学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §20 各論(脱臼) 下肢 / QJ32P093

理由で解く 柔道整復師

QJ32P093 柔道整復理論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問93
問題
外傷性膝関節前方脱臼で正しいのはどれか。
選択肢
1 大腿骨が前方に脱臼する。
2 ダッシュボード損傷が多い。
3 膝窩動脈損傷に注意する。
4 前方関節包が損傷する。
解答
正解3(膝窩動脈損傷に注意する。)
解説

膝関節前方脱臼は過伸展で起こり、膝窩動脈が引き伸ばされて損傷しやすい。答えは3。

脱臼名は大腿骨に対する脛骨(遠位骨)の転位方向で呼ぶ約束なので、前方脱臼とは脛骨が前方へずれることをいう。前方脱臼は膝の過伸展強制で生じ、伸展位で最も緊張する後方関節包と後十字靱帯を中心とした支持機構が破綻する。膝窩動脈は大腿骨と脛骨の後面に固定された状態で走るため、脛骨が前方へずれると後方で強く牽引され、内膜損傷から血栓閉塞、あるいは断裂に至ることがある。総腓骨神経麻痺の合併も多く、発見が遅れれば下肢の阻血や機能喪失につながる。

✓ 3. 正しい
膝窩動脈損傷に注意する。
過伸展により膝窩動脈が牽引されて損傷しやすい。足背動脈・後脛骨動脈の拍動、足の色調・温度、足関節背屈と足背の感覚を直ちに確認し、緊急に医療機関へ搬送する。
✗ 1. 誤り
大腿骨が前方に脱臼する。
脱臼名は遠位骨の転位方向で決まるため、前方脱臼では脛骨が前方へ転位する。主語を取り違えないことが基本。
✗ 2. 誤り
ダッシュボード損傷が多い。
屈曲位の膝の脛骨粗面部に前方から力が加わるダッシュボード損傷は、脛骨が後方へ押し込まれる後方脱臼(および股関節後方脱臼)の代表的機序。前方脱臼は過伸展強制で起こる。
✗ 4. 誤り
前方関節包が損傷する。
膝前方脱臼は過伸展強制で起こるため、伸展で最も引き伸ばされる後方関節包と後十字靱帯が破綻する。「受傷肢位でどこが引き伸ばされるか」で考えるのが正しい筋道である。骨頭が抜ける側の関節包が破れる肩関節前方脱臼(問89)や股関節後方脱臼(問92)とは考え方が違うので、機序ごとに切り分ける。
ポイント
  • 膝関節脱臼は脛骨の転位方向で命名する。前方脱臼=脛骨が前方。
  • 前方脱臼の機序は過伸展強制、後方脱臼はダッシュボード損傷。
  • 前方脱臼で破綻するのは後方の支持機構(後方関節包・後十字靱帯)。理由は「過伸展で後方が引き伸ばされるから」であり、「転位方向の反対側が破れる」という一般則ではない(肩前方脱臼・股後方脱臼では転位した側の関節包が破れる)。
  • 最大の危険は膝窩動脈損傷と総腓骨神経麻痺。末梢の拍動・色調・温度と足関節背屈・足背の感覚を必ず評価する。
  • 自然整復されていても脱臼が起きた事実は変わらない。血管損傷は遅れて症状が出ることがあるため、疑った時点で必ず医療機関へつなぐ。
比較表
項目前方脱臼後方脱臼
脛骨の転位前方後方
機序過伸展強制ダッシュボード損傷(屈曲位の脛骨粗面部への前方からの力)
主に破れる部位後方関節包・後十字靱帯(過伸展で引き伸ばされる側)後十字靱帯・後方関節包(直接押し込み)
血管損傷いずれも膝窩動脈損傷に注意。前方脱臼は牽引による損傷が問題
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