学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ32P107

理由で解く 柔道整復師

QJ32P107 柔道整復理論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問107
問題
6歳の男児。自転車の練習中に転倒し、右肘関節伸展位で手掌部を衝き受傷した。肘関節部に激しい痛みがあり来所した。肘関節部が後方に突出し前腕が短縮してみえる。ヒューター三角に乱れはない。この損傷の後遺症で起こりにくいのはどれか。
選択肢
1 肘関節屈曲障害
2 外反肘変形
3 阻血性拘縮
4 骨化性筋炎
解答
正解2(外反肘変形)
解説

6歳男児が肘伸展位で手掌を衝いて受傷し、肘が後方に突出して前腕が短縮してみえるが、ヒューター三角に乱れはない。伸展型の上腕骨顆上骨折であり、その後遺症として起こりにくいのは外反肘変形である(顆上骨折で問題になるのは内反肘)。

上腕骨顆上骨折は学童期に最も多い肘の骨折で、伸展型が大多数を占める。遠位骨片が後方に転位するため肘頭部が後方に突出し、外観は肘関節後方脱臼とよく似る。両者を分けるのがヒューター三角(内側上顆・外側上顆・肘頭がつくる三角)で、顆上骨折は骨折線が三点より近位を通るため三角の位置関係は保たれ、後方脱臼では乱れる。本例は三角が保たれているので顆上骨折と判断できる。後遺症で最も多いのが内反肘(銃床変形)で、遠位骨片の内方転位・内旋・尺側傾斜が残ることによって生じ、自然矯正されにくい。一方、最も緊急性が高いのはフォルクマン拘縮で、近位骨片の前方尖端が上腕動脈や正中神経を圧迫することが引き金になる。整復後も、疼痛・蒼白・感覚異常・運動麻痺・脈拍消失(5P)と、手指を他動的に伸展したときの前腕の激痛を繰り返し確認し、疑わしければ直ちに固定を緩めて医師に連絡する。

✓ 2. これが正答(後遺症として起こりにくい)
外反肘変形
顆上骨折で遺残しやすいのは遠位骨片の内方転位・内旋・尺側傾斜に由来する内反肘であり、外反肘はむしろ上腕骨外顆骨折の遷延治癒・偽関節・変形治癒で生じる変形である。外反肘では長期経過のうちに遅発性尺骨神経麻痺を来すことがあるが、本例の顆上骨折から予測される後遺症としては起こりにくく、これが答えとなる。
✗ 1. 後遺症として起こりうる(答えではない)
肘関節屈曲障害
肘関節は外傷後に拘縮を来しやすい関節で、顆上骨折後にも関節周囲の癒着や骨化性筋炎により屈曲・伸展の可動域制限が残ることがある。長期固定や不適切な後療法は制限を助長するため、骨癒合の状況に応じて疼痛のない範囲の自動運動を早期から進めることが望ましい。起こりうる後遺症なので答えにはならない。
✗ 3. 後遺症として起こりうる(答えではない)
阻血性拘縮
伸展型顆上骨折では近位骨片の鋭い前方尖端が上腕動脈・正中神経を圧迫し、前腕屈筋群のコンパートメント内圧上昇からフォルクマン拘縮(阻血性拘縮)に至ることがある。この骨折で最も警戒すべき合併症であり、答えにはならない。5Pと他動的手指伸展時痛を繰り返し確認し、異常があれば直ちに固定を緩め医師へ連絡する。
✗ 4. 後遺症として起こりうる(答えではない)
骨化性筋炎
肘関節周囲は骨化性筋炎の好発部位で、顆上骨折や肘関節脱臼のあとに生じやすい。骨折部周囲の血腫が器質化して異所性に骨化するもので、強引な他動運動や患部のマッサージが誘因となる。後療法は疼痛を伴わない自動運動を中心に進めるのが安全で、起こりうる後遺症であるため答えにはならない。
ポイント
  • 学童の肘伸展位・手掌衝きは上腕骨顆上骨折(伸展型)の典型的な受傷機転。肘頭が後方に突出し、前腕が短縮してみえる。
  • 肘関節後方脱臼との鑑別はヒューター三角。顆上骨折では保たれ、後方脱臼では乱れる。
  • 顆上骨折の代表的な変形後遺症は内反肘(銃床変形)。外反肘は上腕骨外顆骨折の偽関節・変形治癒で生じ、遅発性尺骨神経麻痺の原因となる。
  • 最も緊急性が高いのはフォルクマン拘縮。5P(疼痛・蒼白・感覚異常・運動麻痺・脈拍消失)と他動的手指伸展時痛を繰り返し確認する。
  • 骨化性筋炎を避けるため、後療法は疼痛のない範囲の自動運動を中心に組み立てる。
比較表
変形代表的な原因骨折生じる機序関連する続発症
内反肘(銃床変形)上腕骨顆上骨折遠位骨片の内方転位・内旋・尺側傾斜の遺残整容上の問題、後外側回旋不安定性
外反肘上腕骨外顆骨折偽関節・遷延治癒・変形治癒による外側支持性の低下遅発性尺骨神経麻痺
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