学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §22 各論(軟部組織損傷) 上肢 / QJ32P100

理由で解く 柔道整復師

QJ32P100 柔道整復理論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問100
問題
表に示す徒手筋力検査(MMT)の結果から考えられる神経絞扼部位はどれか。
図
選択肢
1 回外筋腱弓
2 四辺形間隙
3 ストラザーズ腱弓
4 上腕骨橈骨神経溝
解答
正解1(回外筋腱弓)
解説

表で正常(5)なのは長橈側手根伸筋だけで、尺側手根伸筋・総指伸筋・小指伸筋が1、長母指伸筋・示指伸筋が0。麻痺が後骨間神経(橈骨神経深枝)支配筋にきれいに限局しており、絞扼部位は回外筋腱弓(フローゼ腱弓)である。答えは1。

橈骨神経は上腕骨後面の橈骨神経溝を通って前外側へ回り込み、肘の前方で浅枝(知覚枝)と深枝(後骨間神経)に分かれる。深枝は回外筋の浅頭と深頭の間へ入り、その入口にある腱性のアーチ=フローゼ腱弓(回外筋腱弓)をくぐるため、ここで絞扼を受けやすい(回外筋症候群)。MMTの表は、保たれている筋と落ちている筋の「境目」を探し、その境目のすぐ近位を絞扼部位と考えるのが解法の型である。本問では、深枝が分かれる前に本幹から枝を受ける長橈側手根伸筋だけが5と正常のまま残り、後骨間神経が支配する尺側手根伸筋・総指伸筋・小指伸筋(いずれも1)と長母指伸筋・示指伸筋(いずれも0)がそろって脱落している。境目は「橈骨神経本幹の枝」と「後骨間神経の枝」の間にあり、その高さがまさに回外筋腱弓である。なお部位を決めるのは残った筋と落ちた筋の境目であって、1と0という段階差ではない(一か所の絞扼で枝の分岐順が決めるのは、麻痺がどこまで及ぶかである)。臨床像はMP関節を伸展できない下垂指で、長橈側手根伸筋が残るため手関節の背屈自体は可能だが、尺側手根伸筋が働かないので背屈すると橈側へ偏位する。深枝は純粋な運動枝であり感覚障害を伴わないことも、鑑別の決め手になる。

✓ 1. 正しい
回外筋腱弓
表の6筋のうち、後骨間神経支配である尺側手根伸筋・総指伸筋・小指伸筋(いずれも1)と長母指伸筋・示指伸筋(いずれも0)がそろって脱落し、本幹支配の長橈側手根伸筋だけが5で温存されている。選択肢の中で、この分布を一か所の絞扼で説明できるのは、深枝が回外筋へ入る入口=回外筋腱弓(フローゼ腱弓)だけである。後骨間神経は運動枝のみなので、この部位の絞扼では感覚障害を伴わないことも特徴である。
✗ 2. 誤り
四辺形間隙
小円筋・大円筋・上腕三頭筋長頭・上腕骨で囲まれる間隙で、通過するのは腋窩神経。絞扼されると三角筋・小円筋の筋力低下(肩外転・外旋の低下)と肩外側の感覚障害が出る。表に並ぶ6筋はいずれも前腕の伸筋群で腋窩神経支配ではなく、この所見をまったく説明できない。
✗ 3. 誤り
ストラザーズ腱弓
上腕遠位内側で内側筋間中隔にかかる腱膜性の構造で、絞扼されるのは尺骨神経。低下するのは尺側手根屈筋、深指屈筋の尺側半、骨間筋・虫様筋などの手内在筋で、小指側の感覚障害を伴う。表にある「尺側手根伸筋」は名前が似ているが橈骨神経(後骨間神経)支配であり、尺骨神経支配の「尺側手根屈筋」と取り違えないこと。
✗ 4. 誤り
上腕骨橈骨神経溝
橈骨神経本幹が障害される部位で、腕橈骨筋や長・短橈側手根伸筋まで麻痺するため手関節を背屈できない下垂手となり、手背橈側の感覚障害も加わる。表では長橈側手根伸筋が5と正常なので、それより近位にあるこの部位は否定される。
ポイント
  • 表の読み方=保たれた筋(長橈側手根伸筋5)と落ちた筋(尺側手根伸筋・総指伸筋・小指伸筋1/長母指伸筋・示指伸筋0)の境目を探し、その境目のすぐ近位を絞扼部位とみる。決め手は麻痺の程度差ではなく境目の位置。
  • 長橈側手根伸筋は深枝が分かれるより近位で本幹から枝を受ける。ここが5で温存されている時点で橈骨神経溝部(本幹)の障害は否定される。
  • 後骨間神経(橈骨神経深枝)はフローゼ腱弓=回外筋腱弓で絞扼される(回外筋症候群)。
  • 臨床像は下垂指=MP関節を伸展できない。手関節背屈は可能だが、尺側手根伸筋が働かないため橈側へ偏位する。
  • 深枝は運動枝のみなので感覚障害を伴わない。橈骨神経溝部麻痺(下垂手+手背橈側の感覚障害)との決定的な違い。
  • 四辺形間隙=腋窩神経/ストラザーズ腱弓=尺骨神経。尺側手根「伸」筋は橈骨神経支配、尺側手根「屈」筋が尺骨神経支配で、名称が紛らわしいので注意。
比較表
被検筋(表の順)支配本問のMMT読み取り
長橈側手根伸筋橈骨神経本幹(深枝分岐より近位)5温存=障害は分岐より遠位
尺側手根伸筋後骨間神経(橈骨神経深枝)1低下=背屈すると橈側偏位
総指伸筋後骨間神経(橈骨神経深枝)1低下=下垂指
小指伸筋後骨間神経(橈骨神経深枝)1低下
長母指伸筋後骨間神経(橈骨神経深枝)0消失
示指伸筋後骨間神経(橈骨神経深枝)0消失
絞扼部位通る神経筋力低下感覚障害本問の表との整合
回外筋腱弓(フローゼ腱弓)後骨間神経(橈骨神経深枝)手指伸展(下垂指)。手関節背屈は保たれるなし合致(長橈側手根伸筋5+他は0〜1)
上腕骨橈骨神経溝橈骨神経本幹手関節背屈も不能(下垂手)、腕橈骨筋も低下手背橈側否定(長橈側手根伸筋が5)
四辺形間隙腋窩神経三角筋・小円筋(肩外転・外旋)肩外側無関係(表は前腕伸筋群)
ストラザーズ腱弓尺骨神経手内在筋、尺側手根屈筋、深指屈筋尺側半小指側無関係(尺側手根「伸」筋は橈骨神経支配)
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