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理由で解く 柔道整復師

QJ32P047 外科学概論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問47
問題
熱傷で誤っているのはどれか。
選択肢
1 熱傷とは熱による皮膚・粘膜の損傷である。
2 成人の熱傷面積の概算には「5の法則」を用いる。
3 熱傷は皮膚損傷の深度によってⅠ~Ⅲ度に分類される。
4 広範囲熱傷患者のストレス潰瘍をカーリング(Curling)潰瘍という。
解答
正解2(成人の熱傷面積の概算には「5の法則」を用いる。)
解説

成人の熱傷面積の概算に用いる標準は「9の法則」(Wallace)です。「5の法則」は主に小児(乳幼児)で用いられる簡便法ですから、成人に5の法則を当てる記述は誤りで、答えは2です。

熱傷面積は輸液量の算定と重症度判定を左右するため、まず素早く概算する必要があります。成人ではWallaceの9の法則を用い、頭頸部9%、上肢は各9%、体幹は前面18%・後面18%、下肢は各18%、陰部1%と、9の倍数で体表面積を割り振ります。ところが小児、とくに乳幼児は頭部が相対的に大きく下肢が短いため、この配分では頭部を過小に、下肢を過大に見積もってしまいます。そこで小児では、5の倍数で配分する「5の法則」が用いられます。5の法則の配分は年齢で変わり、乳児(1歳未満)では頭部・体幹前面・体幹後面がそれぞれ20%、上肢・下肢が各10%、幼児では頭部15%・両下肢計25%というように補正されます。年齢差をより精密に反映させたいときは、年齢ごとに各部位の比率を定めたLund-Browderの図表を用います。狭い範囲や飛び飛びの熱傷では、患者本人の手掌(指を含めて)を約1%とする手掌法が実用的です。面積の見積もりは深度の評価(Ⅰ度〜Ⅲ度)と組み合わせ、Burn Index(Ⅲ度面積%+Ⅱ度面積%×1/2)やArtzの基準で重症度を判断する流れにつなげます。

✗ 1. 正しい記述(答えではない)
熱傷とは熱による皮膚・粘膜の損傷である。
火炎・高温の液体や固体・蒸気などの熱エネルギーによって生じる皮膚および粘膜の損傷を熱傷といいます。粘膜が含まれる点が重要で、熱風や蒸気の吸入による気道粘膜の熱傷(気道熱傷)も熱傷の範疇に入ります。
✓ 2. これが誤り(正答)
成人の熱傷面積の概算には「5の法則」を用いる。
成人の熱傷面積の概算に用いる標準はWallaceの「9の法則」です。「5の法則」は主に小児(乳幼児)で用いられる簡便法ですから、成人に5の法則を当てるこの記述は誤りになります。実際の現場では、成人は9の法則、小児(乳幼児)は5の法則、年齢差を精密に補正したいときはLund-Browder図表、狭い範囲は手掌法(約1%)と使い分けます。
✗ 3. 正しい記述(答えではない)
熱傷は皮膚損傷の深度によってⅠ~Ⅲ度に分類される。
障害が及ぶ深さでⅠ度(表皮まで。発赤と疼痛のみで瘢痕を残さない)、Ⅱ度(真皮まで。水疱を伴い、浅達性と深達性に細分される)、Ⅲ度(皮膚全層。白色〜褐色の羊皮紙様で知覚が失われ無痛となる)に分けます。深度は水疱底の色調や知覚の有無で推定します。
✗ 4. 正しい記述(答えではない)
広範囲熱傷患者のストレス潰瘍をカーリング(Curling)潰瘍という。
広範囲熱傷では強い侵襲によって胃・十二指腸粘膜の血流低下と防御機構の破綻が起こり、急性の消化性潰瘍を生じます。これをCurling潰瘍と呼びます。頭部外傷や脳血管障害など中枢神経系の病変に伴うストレス潰瘍はCushing潰瘍で、原因疾患によって区別します。
ポイント
  • 面積の概算は対象で使い分ける。成人=9の法則(Wallace)、小児(乳幼児)=5の法則、年齢補正の精密版=Lund-Browder図表、狭い範囲=手掌法(患者の手掌が約1%)。
  • 9の法則の配分:頭頸部9%、上肢各9%、体幹前面18%・後面18%、下肢各18%、陰部1%。
  • 5の法則の配分は年齢で変わる。乳児(1歳未満)=頭部20%・体幹前面20%・体幹後面20%・上肢各10%・下肢各10%、幼児=頭部15%・両下肢計25%。数値は必ず「どの年齢の列か」とセットで覚える。
  • 深度分類:Ⅰ度=表皮(発赤・疼痛、瘢痕なし)、浅達性Ⅱ度=真皮浅層(水疱底が赤く強い痛み)、深達性Ⅱ度=真皮深層(水疱底が白く知覚鈍麻、瘢痕を残す)、Ⅲ度=皮膚全層(白色〜褐色、無痛)。
  • 重症度は面積と深度を合わせて評価する。Burn Index=Ⅲ度面積%+Ⅱ度面積%×1/2、Artzの基準で入院・転送の要否を判断する。
  • ストレス潰瘍は原因で名前が変わる。熱傷ならCurling潰瘍、中枢神経病変ならCushing潰瘍。
  • 顔面の熱傷・鼻毛の焼失・煤を含む喀痰・嗄声があれば気道熱傷を疑い、腫脹が進む前の気道確保を検討する。
比較表
算定法主な対象配分の考え方特徴
9の法則(Wallace)成人頭頸部9%/上肢各9%/体幹前面18%・後面18%/下肢各18%/陰部1%暗算しやすく現場向き。成人の概算の標準
5の法則(乳児の配分)小児(乳幼児)頭部20%・体幹前面20%・体幹後面20%・上肢各10%・下肢各10%頭部が大きい体型に合わせた簡便法。幼児では頭部15%・両下肢計25%と配分が変わる
Lund-Browder図表小児〜成人(年齢別)年齢ごとに各部位の比率を補正最も正確だが図表が必要
手掌法年齢を問わない患者本人の手掌(指を含む)=約1%狭い範囲や散在する熱傷の概算に便利
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