✓ 1. これが誤り(正答)
開放創の洗浄には消毒液を用いる。
開放創の洗浄液の第一選択は生理食塩水、または飲用可能な水道水である。消毒液は殺菌力とともに細胞毒性をもち、創傷治癒に働く細胞を傷つけて上皮化を遅らせる。創処置の原則は「十分な量の洗浄液で、ある程度の水圧をかけて創内を洗い流し、異物と汚染を減らす」ことにあり、消毒液は創周囲の健常皮膚に対して用いる。洗浄で細菌数と異物を減らすことこそが感染予防の本体であり、この点で本肢は設問の求める「誤っているもの」に当たる。ただし柔道整復の現場では、洗浄と圧迫止血・被覆までを応急手当として行い、創の縫合・デブリードマン(壊死組織の除去)・破傷風予防は医師の処置であるから、速やかに医療機関へつなぐ。
✗ 2. 正しい(答えではない)
縫合した創は48時間で上皮化される。
創縁をきれいに合わせて縫合した創は一次治癒をたどる。創縁の基底層にある角化細胞が創面を滑るように移動し、24〜48時間で表皮の連続性が回復して細菌の侵入を防ぐバリアが完成する。術後48時間を過ぎれば被覆材を外してシャワー浴が許容されるのは、この上皮化の完了が根拠である。記述として正しいので、答えではない。
✗ 3. 正しい(答えではない)
Ⅲ度熱傷は皮膚全層に及ぶ損傷である。
III度熱傷は全層熱傷(DB)と呼ばれ、表皮と真皮の全層、ときに皮下組織まで障害が及ぶ。創面は白色〜褐色や炭化した外観で羊皮紙様に乾燥し、知覚神経終末も破壊されるため痛みを感じないのが特徴である。毛包や汗腺といった上皮の供給源が残らないので自然な上皮化は期待できず、デブリードマンと植皮が治療の柱になる(いずれも医師が行う処置である)。記述として正しいので、答えではない。
✗ 4. 正しい(答えではない)
熱傷範囲の診断には9の法則が用いられる。
成人の熱傷面積は、体表を9%またはその倍数に区分するWallaceの9の法則で概算する(頭頸部9%、上肢各9%、体幹前面18%・後面18%、下肢各18%、陰部1%)。頭部が相対的に大きく下肢が小さい小児では誤差が出るため、5の法則やLund-Browderの表を用いる。点在する小範囲の熱傷には、患者本人の手掌と指を約1%とみなす手掌法が便利である。記述として正しいので、答えではない。
ポイント
  • 開放創の洗浄液は生理食塩水または飲用可能な水道水。消毒液は創周囲の健常皮膚・術野に用途を限定する。
  • 消毒液は細菌だけでなく線維芽細胞・角化細胞・白血球も傷害し、血液や滲出液で失活しやすい。「消毒より洗浄」と覚える。
  • 柔道整復師の応急手当は洗浄・圧迫止血・被覆まで。縫合・デブリードマン・破傷風予防は医師の処置(外科手術は業務範囲外)であり、速やかに医療機関へ引き継ぐ。
  • 縫合創(一次治癒)は24〜48時間で上皮化が完了し、細菌に対するバリアが戻る。48時間後のシャワー可はここが根拠。
  • III度=皮膚全層。白色〜褐色で乾燥し、無痛。上皮の供給源が失われるため自然上皮化せず植皮が必要。
  • 面積評価は成人=9の法則、小児=5の法則やLund-Browderの表、点在例=手掌法(約1%)。
比較表
深度障害の及ぶ層外見疼痛治癒経過
I度(EB)表皮まで発赤・浮腫、水疱なしあり(ヒリヒリ)数日で治り、瘢痕を残さない
浅達性II度(SDB)真皮浅層水疱あり、水疱底は赤色強い1〜2週、瘢痕を残しにくい
深達性II度(DDB)真皮深層水疱あり、水疱底は白色鈍い(知覚低下)3〜4週、瘢痕・拘縮を残しやすい
III度(DB)皮膚全層〜皮下組織白色〜褐色・炭化、羊皮紙様に乾燥なし(無痛)自然上皮化せず、植皮が必要
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