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理由で解く 柔道整復師

QJ32P043 一般臨床医学

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問43
問題
梅毒で正しいのはどれか。
選択肢
1 クラミジア感染症である。
2 飛沫感染によって伝播する。
3 晩期梅毒では中枢神経症状を呈する。
4 硬性下疳が消退すれば治療の必要はない。
解答
正解3(晩期梅毒では中枢神経症状を呈する。)
解説

梅毒はスピロヘータの一種である梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)による性感染症です。無治療のまま年余を経ると神経梅毒(進行麻痺・脊髄癆)や心血管梅毒に至るため、「晩期梅毒では中枢神経症状を呈する」とした3が正しい記述です。

梅毒は病期が進むにつれて症状の舞台が変わっていくのが最大の特徴です。第1期(感染後およそ3週)は病原体が侵入した部位に硬いしこり(初期硬結)ができ、中心が潰瘍化して硬性下疳となります。痛みがないため見過ごされやすく、しかも数週間で自然に消えてしまいます。第2期(およそ3か月以降)には病原体が血流に乗って全身へ散らばり、体幹の梅毒性バラ疹、手掌・足底の丘疹、陰部や肛門周囲の扁平コンジローマ、脱毛などが現れます。これも自然に軽快して無症状の潜伏梅毒に移行するため、「治った」と誤解されがちです。そして数年〜十数年を経た晩期には、皮膚や骨のゴム腫、大動脈炎による大動脈瘤・大動脈弁閉鎖不全、そして神経梅毒が生じます。神経梅毒には認知機能低下や人格変化をきたす進行麻痺と、下肢の電撃痛・深部感覚障害・失調歩行・アーガイル・ロバートソン瞳孔をきたす脊髄癆があり、これが本問のいう中枢神経症状です。近年は国内の報告数が増加傾向にあり、治療はペニシリンが第一選択で、早期に発見して治療を完了すれば晩期の重い病変は防げます。

✓ 3. 正しい
晩期梅毒では中枢神経症状を呈する。
無治療のまま経過した晩期梅毒では神経梅毒を生じます。大脳が侵される進行麻痺では記憶障害・判断力低下・人格変化・誇大妄想などがみられ、脊髄後索と後根が侵される脊髄癆では下肢の電撃痛、深部感覚障害による失調歩行(踵を打ちつけるような歩き方)、ロンベルグ徴候陽性、アーガイル・ロバートソン瞳孔(対光反射消失・輻輳反射保持)がみられます。中枢神経症状を呈するというこの記述が正しい選択肢です。
✗ 1. 誤り
クラミジア感染症である。
梅毒の病原体は梅毒トレポネーマというらせん状の細菌(スピロヘータ)です。クラミジア・トラコマティスが起こすのは性器クラミジア感染症で、男性では尿道炎、女性ではしばしば無症状のまま子宮頸管炎から卵管炎・不妊につながる、別の性感染症です。同じ性感染症でも病原体が異なります。
✗ 2. 誤り
飛沫感染によって伝播する。
梅毒トレポネーマは乾燥や熱に弱く、空気中では速やかに感染性を失うため、咳やくしゃみによる飛沫感染は成立しません。主な感染経路は性的接触による粘膜・皮膚の直接接触感染で、ほかに妊婦から胎児への母子感染(先天梅毒)、輸血や血液を介した感染があります。飛沫感染する代表はインフルエンザ・風疹・流行性耳下腺炎・百日咳など、空気感染(飛沫核感染)する代表は結核・麻疹・水痘で、感染経路ごとに整理しておくと混同しません。
✗ 4. 誤り
硬性下疳が消退すれば治療の必要はない。
硬性下疳が消えるのは治癒ではなく、病原体が体内に残ったまま次の病期へ進んでいるだけです。症状が消えた時期こそ受診が遅れやすく、後の神経梅毒や心血管梅毒につながります。無痛性の潰瘍や原因不明の皮疹に気づいたら、消えていても医療機関で血液検査(STSとTPHA/TPLAなど)を受け、診断がついたらペニシリンによる治療を最後まで完了することが大切です。パートナーも同時に検査・治療を受けることで再感染を防げます。
ポイント
  • 病原体は梅毒トレポネーマ(スピロヘータ=らせん状の細菌)。クラミジアでもウイルスでもない。
  • 感染経路は性的接触による直接接触感染・母子感染・血液。飛沫感染や空気感染はしない。
  • 感染経路の整理。飛沫感染=インフルエンザ・風疹・流行性耳下腺炎・百日咳・髄膜炎菌、空気感染(飛沫核感染)=結核・麻疹・水痘の3つ。この2つを混同しない。
  • 第1期=無痛性の硬性下疳(約3週)。自然に消えるが治ってはいない、が最頻出ポイント。
  • 第2期=バラ疹・扁平コンジローマ(約3か月〜)。これも自然軽快して潜伏梅毒へ。
  • 晩期=ゴム腫・大動脈瘤・神経梅毒(進行麻痺/脊髄癆)。治療の第一選択はペニシリン。疑ったら早期受診を勧める。
比較表
病期おおよその時期主な症状
第1期感染後 約3週初期硬結・硬性下疳(無痛性潰瘍)、無痛性の所属リンパ節腫脹。自然消退する
第2期約3か月〜梅毒性バラ疹、丘疹性梅毒疹(手掌・足底)、扁平コンジローマ、脱毛。全身に散布
潜伏梅毒第2期のあと症状なし。血清反応のみ陽性で、本人は治ったと思いやすい
晩期(第3期以降)数年〜十数年ゴム腫、大動脈炎・大動脈瘤・大動脈弁閉鎖不全、神経梅毒(進行麻痺・脊髄癆)
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