学習トップ理由で解く 柔道整復師一般臨床医学 ▸ §21 臨床実地問題 / QJ32P045

理由で解く 柔道整復師

QJ32P045 一般臨床医学

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問45
問題
66歳の男性。3か月前から四肢脱力を生じ、階段昇降や座位から立ち上がることが困難となった。手指関節伸側に落屑を伴う紅斑を認める。血液検査で筋原性酵素の上昇と炎症反応の陽性がみられた。この患者で注意すべき合併症はどれか。
選択肢
1 貧血
2 悪性腫瘍
3 前立腺肥大
4 甲状腺機能亢進
解答
正解2(悪性腫瘍)
解説

手指関節伸側の落屑を伴う紅斑(ゴットロン徴候)に、近位筋優位の筋力低下と筋原性酵素の上昇・炎症反応陽性が加わる組み合わせは皮膚筋炎の典型像です。成人、とくに中高年発症の皮膚筋炎は悪性腫瘍を合併する頻度が高いため、注意すべき合併症は2の悪性腫瘍です。

まず症状を筋肉の場所に翻訳します。階段を昇れない、椅子から立ち上がれないというのは股関節周囲筋や大腿四頭筋、つまり体幹に近い近位筋の障害を示します。皮膚筋炎・多発筋炎はこの近位筋が左右対称に侵されるのが特徴で、上肢では髪を洗う・高い棚に手を伸ばすといった動作が困難になります。次に皮膚所見です。手指関節の伸側(背側)に落屑を伴う紅斑が出るのがゴットロン徴候、上眼瞼に紫紅色でむくんだ紅斑が出るのがヘリオトロープ疹で、いずれも皮膚筋炎に特徴的です。血液検査ではCK・アルドラーゼ・AST・LDHといった筋原性酵素が上昇し、炎症反応も陽性となります。ここまでで診断は皮膚筋炎に絞られます。そのうえで臨床上いちばん警戒されるのが悪性腫瘍の合併で、成人例では胃・肺・大腸・卵巣・乳腺などの腫瘍が筋炎の診断前後の時期に見つかることがあり、診断時には全身の腫瘍検索が行われます。もう一つ見落とせない合併症が間質性肺炎で、こちらは進行が速い型があり呼吸状態を左右します。柔道整復の現場で、原因のはっきりしない左右対称の筋力低下と特徴的な皮疹に出会ったら、施術で様子をみるのではなく速やかに医療機関へつなぐ判断が求められます。

✓ 2. 正しい
悪性腫瘍
本例はゴットロン徴候+近位筋の筋力低下+筋原性酵素上昇から皮膚筋炎と考えられます。成人発症、とくに中高年の皮膚筋炎は悪性腫瘍の合併率が高いことが知られ、腫瘍が筋炎に先行することも、筋炎の診断後に見つかることもあります。そのため診断時には上部・下部消化管検査、胸腹部の画像検査など全身の腫瘍検索を行い、その後も一定期間は経過を追います。この患者で注意すべき合併症として最も適切です。
✗ 1. 誤り
貧血
慢性の炎症が続けば軽度の貧血(慢性炎症に伴う貧血)が生じることはありますが、皮膚筋炎に特徴的な合併症ではなく、この患者でまず警戒すべきものでもありません。なお高度の貧血がみられる場合は、その背後に消化管腫瘍などの出血源が隠れていないかを考える必要があり、その意味でも最終的に注目すべきは悪性腫瘍のほうです。
✗ 3. 誤り
前立腺肥大
前立腺肥大は加齢に伴って高齢男性に高頻度でみられる変化で、排尿症状の原因にはなりますが、皮膚筋炎の病態と結びついた合併症ではありません。66歳男性という年齢から連想しやすい選択肢ですが、本問が問うているのは「この疾患だからこそ警戒すべきもの」であり、年齢相応にありふれた所見とは区別して考えます。
✗ 4. 誤り
甲状腺機能亢進
甲状腺疾患も筋症状の原因にはなり(甲状腺機能低下症では筋痛やCK上昇を伴うミオパチー、機能亢進症では近位筋の萎縮・脱力がみられます)、筋力低下の鑑別としては挙がります。しかしそれは「筋力低下の原因は何か」を考える段階の話であり、皮膚筋炎と診断された患者が合併しやすい疾患ではありません。本問は診断がついたうえで警戒すべき合併症を問うているため、当てはまりません。
ポイント
  • 立ち上がれない・階段が昇れない・洗髪できない=近位筋優位の筋力低下。皮膚筋炎/多発筋炎を疑う入口。
  • ゴットロン徴候(手指関節伸側の落屑を伴う紅斑)とヘリオトロープ疹(上眼瞼の紫紅色浮腫性紅斑)。この2つがあれば皮膚筋炎。
  • 血液検査はCK・アルドラーゼ・AST・LDHなど筋原性酵素の上昇+炎症反応陽性。
  • 成人(中高年)の皮膚筋炎は悪性腫瘍の合併に注意。診断時に全身の腫瘍検索を行う。もう一つの重要合併症は間質性肺炎。
  • 原因不明の左右対称の筋力低下+特徴的な皮疹をみたら、施術で経過をみずに医療機関へ紹介する。
比較表
疾患皮膚所見主な訴えCK(筋原性酵素)注意すべき合併症
皮膚筋炎あり(ゴットロン徴候・ヘリオトロープ疹)近位筋の筋力低下上昇悪性腫瘍、間質性肺炎
多発筋炎なし近位筋の筋力低下上昇間質性肺炎(腫瘍合併は皮膚筋炎ほど目立たない)
リウマチ性多発筋痛症なし肩・腰まわりの痛みとこわばり(筋力低下は目立たない)正常巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)
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