学習トップ理由で解く 柔道整復師リハビリテーション医学 ▸ §4 リハビリテーション医学の評価と診断 / QJ32P015

理由で解く 柔道整復師

QJ32P015 リハビリテーション医学

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問15
問題
筋原性疾患を示すのはどれか。
選択肢
1 神経伝導検査における潜時遅延
2 神経伝導検査における伝導ブロック
3 針筋電図における早期動員パターン
4 針筋電図における随意収縮時の高振幅多相波
解答
正解3(針筋電図における早期動員パターン)
解説

筋原性疾患(ミオパチー)では1つの運動単位が出せる力が小さいため、弱い力を出すだけで多数の運動単位が動員される「早期動員」が針筋電図でみられます。

まず検査の役割分担を押さえます。神経伝導検査は末梢神経そのものの伝わり方をみる検査で、潜時延長・伝導速度低下・伝導ブロックは髄鞘の障害(脱髄)を、複合筋活動電位の振幅低下は軸索の障害を示します。筋そのものの病気では末梢神経は健常なので、神経伝導検査は基本的に正常です。したがって筋原性か神経原性かを分けるのは針筋電図の仕事になります。筋原性疾患では筋線維が変性脱落して1運動単位あたりの筋線維数が減るため、運動単位電位は低振幅・短持続・多相性となります。1個あたりの出力が小さいぶん、わずかな力を出すだけで多数の運動単位を動員しなければならず、低い張力の段階で干渉波が完成します。これが早期動員パターンです。逆に神経原性疾患では、生き残った軸索が側芽を伸ばして周囲の筋線維を再支配するため、運動単位電位は高振幅・長持続・多相性の巨大電位となり、使える運動単位の数自体が減るので発火頻度を上げて補う「減少動員(高頻度発火)」を示します。

✗ 1. 示さない
神経伝導検査における潜時遅延
刺激から筋の反応が出るまでの時間が延びる所見で、髄鞘が傷んで跳躍伝導が保てない脱髄性の末梢神経障害を示唆します。代表は Guillain-Barré症候群、CIDP(慢性炎症性脱髄性多発根神経炎)、Charcot-Marie-Tooth病1型、絞扼性神経障害(手根管症候群など)です。なお糖尿病性多発神経障害は軸索障害が主体で、感覚神経活動電位・複合筋活動電位の振幅低下が先行し、伝導速度低下や潜時延長は軽度にとどまるのが典型なので、脱髄の代表例としては挙げません。いずれにせよ筋の病気では神経伝導検査は正常に保たれるため、潜時遅延は筋原性の根拠にはなりません。
✗ 2. 示さない
神経伝導検査における伝導ブロック
刺激部位を末梢から近位へ移すと反応波が大きく低下する所見で、その区間で興奮が伝わっていないことを意味します。多巣性運動ニューロパチーや脱髄性ニューロパチーで典型的にみられる、神経側の異常です。
✓ 3. 正しい
針筋電図における早期動員パターン
筋原性疾患の代表的所見です。1つの運動単位に含まれる有効な筋線維が減っているため、目標の力を出すのに動員すべき運動単位数が増え、弱い収縮の段階からすでに多数の電位が重なり合った干渉波が出現します。運動単位電位そのものが低振幅・短持続・多相性である点とセットで押さえてください。
✗ 4. 示さない
針筋電図における随意収縮時の高振幅多相波
神経原性疾患の所見です。障害を免れた軸索が側芽を出して脱神経筋線維を再支配した結果、1運動単位が支配する筋線維数が増えて電位が巨大化します。筋原性は逆に低振幅・短持続なので、振幅の向きで両者を判別してください。
ポイント
  • 神経伝導検査の異常(潜時延長・伝導速度低下・伝導ブロック)=末梢神経の障害。筋原性では正常
  • 脱髄=潜時延長・伝導速度低下(GBS、CIDP、CMT1型、絞扼性)/軸索障害=振幅低下(糖尿病性多発神経障害など)
  • 筋原性の針筋電図:低振幅・短持続・多相性の運動単位電位+早期動員(弱い力で干渉波が完成)
  • 神経原性の針筋電図:高振幅・長持続の巨大電位+減少動員(数が減り発火頻度で補う)
  • 安静時の線維自発電位・陽性鋭波はどちらでも出現しうる(活動性の脱神経・筋壊死を示す)
  • 筋原性を疑う臨床像は近位筋優位の筋力低下とCK上昇、神経原性は遠位筋優位と筋萎縮・線維束攣縮
比較表
比較項目筋原性疾患(ミオパチー)神経原性疾患(ニューロパチー等)
神経伝導検査おおむね正常潜時延長・伝導速度低下・伝導ブロック・振幅低下
運動単位電位の振幅低振幅高振幅(巨大電位)
運動単位電位の持続時間短持続長持続
動員パターン早期動員(弱い力で干渉波完成)減少動員(高頻度発火で代償)
筋力低下の分布近位筋優位が多い遠位筋優位が多い
血清CK上昇しやすい正常〜軽度上昇
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。