学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §16 各論(骨折) 上肢 / QJ32P080

理由で解く 柔道整復師

QJ32P080 柔道整復理論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問80
問題
ベネット(Bennett)骨折で正しいのはどれか。
選択肢
1 T字状の骨片骨折をいう。
2 固定保持は容易である。
3 母指は内転屈曲位となる。
4 近位骨片は長母指外転筋によって転位する。
解答
正解3(母指は内転屈曲位となる。)
解説

ベネット骨折では、母指内転筋や長母指屈筋などの牽引によって母指が内転・屈曲位をとり、第1手根中手関節部が背橈側に膨隆する。よって3が正しい。

ベネット骨折は第1中手骨基部の関節内骨折で、掌尺側に三角形の小骨片を残し、中手骨本体が橈背側・近位へずれる脱臼骨折である。小骨片は前斜靱帯(掌側の強い靱帯)で大菱形骨につなぎ留められるためほとんど動かず、転位するのは中手骨本体のほう。この本体を近位・橈側へ引くのが長母指外転筋で、さらに母指内転筋や長母指屈筋が母指を内転・屈曲方向へ引き込む。牽引・外転して整復すること自体は難しくないが、手を離すと同じ筋がまた引くため整復位の保持が難しく、経皮ピンニングなど観血的処置が選択されることが多い。整復位が保てないまま関節面に段差が残れば、母指の対立動作の障害と変形性関節症につながるので、変形と関節内骨折を疑った時点で整形外科へ紹介する判断が重要になる。

✓ 3. 正しい
母指は内転屈曲位となる。
母指内転筋・長母指屈筋などの牽引で母指は内転・屈曲位をとり、同時に第1手根中手関節部が背橈側へ突出して膨隆する。母指の対立・外転が痛みで行えず、つまみ動作が障害されるのも特徴。
✗ 1. 誤り
T字状の骨片骨折をいう。
ベネット骨折の骨片は掌尺側の三角形の小片。T字・Y字状に第1中手骨基部が関節内で割れるものはロランド(Rolando)骨折と呼ばれ、粉砕を伴い予後はより不良となる。
✗ 2. 誤り
固定保持は容易である。
牽引と外転で整復は得られやすいが、長母指外転筋が絶えず中手骨を引くため保持が難しく、再転位しやすい。外固定のみで管理する場合も短い間隔で再確認し、ずれが出れば早めに医師の対応につなぐ。
✗ 4. 誤り
近位骨片は長母指外転筋によって転位する。
長母指外転筋が引くのは第1中手骨本体、すなわち遠位骨片のほう。掌尺側の近位小骨片は前斜靱帯によって大菱形骨に保持され、位置をほぼ保つ。「動くのは中手骨側」と押さえると転位の理解が一貫する。
ポイント
  • ベネット骨折=第1中手骨基部の関節内骨折・脱臼骨折。掌尺側に三角形の小骨片を残す。
  • 小骨片は前斜靱帯で大菱形骨に留まり、転位するのは第1中手骨本体(遠位骨片)。
  • 転位の主因は長母指外転筋の牽引。母指内転筋などの作用で母指は内転・屈曲位となる。
  • 整復は容易でも保持が困難。再転位しやすく、経皮ピンニングなどが選ばれることが多い。
  • T字・Y字状の関節内粉砕はロランド骨折。名称と骨片形状を対で覚える。
比較表
項目ベネット骨折ロランド骨折
骨折形態掌尺側の三角形骨片を残す関節内脱臼骨折T字・Y字状の関節内粉砕骨折
転位中手骨本体が橈背側・近位へ粉砕のため整復位が得にくい
転位の主因長母指外転筋の牽引粉砕+筋の牽引
治療整復容易だが保持困難、ピンニング等観血的整復が必要になることが多い
予後関節面の段差で変形性関節症のリスクより不良
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