学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ32P108

理由で解く 柔道整復師

QJ32P108 柔道整復理論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問108
問題
58歳の男性。歩道の溝につまずき転倒し、前腕回内位で肘関節外反強制された。肘関節外側部の腫脹と圧痛がみられ、前腕回外運動で疼痛が増強する。この損傷で正しいのはどれか。
選択肢
1 肘は内反位をとる。
2 肘関節前方脱臼を合併しやすい。
3 解剖学的整復が必要である。
4 前腕中間位で固定する。
解答
正解3(解剖学的整復が必要である。)
解説

前腕回内位での肘外反強制、肘関節外側部の腫脹・圧痛、前腕回外で疼痛増強という組み合わせは、橈骨頭(頸部)骨折の典型像です。橈骨頭は関節内の骨なので、整復は解剖学的整復が目標になります。

肘を外反させると、外側では上腕骨小頭と橈骨頭が互いに押し付け合います。とくに前腕回内位では橈骨頭の一部だけが小頭に強く当たるため、その部位に応力が集中して骨折します。橈骨頭は腕橈関節と近位橈尺関節の両方を構成する「関節内の骨」で、前腕を回外させると骨折した関節面が小頭と尺骨の橈骨切痕の上を回るため疼痛が増強します。関節面にわずかでも段差が残ると回内外の可動域制限と早期の変形性関節症につながるので、整復目標は解剖学的整復です。徒手整復で整復位が得られない・保持できない例や転位の大きい例は、速やかに医師の診察につなぎます。

✓ 3. 正しい
解剖学的整復が必要である。
橈骨頭骨折は関節内骨折です。関節面の段差はそのまま前腕回旋の制限と関節症性変化に直結するため、「機能さえ戻ればよい」機能的整復では不十分で、関節面を段差なく戻す解剖学的整復を目標にします。転位が大きい場合は観血的療法の適応となるため、医師と連携して判断します。
✗ 1. 誤り
肘は内反位をとる。
本症例は受傷当日の急性の橈骨頭骨折であり、この時期に肘が内反位をとることはありません。内反肘は、小児の上腕骨顆上骨折などが変形治癒したあとに残る遅発性の変形であって、受傷直後に現れる肢位ではないからです。なお橈骨頭は肘の外反に抵抗する外側の支柱にあたるため、橈骨頭を切除したあとや、小児の橈骨頸部骨折で成長障害を残した場合には、時間を経て外反肘・外反不安定性を生じることがあります。ただしこれも条件付き・遅発性の変化であり、急性期の本症例に現れる所見ではありません。
✗ 2. 誤り
肘関節前方脱臼を合併しやすい。
肘関節脱臼は後方脱臼が大多数で、橈骨頭骨折に合併するのも後方脱臼です(鉤状突起骨折を伴うものは重症型として知られます)。前方脱臼はまれで、「合併しやすい」とはいえません。脱臼を疑う所見(弾発性固定、肘頭の後方突出、三角関係の乱れ)があれば早急に医師へつなぎます。
✗ 4. 誤り
前腕中間位で固定する。
前腕を回内回外中間位に置く固定が原則として語られるのは前腕骨骨幹部の骨折です。たとえばガレアッチ骨折(橈骨骨幹部遠位1/3骨折に遠位橈尺関節脱臼を合併したもの)の固定肢位は、肘関節直角位・前腕回内回外中間位とされます。本症例は関節内骨折である橈骨頭骨折で損傷の性質が異なるため、この原則は当てはまりません。肘関節は約90度屈曲位に保って固定します(肘関節を伸展位で固定するのはモンテギア骨折屈曲型であって、橈骨頭骨折ではありません)。
ポイント
  • 前腕回内位+肘外反強制=上腕骨小頭が橈骨頭に食い込む機序。橈骨頭・頸部骨折をまず考える。
  • 前腕回外で痛みが増す=腕橈関節・近位橈尺関節の関節内病変を示すサイン。
  • 関節内骨折は解剖学的整復が原則。関節面の段差は回旋制限と変形性関節症に直結する。
  • 急性期の橈骨頭骨折は内反位も外反位もとらない。内反肘は小児の上腕骨顆上骨折が変形治癒した後の遅発性変形、外反肘・外反不安定性は橈骨頭切除後や小児の成長障害後の遅発性変化。
  • 前腕回内回外中間位固定は前腕骨骨幹部骨折(ガレアッチ骨折=肘直角位・前腕中間位)の話。関節内骨折の本症例には当てはまらず、肘は約90度屈曲位で固定する。転位が大きい・整復位が保てない場合は医師へ。
比較表
関節内骨折(例:橈骨頭骨折)関節外骨折(例:上腕骨骨幹部骨折)
整復の目標解剖学的整復(関節面に段差を残さない)機能的整復でも許容されうる
変形が残ったとき可動域制限・変形性関節症に直結ある程度は機能で代償されうる
方針整復位が保てなければ観血的療法を検討(医師へ)保存療法が中心
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