学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ32P119

理由で解く 柔道整復師

QJ32P119 柔道整復理論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問119
問題
39歳の男性。マラソンが趣味である。左大腿の筋肉痛で、図に示す締め付け圧が調整できるサポーターを装着して練習をしていた。強く締めたほうが効果があると感じ、できるだけ強めに締めていたところ、膝内側の疼痛と下腿内側の違和感が生じてきた。考えられるのはどれか。
図
選択肢
1 滑膜ヒダ障害
2 膝蓋軟骨軟化症
3 内側半月板損傷
4 ハンター管症候群
解答
正解4(ハンター管症候群)
解説

大腿遠位内側を締め付けるサポーターを強めに装着した後に、膝内側と下腿内側という一続きの領域に症状が出ています。内転筋管(ハンター管)で伏在神経が外部から圧迫された、ハンター管症候群として考えるのが妥当です。

伏在神経は大腿神経から分かれる純粋な知覚枝で、大腿の内側を下り、縫工筋・内転筋群・内側広筋に囲まれた内転筋管(ハンター管)を通ります。ここは筋膜性のトンネルで、体表からの圧迫が伝わりやすい場所です。伏在神経は管を出たあと膝蓋下枝と内側下腿皮枝に分かれ、膝の内側から前面、さらに下腿内側から足の内側縁までの皮膚感覚を担当します。したがってこの神経が絞扼されると、膝内側の疼痛と下腿内側のしびれ・違和感という、本例そのままの症状分布になります。知覚枝なので筋力低下は生じません。誘因は、きついサポーター・ガードル・長時間の圧迫といった外部からの持続圧で、本例のように「強く締めたほうが効く」と考えて締め込むことが典型的なきっかけになります。対応はまず圧迫源を取り除くこと、すなわちサポーターの締め付けを適正な圧に緩めるか装着を中止することです。多くはそれで軽快しますが、症状が続く場合や筋力低下を伴う場合は医師の診察を勧めます。装具は「強く締めるほど効く」ものではないという点を、本人に納得できる形で伝えることが再発予防になります。

✓ 4. 正しい
ハンター管症候群
大腿遠位内側にある内転筋管(ハンター管)で伏在神経が外部から圧迫されて生じます。伏在神経の支配領域である膝内側と下腿内側にちょうど症状が出ていること、締め付けという明確な圧迫の誘因があること、知覚症状が主体で筋力低下がないことのすべてが一致します。まずサポーターの締め付けを緩める、または外すという対応が第一です。
✗ 1. 誤り
滑膜ヒダ障害
膝蓋骨内側の滑膜ヒダ(タナ)が大腿骨内顆と擦れて生じる関節内の障害で、屈伸時のクリック音や引っかかり感が特徴です。膝内側の痛みは説明できても、下腿内側の違和感という神経の走行に沿った知覚症状は説明できません。また外部からの締め付けが直接の誘因になる病態でもありません。
✗ 2. 誤り
膝蓋軟骨軟化症
膝蓋大腿関節の軟骨が傷む病態で、痛みは膝の前面(膝蓋骨の周囲・奥)に出ます。階段昇降やしゃがみ込み、長時間の座位で増悪し、膝蓋骨を圧迫しながら動かすと疼痛が誘発されます。本例の膝内側から下腿内側へ連なる分布とは部位が異なります。
✗ 3. 誤り
内側半月板損傷
荷重下での膝の回旋という明確な受傷機転で生じることが多く、内側関節裂隙に限局した圧痛、ロッキングやキャッチング、マックマレーテスト陽性などが手がかりになります。半月板は関節内の構造なので、下腿内側の皮膚の違和感といった知覚症状は生じません。
ポイント
  • 伏在神経は大腿神経由来の純粋な知覚枝。運動麻痺は起こさず、症状は痛み・しびれのみ。
  • 内転筋管(ハンター管)は縫工筋・内転筋群・内側広筋に囲まれた大腿遠位内側のトンネル。体表からの圧が伝わりやすい。
  • 伏在神経の支配域は膝内側〜前面(膝蓋下枝)と下腿内側〜足の内側縁(内側下腿皮枝)。症状分布がそのまま診断の手がかり。
  • 誘因は持続的な外部圧迫(きついサポーター、ガードル、ベルト)。まず圧迫源を外すことが治療の第一歩。
  • 「強く締めるほど効く」という誤解を解き、適正な圧での装着方法を一緒に確認する。
比較表
候補痛みの部位症状の性質誘因・誘発
ハンター管症候群膝内側〜下腿内側知覚症状(痛み・しびれ)大腿遠位内側の持続圧迫
滑膜ヒダ障害膝蓋骨内側クリック・引っかかり膝の反復屈伸
膝蓋軟骨軟化症膝前面鈍痛階段昇降、しゃがみ込み
内側半月板損傷内側関節裂隙ロッキング・キャッチング荷重下の膝回旋
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